- 2025年度にすでに実施済の改善策は、「ラーニングポートフォリオ」として位置づけているmanabaの学生閲覧期間の卒業時までの延長です(従来は2年間)。PBL科目を含め、入学時からの提出物をいつでも見返せるようにし、前後の科目履修の関係性を在学生がより意識しやすい環境を整備しました。
- 部分的に実施済の施策が、「キャリアデザイン科目」における、ナンバリングを用いてカリキュラムの体系を周知徹底する施策と、卒業生ゲストを招いた講義を実施する施策です。前者は科目間連携の意識強化を目的とし、後者はPBL科目履修の推奨や「挑戦」や「刺激を受ける」ことの重要性を卒業生自身の口から語ってもらうことによる効果をねらった施策です。
- 今回の調査により、学生においてPBL科目が「ゴール科目」として認識されている課題が示唆されました。この改善に向け、担当教員に対しても、カリキュラム上PBL科目は「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ステップ」の段階であることを認識してもらい、前提となる知識・スキルの明示と、発展的学修にナビゲートするように研修を行います。
卒業生インタビュー
卒業生インタビュー
調査概要
2025年8月に、2024年度に実施した「卒業生アンケート」(N=653)の回答者を母集団に、オンラインにてグループインタビューを実施しました。
調査内容は、上記の卒業生アンケートにおいて成長実感科目の代表格として挙がったPBL(課題解決型学習)科目関連、そして同アンケートで「社会人基礎力」(経済産業省2006)の修得度(「身についた」以上の回答率)が9割に満たなかった「創造力」と「ストレスコントロール力」を強化するための助言についてです。
インタビュー協力者は、経営学部卒業生15名、情報マネジメント学部卒業生20名の計35名です。勤務先業種の内訳(図表1左)は、情報マネジメント学部(「情マネ」と略記)卒業生は専攻の関係で情報通信業が半数を占め、経営学部卒業生は多業種にわたりました。卒業年(図表1右)は、2016年卒から2024年卒まで幅広く分布しています。
PBL科目の事前・事後履修調査
2024年度に実施したアンケート調査において、多くの卒業生が成長を実感した科目として挙げたのがPBL(課題解決型学習)科目でした。そのため、当該PBL科目の前に履修した科目がどのように役立ち、またPBL科目の履修がその後のコースや科目にどのような影響を与えたのか、前後の科目履修について把握することを目的にインタビュー調査を実施しました。
事前に学んだ知識・スキルの実践
最初に、その知識やスキルがPBL科目において活かされた事前履修科目に関する回答の抜粋が図表2になります。両学部共通で挙がった科目が、初年次ゼミ(経営学部『基礎ゼミ』、情報マネジメント学部『学び方修得ゼミ』)と情報リテラシー科目(同『エクセル演習』と『情報活用演習』)でした。前者では「グループワークにおける対人コミュニケーション」の経験が、後者では「Excelのスキル」がPBL科目で役立ったとの声が目立ちました。

経営学部のPBL科目では渉外活動が盛んなことから、『ビジネスマナー』を挙げる卒業生も多く、また『アーティスト・プロモーション』などの高年次PBLでは、座学の授業で学んだ「フレームワーク」の知識が役立ったとの意見もありました。情報マネジメント学部でも近年は企画コンペや営業活動を行う高年次PBL(『コンテンツビジネス実践』や『湘南ベルマーレ コラボレーション プロジェクト』)に力を入れていることから、上級年次との科目間連携もさらに高めていくことが望まれます。
事後のコース・科目選択に影響
次に、PBL科目がきっかけとなり、その後に履修した科目の抜粋が図表3になります。このようにPBL科目の履修によって新たな興味・関心や課題認識が生まれ、その後のコース選択や科目選択に影響を与えている事実が確認できました。

