プロが教える「進路づくり」 第13回 <2021年度連載>

第13回 複数の大学に合格した方へ:いまこそ考えたい、後悔しない進学先選び

【受かったけれど、実はこの大学のことをよく知らない? なんてことも】

 一般選抜が佳境を迎える時期ですね。秋から冬にかけて行われる総合型選抜や学校推薦型選抜は原則として、第一志望の大学に出願する入試。合格はそのまま進学先の決定を意味しています。しかし冬から春にかけて行われる一般選抜の場合、憧れの第一志望から念のための滑り止めまで、複数の大学を受ける方がほとんど。結果的に、複数の大学から合格を得ることもあります。

 志望度にそれほど大きな差がなく「この2校なら、どちらに入学しても良い」と思えるような2大学から合格を得た場合は、どちらにするか悩みますね。かなり重大な選択であるにもかかわらず、「なんとなくA大の方がお洒落っぽいかも」とか、「B大の方が歴史が長いから就職に有利なんじゃ?」とか、最後の決断をあいまいなイメージや思い込みで決めてしまう方もいます。

 さらに一般選抜の場合、合格までしておきながら、実はその大学のことをあまりよく理解していない(!)、なんて方も実は珍しくありません。その大学が第二志望以下の併願校であった場合、入学難易度(偏差値)の数字だけで出願先にしたという方もチラホラ。出願を決めたタイミングが3年生の秋以降だと、オープンキャンパスにも参加していなかったりします。大学入学共通テストを利用した入試になると、受験のためにキャンパスへ行く必要すらありません。

 で、いよいよ入学手続締切日までに進学先を決めねばという段になって悩むわけです。キャンパスの立地や世間的な知名度、ブランドイメージなどの奥にある、自分にとって重要な要素とは何か、と。

【保護者は知名度のある大学を支持する傾向が。でも大事なのは、本人が伸びるかどうか】

 保護者は大規模総合大学を信頼しがちです。知名度があるから就活でも有利では……と期待されるのですね。でも、大規模大学に合わない人も少なくありません。日常的に様々な高校生の様子を見ていると、むしろ小規模な大学の方が伸びるタイプの方が多いのでは、と思います。大規模大学での賑やかなキャンパスライフに憧れる方もいますが、コロナ禍の影響でそのキャンパスライフは大きな影響を受けました。どうしても学生一人ひとりに目が届きにくい環境であるため、孤立してしまった学生もいます。

 たとえ知名度の高い大学でも、卒業できない学生や就職できない学生はいます。この大学なら確実、なんて選択はありません。「将来を保障してくれそうなのはどちらか」ではなく、「大きく成長できそうなのはどちらか」で選ぶことをお勧めします。

 受かったいまこそ、教育力に注目してください。たとえば同じ経営学部という名称でも、教育方針は大学によって異なります。複雑な学術理論を網羅することに力点を置いた大学もあれば、現場で使えるビジネススキルを実践的に鍛えるという大学もあります。入学直後から企業のビジネス課題に取り組むという大学もあれば、最初は教養からゆっくり積み上げるという大学もあります。どちらが良いという正解はなく、自分に合うのはどちらか、という観点でしか評価はできません。より具体的に言うなら、「自分が望む成長像に近づけそうなのはどちらの環境か」です。この観点で今一度、大学案内やウェブサイトを見直してみてください。
>>ご参考:2020年度からの新大学入試②あなたには、どちらの教育が魅力的ですか?(リンク) 
以前の記事で、大学のカリキュラムポリシー(CP)についてご紹介しました。どのような教育を、どのような目的のために提供しているかを具体的に示したものです。合格した2大学のCPを読み比べてみると、それぞれが注力している教育の違いを知る手掛かりになると思います。
>>ご参考:正規雇用率や留年率など、データでわかる大学の実力(リンク) 
各種のデータも参考になります。大学選びで重要なのは、ブランドイメージよりも具体的なエビデンス。特に併願校を探す際は、こうした大学の実力をしっかりチェックすることをお勧めします。
なお合格した後からでも、気になることがあったらぜひ大学へ問い合わせをしてみてください。「いまさらこんな基本的なことを聞いたらマズイだろうか」なんて気にする必要はありません。繰り返しますが、一般選抜の場合はそうした受験生も珍しくないのです。ほとんどの場合、大学の方はこうした問い合わせを歓迎するはずです。

(ご参考)産業能率大学の学び・キャリアサポート

倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)http://kurabeshiki.com/