プロが教える「進路づくり」 第4回 <2021年度連載>

第4回 スポーツに力を入れてきた高校生の進路選択

スポーツで得た強みは様々な分野で活かせる! ただし気をつけるべきポイントも

今回のテーマは「スポーツに力を入れてきた高校生」の進路選択です。イメージとしては、たとえばスポーツ推薦で高校に進学した方や、強豪の運動部に所属しているような方。毎日遅くまで練習があり、夏休みも部活動の予定がいっぱい……なんて高校生です。

私も、こうした高校生に進路アドバイスをする機会がしばしばあります。スポーツに注力しているといっても、プロ選手を目指すレベルの方もいれば、スポーツは高校までと決めている方もいます。大学へ進学する場合も、スポーツ推薦を狙う方から「そこまでの実績はない」という方まで、実情は様々。でも「たとえプロ選手にはならなくても、何らかの形でスポーツ経験を活かしたい」、「何らかの形でスポーツに関わる仕事に就きたい」と考える方は、やはり多いと感じます。

自分自身を客観視する力や、やり抜く力など、スポーツを通じて磨ける素養は沢山あります。他のメンバーや指導者などとの関わりを通じて気づくことも多いでしょう。結果的にスポーツ以外の分野に進んだ場合でも、活かせる強みは多々あります。

一方で、スポーツ系の高校生が気をつけておくべきポイントもあります。まず、彼らはとても多忙。部活動中心の生活を送る一方で、それ以外の挑戦や経験に時間を割けていないケースが目立ちます。高校生の多くは1年生のうちから大学のオープンキャンパスに参加し、学問や職業について理解を深めたり、様々な大学の違いを体感したりするのですが、強豪運動部員の中にはなかなか練習を休めない方も。「高校3年生の引退後に初めてオープンキャンパスに行った」なんてケースもよく耳にします。

本来、工学部で学びたいなら早くからモノづくりに挑戦してみた方が良いですし、医療専門職になりたいなら医療体験などを経験した方が進路のミスマッチは減らせます。高校時代にたくさんの本を読んだことで進路が見つかった、なんて方も多いはず。でも練習第一の日々で、こうした実践を重ねる余裕がない方もいるようです。言い出しにくいこともあるでしょうが、部活動の指導者に相談するなどして、少しでも時間を捻出することが将来のためには望ましいと思います。

様々な学問分野がスポーツの世界と繋がっている。幅広い進路リサーチを。

スポーツ系高校生の希望進路として、理学療法や作業療法などのリハビリテーション分野、柔道整復師などの医療技術職、各スポーツの指導者・トレーナーなどはよく挙がります。部活動の指導をしたいという理由で、学校教員に興味を持つ方もいますね。いずれも選択肢として大いにアリです(ただし学校の部活指導については、教員の働き方改革という観点で今後、外部委託が進む可能性もありますからご注意を)。いずれも競技生活の中で高校生が接点を持つことがある職業ですから、仕事のイメージも得やすいのでしょう。

ただ、一見するとスポーツに関わりがなさそうな名称の学部や学科でも、スポーツに関する学びはありますし、スポーツ業界に貢献する方法だってあります。たとえばスポーツ系高校生が経営学を学べば、スポーツビジネスの世界で活躍できるかも知れません。福祉とスポーツ、心理学とスポーツなんてのも相性が良い組み合わせでしょうか。どのような学問でも、本人次第でスポーツの世界に関連づけることは可能です。
経営学とプロスポーツの関係だけでも、マーケティングや広報、組織マネジメント、イベント運営、地域貢献、グッズ開発、各種メディア展開など、関連が深い領域が多く存在します。普段観に行っている試合やイベント、ネットで中継されている映像、買っている公式グッズなどの「裏」にどのような仕事があるかを考えてみると、こうした専門領域との繋がりがイメージできるかも知れませんね。アマチュアスポーツや、フィットネスのための製品・サービスなどまで含めると、さらに活躍の場は広がります。

各大学の模擬授業や大学案内などが、こうした繋がりのヒントをくれることもあります。空いた時間に少しずつでも目を通してみてはいかがでしょうか。「スポーツとの関わり方には、こんな形もあるのか、意外と面白そうだな」なんて気づきが得られると思います。

部活動が忙しい方なら、まずはオンラインでの情報収集も効率的です。各大学ともこの夏はオンラインの情報発信に力を入れています。授業映像などのほか、自分と似たような経験を持つ先輩の話を聞くチャンスもあるかもしれません。この場合も「スポーツ○○学科」といった名称にとらわれ過ぎず、様々な分野に広く触れてみることをオススメします。

自分のこれまでを振り返ってみるのも良いでしょう。同じ部に所属していても、人によって、やりがいを感じていた部分は様々。練習によって自分自身を成長させることが楽しかったという方もいれば、他のメンバーへの助言に手応えを感じたという方もいます。自分が評価されることより、チーム全体が成果を上げることを大事にしていたという方もいます。仕事にも、個人にじっくり向き合う仕事、組織を最適化する仕事、データを分析する仕事など様々なものがありますが、自分に向いている進路のヒントは、そんな振り返りから見つかることもあります。本気で取り組んできたことがある方だからこそ、できる振り返りです。

最後に。大学でもスポーツを続けたい方にとっては、その大学の運動部のレベルは気になるところでしょう。特に、プロを目指すレベルの方なら。でも大学生なら「学び」はスポーツ活動以上に大事。それをおろそかにしたことで、進路が行き詰まってしまったり、大学を中退してしまったりというケースも珍しくはありません。大学へスポーツ推薦で進学する場合でも、学部・学科選びは大事です。たとえ競技をやめてしまったとしても、学びはやめない。そんな姿勢で進学先を選んでみてください。

(ご参考)産業能率大学のスポーツビジネスが学べるコース・授業

倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)http://kurabeshiki.com/