その一方で、「特に思いつかない」という意見も少なくありませんでした。この傾向はPBL科目が「最高次のゴール科目」として認識されている可能性を示唆します。PBL科目の多くは2年次科目として設定されており、「ホップ・ステップ・ジャンプ」でいうところの「ステップ」に位置づけられています。したがって、PBL科目の履修が最終地点ではなく、その後の科目履修によってさらに知識やスキルを伸ばしたいと思えるような働きかけをPBL科目内で行う必要性を認識しました。
社会人基礎力の課題克服に向けたアドバイス
2024年度は「卒業生アンケート」(N=653)と同時期に、本学の卒業生が在籍する企業・団体に対する「就職先アンケート」(N=90)も実施しました。両者に共通する質問として「社会人基礎力」(経済産業省 2006)の修得度を設けました。
卒業生アンケート・就職先アンケートともに、12の社会人基礎力のうち10項目において9割以上が「とても身についている」あるいは「身についている」(両者の合計比率を「修得度」と定義)と回答しましたが、修得度9割未満の社会人基礎力が2項目ありました。それが「ストレスコントロール力」と「創造力」です。この結果を受け、当該2つの社会人基礎力を在学中に鍛える方法についての助言を卒業生に尋ねました。
ストレスコントロール力を伸ばすためには
図表4に示す通り、多くの卒業生が「ストレスに慣れる」ための機会として、PBL科目の履修を勧めました。具体的な科目名としては、経営学部では『自由が丘スイーツプロモーション』、情報マネジメント学部では『イベントプロデュース』が挙がりました。
PBL科目以外では、課外活動としての「長期インターンシップ」や「委員会活動」を挙げる卒業生もいました。一般化するならば、「複数タスクを抱える」「新しい環境に飛び込む」と換言できるでしょう。居心地の良い場所だけに留まらない「挑戦」が、ストレスコントロール力を伸ばすために重要だという点が卒業生からの助言の公約数になります。
「創造力」を伸ばすためには
図表5に示す通り、創造力を向上させる目的においてもPBL科目の履修が有効だとするアドバイスが多く、具体的な科目名としては、経営学部では『ブランドプロデュース』、情報マネジメント学部では『スポーツ・プロモーション』が挙がりました。
卒業後に「営業」や「プログラミング」においても創造力が求められたという経験から、在学生に向けて「創造力」を広い概念として捉えてほしいとの声もありました。また鍛え方は本人の特性(モチマエ)によるため多様であり、本を読むことを勧める卒業生もいれば、他者と関わることを勧める卒業生もいました。いずれにしても「刺激を受ける」ことが、創造力を伸ばすための重要な要素であるという指摘は共通していました。
インタビューのまとめと改善策
今回のインタビュー調査は、2024年度に実施したアンケート調査の結果を深掘りするとともに、当該アンケートで発見された課題の解決策を探ることを目的に実施しました。調査内容は大きく、「PBL科目の前後履修の実態」と「修得度の低い社会人基礎力の伸長」の2つに分けられます。
前者については、事前の初年次ゼミや情報リテラシー科目で得た知識やスキルが、PBL科目において発揮できた成功体験により、成長実感が強化されていることがわかりました。またPBL科目が端緒となり、その後のコース・科目選択に影響を与えている実態も明らかになりました。ただしPBL科目はその充実度の高さがゆえに「最高次のゴール科目」として認識されている課題も浮き彫りとなりました。
後者すなわち修得度の低い社会人基礎力の伸長についても、PBL科目の履修が有効である点を多くの卒業生が指摘していました。ストレスコントロール力の向上には学内外での「挑戦」が、創造力の向上には「刺激を受ける」ことの重要性が示されました。創造力の解釈は多様であり、鍛え方も学生本人の気質に依存します。そのため、学生指導においては個性を尊重しながら視野を広げることの大切さが再確認されました。
以上の調査結果を踏まえ、以下の3点を改善策として実施済、あるいは強化予定です。
- 上記3点の改善策によって、本学での学びがこれまで以上に、点から線へ、そして面へと発展していくことが期待できます。今後も卒業生に対し、定期的にアンケートとインタビューを実施し、その分析結果をもとに、さらなる教育改善を実現してまいります。









