プロが教える「進路づくり」 第4回 <2022年度連載>

第4回 推薦入試がいよいよスタート! 失敗しがちなポイントを知っておこう

【メジャーになった推薦入試】

まずは以下のグラフをご覧ください。こちらは令和3年度の大学入学者選抜を受験して大学へ進学した学生達の、選抜方式ごとの人数比です。
学校推薦型選抜で大学へ進学した方の多さが目立っていますね。私立大学では44%と最も大きな割合を占めています。

 学校推薦型選抜は、公募制推薦と指定校制推薦に大別されます。前回のコラム(※倉部注)でご紹介した総合型選抜はひらたく言えば「自分で自分を推薦する入試」。高校の事情に関係なく自由に出願できます。一方、学校推薦型選抜は「高校が大学へ生徒を推薦する入試」。高校からの推薦状などが必要ですし、高校での学習状況や活動実績も重要な評価対象になります。また指定校制推薦の場合、通っている高校に志望校の指定校枠がなければ出願もできません。
(学校推薦型と総合型、この2種類の選抜方式を以下「推薦入試」と表現します)

 これらの推薦入試はしばしば「年内入試」とも称されます。一般選抜が高校3年生の1月以降から本格化するのに対し、学校推薦型や総合型は12月中までに合格が決まることも多いからです。お正月には、受験生の半数以上は既に進学先を決めていることになりますね。早期に進学先を確定できるという点に魅力を感じる保護者も多いようです。

 一方で高校の先生方からは、しばしばこんな声も。

「本当は最後まで伸びる余地のある生徒なのに、早めに合格を得て安心したいからと保護者が推薦を希望されている」

「どんな指定校推薦枠があるか教えてほしいと入学後のかなり早い段階でご家庭から聞かれる。それは良いのだが、その枠の中だけで進学先を探そうとする。本当に本人が学びたい学部や大学なのか疑わしい、安易に決めたのではと感じる進路希望もあって心配だ」

「勉強が苦手だから推薦しか考えていない、推薦入試には基礎学力が不要だからというご家庭が少なくない。実際には様々な形で学力を問われることもあるし、進学後にも基礎学力は求められるのに」

 いかがでしょうか。先生が心配されるのもわかる気がします。推薦入試はいまやメジャーな選択肢ですが、安易に選んで失敗するケースもあるのでご注意ください。

【進学後に後悔しては本末転倒! 気をつけるべき点は?】

最も気をつけるべきは、大学や学部の選択です。早く確実に合格することを目的とするあまり、自分に合わない大学や学部を選んでしまう例が絶えません。「使える指定校枠をまずチェックし、そこからおトクそうな大学や学部を探す」なんてケースは特に危ういです。本人が本気で学びたい学部や大学が指定校の中にあるとは限りませんし、ミスマッチを誘発しやすいです。

 受かった後に遊んでしまう、という失敗事例も目立ちます。そもそも「受験勉強したくないから」という発想で推薦を選んでしまっている方も、残念ながらしばしば見かけます。受かるために勉強するのではなく、勉強するために受かるのだ……という点を忘れてはなりません。本コラムでは再三触れていますが、今どきの大学では進路選択の後悔や、基礎学力不足による留年や中退も珍しくありません。いくら早くに受かっても、これでは本末転倒です。

 保護者の皆様が、受験に向けた意識を変えることも大事です。推薦入試での進学は、ご家庭の希望であることも少なくありません。逆に言えば、保護者が上記のようなリスクをきちんと理解し、本人の希望を尊重しながら効果的に活用するのなら、推薦入試は悪くない選択肢です。

 なお基礎学力の向上が中心となる一般選抜に比べ、総合型選抜や学校推薦型選抜では各大学に対応した準備が求められます。志望理由やキャリアビジョンなどを出願書類にまとめたり、面接やグループディスカッション、プレゼンテーションなどの準備をしたりと、実は結構、やることが多いのです。提出締切日のかなり前から書類の準備を始める方も少なくありません。慌てないよう、余裕を持って準備を進めておくことが大事です。入学手続が早い分、入学金の納付期限も早くなりますので、こちらもお気を付けください。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/