プロが教える「進路づくり」 第5回 <2022年度連載>

第5回 センター試験から「大学入学共通テスト」へ。その違いや特徴とは

【共通テストが必要になるのは、どのようなケース?】

2020年度からスタートした、大学入学共通テスト(通称・共通テスト)。長く実施されてきた大学入試センター試験から様々な見直しが加えられ、変更された部分が少なからずあります。どのようなケースで受験が必要なのか、何がどう変わったのかなど、知っておくべき基礎的なポイントを保護者の皆様向けに改めて解説します。

 共通テストを受験することになるのは、主に以下のような方々です。

①国公立大学を一般選抜で受験する方
 国公立大学を一般選抜で受験する場合、まず共通テストで大学が指定する科目を受験。これが一次試験となります。その後、各大学が独自に設定する二次試験を受験し、その二段階の総合評価で合否が決まります。

②私立大学を「共通テスト利用入試」で受験する方
 私立大学の多くが、共通テストのスコアを利用して合否を決定する入試方式を用意しています。地元で共通テストを受験するだけで受験できるため、遠方の大学に出願する場合をはじめ、多くの受験生が活用しています。

③学校推薦型選抜や総合型選抜、および一般選抜で共通テストのスコアが求められている方
 国公私立のそれぞれで増えているケースです。たとえば千葉大学国際教養学部の総合型選抜では、提出された書類や課題論述、面接で合格内定者を決定します。内定者はその後、共通テストで指定された科目を受験。その総得点率が70%以上になった方を最終合格者とする仕組みになっています。産業能率大学の一般選抜「未来構想方式」も同様で、こちらは先に共通テストの指定科目を受験。大学が事前に定める得点率を越えた方が、次の事前記述課題や未来構想レポートといったステップに進めます。両校とも入学後に行われる授業についていけるだけの基礎学力があるかどうかを、共通テストで確認しているわけですね。
 一般選抜のうち一部の科目を共通テストのスコアで提出させる例も増えています。学校推薦型選抜でも合格を出した上で「共通テストを受験すること」を義務づけているケースが多々あります。

 この通り、思っているより多くの場面で活用されているのです。大学入学共通テストは名の通り、大学へ入学するにあたり多くの大学で求められる、基礎的な力を身につけているかを評価するためのもの。ウチは推薦で進学するつもりだから関係ない、なんて油断していると困ったことになりかねません。

【センター試験から変わった点は?】

文部科学省が進めてきた高大接続改革では「学力の三要素」として、

 (1)知識・技能
 (2)思考⼒・判断⼒・表現⼒
 (3)主体性・多様性・協働性

を挙げ、これらを総合的に評価して入学者を選抜するよう大学に求めています。かつての大学入試センター試験は(1)の知識・技能、すなわち高校で学ぶ主要教科の基礎学力を測ることに焦点が置かれた試験でした。共通テストはそれに加え、(2)の思考⼒・判断⼒・表現⼒をかなり意識した内容になっています。

 各教科でグラフや図表等を盛り込んだ問題が多く出題。一問一答式で単純に知識を問う問題が減る一方、登場人物の対話を読み、知識を応用しながら論理展開をしっかり理解しなければ解けない問題が増えました。機械的な暗記ではなく、「○○だから、つまり△△だと言える」といった論理の流れを重視した学習をしてきたかが問われる内容です。

 共通テストでは当初、国語と数学で記述式問題の導入が構想されていましたが、様々な紆余曲折があってそれは見送られることとなりました。そのため「なんだ結局、以前のセンター試験とあまり変わっていないじゃないか」という声もしばしば目にするのですが、それは正しくありません。科目により変化の度合いに違いはあるものの、問題を見れば、従来とは異なる学力観で作問されていることが伺えます。大学入学後の学びに対応できるかどうかを、従来より踏み込んだ形で問う試験だと言えるでしょう。

 上述した通り共通テストは一般選抜のみならず、学校推薦型選抜や総合型選抜の中でも広く活用され始めています。これまで我が国では、一般入試では教科試験の点数だけが一点刻みで問われる一方、AO入試では学力をほぼ問われないという、ややもすると極端にも思える大学入試のスタイルが広く定着していました。そうした点を是正しようというのが高大接続改革であり、共通テストです。共通テストのあり方についてはまだ試行錯誤中な点も見られますが、今後も多くの大学で選抜に利用されることは間違いありません。大学進学を考えている方は、どの選抜方式を選ぶ予定かに関わらず、できるだけ共通テストの受験を前提に検討されておくことをオススメします。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/