プロが教える「進路づくり」 第7回 <2020年度連載>

第7回 入試で問われる「意欲」や「適性」って何?

総合型選抜で問われる「意欲」や「資質」とは

2020年度から大学入学者選抜のあり方が大きく変わります。今後の入試は、大きく分けると一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜の3種類。その中で最も早くスタートするのが総合型選抜です。今まさに、その準備をされているという方もいらっしゃることでしょう。

総合型選抜に関する説明の中でしばしば登場するのが、「学ぶ意欲や熱意を重視する」「学力以外の資質を測る」なんてフレーズです。でも保護者の皆様からすると、「意欲って、どう測るの?」「資質って、具体的に何?」と、いまひとつイメージできないところも多いのではないでしょうか。

入学者選抜において大学が気にするのは、「ウチに入学した後で伸びるかどうか」です。基礎学力はもちろん非常に大事ですが、あるテストで同じ点数をとった2人が、大学進学後も同じように成長するかと言えば、そうでもありません。
なぜその学問を学びたいのか。その学問を学んで何がしたいのか。具体的に関心を持っているトピックはあるのか。なぜそう考えるに至ったのか……など。学びに向き合う姿勢によって、その後の成長度合いは変わってきます。
入試における「学ぶ意欲や熱意」というのは、つまりこうした点をきちんと考えているのか、そのリサーチの過程や思考の深さなども含めて、具体的に知りたいということです。

成長を促す要素は、他にもあります。たとえば部活動や生徒会活動など、授業以外の様々な挑戦を通じて高校生達は様々な成功や失敗を経験し、その過程で成長します。その過程を振り返ってみることで、自分が得たものや、今の自分に足りていないものに気づくこともあるでしょう。
新しい場に飛び込める、向上心がある、メンバー全体のことを気にかけて動ける、いかなる場面でも必要な行動をとれる、チーム全体で高い成果を追求できる、などなど。
主要教科の学力以外にも、高校生達が持っている大事な力はたくさんあります。大学はこうした「学業以外の資質」もまた、大学での学びに影響を与えると考え、入試の中でぜひ知りたいと思っているわけです。

こうした意欲や資質を測る際に重要となるのは、大学とのマッチングです。
同じ入学難易度でも、大学が掲げる教育方針や、提供する教育環境は千差万別。企業出身者の教員が多くて実学重視という大学もあれば、高度な理論を学ぶ研究重視の大学もあります。
講義中心の授業とアクティブラーニングを取り入れた授業、その比率が7:3という大学もあれば、逆に3:7という大学もあるでしょう。

これまで重ねてきた挑戦や経験を踏まえつつ、自分が望む成長の姿を自分なりに思い描いているかどうか。その上で様々な大学の教育内容を比較検証し、この大学こそ自分に合うと確信して志願しているのか。そうしたリサーチや思考の軌跡が、総合型選抜では問われるのです。

大学で経験するアカデミックな学びの予習の機会と捉えよう

志願者が抱く将来の夢やビジョンを、志望理由書や面接などで問う大学は少なくありません。上述したような学びへの意欲や、「他の大学ではなく、この大学がベスト」と考えるに至った経緯を詳しく知りたいからです。「本学の理念に共感して……」なんて表面的なフレーズではなく、本人の真剣な試行錯誤や、本気で熟考したプロセスを知りたいからです。その夢や希望を追う場として、この大学が適切なのかどうかを、大学側もちゃんと考えたいからです。

総合型選抜の中で、学問分野に関わる具体的な課題を出す大学もあります。実際に授業で行うグループワークやレポート作成、プレゼンテーションといった取り組みを入試に採り入れている大学もあります。こうした試験も多くの場合、志願者本人が実際の入学後の学びにマッチしているかどうかを判断するために行われています。

ここまで読んで、「ウチの子には無理そう」なんて感じた保護者の方もいらっしゃるかもしれません。確かに、総合型選抜の試験方法は高校での試験勉強とはかなり性質が違いますので、ハードルが高く見えても無理はありません。
でも、十分なリサーチを行った上で、考えを整理し、プレゼンテーションや面接に向けて着実に準備をしていけば、それほど恐れるものでもありません。大学で経験するアカデミックな学びの予習だと思って、ぜひ挑戦してみてください。

なお本稿では主に総合型選抜のことを取り上げましたが、2020年以降は学校推薦型選抜や一般選抜でも、学びへの意欲や学力以外の資質といった要素が問われる可能性があります。「ウチは筆記試験だけで受験する予定だから関係ないな」とは考えず、少しずつ準備を進めていくことを強くお勧めします。

(ご参考)産業能率大学の総合型選抜

「高い意欲と情熱をあなた自身から確かめたい」
産業能率大学の総合型選抜に込めた思いです。初めてAO入試を導入した1998年から一貫して受験生に問い続けてきたのは、「将来の自分についてじっくり考えてみる」ことです。
本学の教育内容をよく理解したうえで、大学で何を学びたいのか、現在持っている「問題意識」や「テーマ」について聴かせていただきます。
■AO方式(リンク) 
「自己の将来像」「大学での学習意欲」「高校までの学習態度や活動」「主体性をもって多様な人々と協働して学んだ経験」について面接を通して個別に評価する方式です。
■AL方式【専願型】(リンク) 
■AL方式【併願型】 
マーケティング学科の学びの特色でもあるアクティブラーニングを取り入れた方式で、マーケティングへの興味や関心をグループ討論や面接など様々な側面から評価します。
■キャリア教育接続方式(リンク) 
「自己のキャリア構想」について試験の場でプレゼンテーションを行い、大学が育てたいと考える人材との適合度合いをはかろうとする本学だけのオリジナルな方式です。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/