プロが教える「進路づくり」 第2回 <2022年度連載>

第2回 大学が入試で確認したい、たった一つのこととは

【大学の関心は「進学後に伸びるかどうか」】

現在、日本の大学が行っている入学者選抜のスタイルは大きく分けて3種類です。ざっくり言うと、「一般選抜」は筆記試験による学力チェックに重きを置く入試。高校3年生の冬、1〜3月にかけて行われます。昔ながらの大学受験イメージに近いスタイルですね。「学校推薦型選抜」は高校が大学へ生徒を推薦する入試で、公募推薦と指定校推薦の2種類があります。高校での成績など、大学が定める条件を満たす必要があり、多くの場合、小論文や面接なども課されます。「総合型選抜」は自分で自分を大学へ推薦する入試。エントリーシートなどの提出書類、面接や論文、プレゼンテーションなどを通じて、能力・適性や学習意欲などを総合的に評価するものです。

……なかなか多様で、仕組みが複雑ですよね。こうした選抜制度の趣旨を理解し、それぞれに合った準備をするのは、受験生にとって楽なことではないと思います。実は大学にとっても、このように多様な選抜を行うのは大変なことなんです。様々な評価方法で学生を集める理由は、多様性を確保したいから。基礎学力の高い人、高校生活で様々な挑戦を行なってきた人、目的意識が明確な人など、違うタイプの学生が集まっているとキャンパスの環境や授業が活性化されます。特にアクティブラーニング型の授業では、学生の多様性がそのまま、出てくる意見や着眼点の多様性に繋がります。

でも、すべての入試に共通して、大学が気にしている観点があります。というより、あらゆる大学の入試はみなこの一点をゴールにしていると言って良いでしょう。それは「入学後に、本学の授業で成長できる人かどうか」。そんなの当たり前だと思うかもしれませんね。でもこれ、意外と見過ごされやすいんです。

例えば、基礎学力テストの点数が高ければ高いほど、入学後の成長は大きいでしょうか? 産業能率大学はマネジメントを学ぶ大学ですが、そのマネジメントにまるで興味を持っていない方が入学したらどうでしょうか。模試の偏差値は高くても「大学に行ったら授業は最低限だけ出て、全力で遊ぶぞ!」という方は成長できるでしょうか。逆に、経営学を学ぶ目的意識は明確でも、これまで学校の授業を真面目に受けてこなかった方や、レポートをすべてウェブからのコピー&ペーストで乗り切ってきた方はどうでしょうか。

大学で学ぶなら基礎学力も意欲や資質も、両方とも大切です。どちらかが著しく不足していたら進学後に伸び悩みます。多様な学生が集まるのは大学にとって喜ばしいことなのですが、とは言え、授業についていくために必要となる基礎学力の最低ラインというものは存在します。また一般選抜で入学するとしても、進学後にミスマッチが起きないよう、その大学・学部の教育方針についてある程度の理解をしていることは期待されます。ある部分が突出して高い受験生であっても、「ウチに進学して伸びる」とは限りません。

選抜方式ごとにフォーカスを当てるポイントは違いますが、あらゆる入学者選抜の最終目的は「本学で伸びる学生を合格させること」です。「面接では何を言えば良いのだろうか」「どの入試が受かりやすいのだろうか」などと細かな受験対策に追われていると、この点を忘れてしまいがち。受験生の皆さんは「私が進学後にちゃんと学べるかどうか、大学側は見極めたいんだな」と考えながら書類や試験の準備を進めてみてください。各選抜方式における大学の意図や、今の自分の不安要素が見えてくるはずです。

【進学後に伸びるかどうか、を受験生が判断できる機会も用意されている】

「成長できるかどうか」は、受験生から見ると意外とやっかいな評価軸です。同じ経営学部でも、産業能率大学とその他の大学とでは行っている教育の質や学習環境が異なるわけですから、入学者に求める要素にも違いが出てきます。大学ごとに入学者選抜の評価基準も違う。そうなると受験生の方はますます迷いますよね。「受験してみないと、自分がこの大学に合っているかどうかがわからない」なんてことだと、困ってしまうでしょう。そうならないように、大学も様々な工夫をしています。

たとえば産業能率大学の場合、総合型選抜を検討されている方向けに、オープンキャンパスの中で総合型選抜の方式別ガイダンスや模擬面接を実施しています。模擬面接を受けた方を対象にした「AOエントリー面接」という場もあります。

そのほか「高校生のためのキャリア開発プログラム」や、アクティブラーニングを体験できる「AL体験DAY」といった取り組みも行われています。それぞれAL方式、キャリア教育接続方式といった総合型選抜の入試方式に繋がるプログラムではありますが、これらのイベントに参加した後、入試に出願しなかったとしても問題はありません。

ここまで手間をかけて大学が様々な機会をつくるのも、ひとえに大学と志願者の相互理解を深めたいから。出願前から「自分はこの大学に合いそうだな」「進学後にこういう学びを行うのだとしたら、きっと主体性を持った受験生かどうかを大学は気にするだろうな」といったことを、受験生側にきちんと考えてもらうための取組なのです。

実際、模試の成績(偏差値)やキャンパスの立地、学部・学科の名称などだけで出願先を選んでしまっている受験生は、どの大学でも少なくありません。「教育の特色を理解した上で受験してほしい」というのは、大学側の切実な願いでもあります。大学を知るためのこうした機会をぜひ積極的に活用し、その上で自分に合った選抜方法を選んでみてください。

産業能率大学入試情報

一般選抜(リンク) 
総合型選抜(リンク) 
学校推薦型選抜(リンク) 
※「模擬面接」は、オープンキャンパスページ各日程より予約できます。 
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/