プロが教える「進路づくり」 第12回 <2021年度連載>

第12回 以前と比べてこんなに変わった! 大学4年間の過ごし方

イマドキの大学生は、しっかり勉強している!

 かつて大学がレジャーランドに例えられた時代がありました。ほどほどに授業に出ながら、サークル活動やアルバイトで青春を謳歌する。厳しい受験競争をくぐり抜けて得られる、モラトリアム期間としてのキャンパスライフ。要領よく早めに単位を集め、4年次には就職活動に専念するという学生もいましたね。でも、今はすっかり様変わりしました。

 特に変化が大きいのは、大学1年生のあり方ではないでしょうか。かつては専門教育を受けるための準備として、様々な教養科目や語学、基礎科目を中心に学ぶ期間というイメージでした。100人以上の大人数が履修するような講義科目が多くなりがちで、人によっては退屈に感じることもあったと思います。

 現在、大学は初年次教育にかなり力を入れています。鉄は熱いうちに打てとばかりに、専門的な学問の面白さに触れられるカリキュラムで学生の意欲に応えてくれます。授業スタイルの工夫も進み、グループでの議論やフィールドワーク、プレゼンテーションなどを豊富に盛り込んだ、アクティブラーニング型の授業が広がりました。こうした授業を通じ、リサーチの仕方やデータの扱い方、ディスカッションの技法など、大学で学ぶための準備教育を丁寧に行うのが昨今の大学教育のトレンドです。少人数でのゼミを1年次から用意する大学も珍しくありません。(「代返」なんてのは、とっくの昔に死語です)

 今の学生達はなかなか多忙です。授業の成績はGPA(Grade Point Average)という数字で評価されます。手を抜いた授業があると、その成績が全体のGPAを下げてしまいますので、しっかり学ばねばなりません。また大学によってはCAP制といって、学期中に履修できる授業の数に上限を設けています。授業の予復習時間をしっかり確保させるための仕組みなのですが、結果的に「最初に単位を稼ぎ、4年次には暇になる」といった計画は難しくなります。かつての大学生イメージに比べると、総じて「いつもしっかり勉強している」と言えるのではないでしょうか。

就活のスケジュールも早期化。昔に比べていまの大学生は忙しい?

 海外留学に関心を寄せる学生も増えていますが、参加したいプログラムによっては、かなり前から準備をしておく必要があります。このあたりも、気になるのなら早めにリサーチしておいた方が良いでしょう。

 さらに保護者世代が驚くのが、就職活動のスケジュール。政府が定め、経済団体に要請している就活ルールは「広報解禁3年3月、選考解禁4年6月、内定解禁4年10月」……なのですが、実際にはもっと早くから採用活動をスタートさせている企業も少なくありません。最近では「無印良品」を展開する株式会社良品計画が「通年採用」の開始を発表し、話題になりました。なんと大学1年生から選考を受けられるそうです(入社時期は大学卒業後の4月1日)。ここまで早い事例は流石にまだ珍しいと思いますが、大学3年の春・夏頃からインターンシップなどを通じて人材獲得に動く企業は増えていますし、通年採用の動きも徐々に広がっていくものと思います。

 大学側も学生達が社会を理解し、自分のキャリアについて十分に考えた上で就職活動へ臨めるようにと、大学として正規のインターンシップ科目を用意したり、様々なキャリア教育を展開したりしています。大学1・2年次から始まるものもあります。企業等の活動に早くから触れることは、「もっと○○の分野を学んでおこう」といった、大学での学習計画の参考にもなるでしょう。昔と比べ、大学4年間の過ごし方が1〜2年くらい前倒しになっているようなイメージでしょうか。

 「えっ、1年生のうちからもう就職のことを考えるの?」
 「もっとのんびりキャンパスライフを送らせてあげたい」

 ……なんて、思った方もいるかも知れません。でも終身雇用、年功序列といった雇用慣習が変わり、転職も当たり前の社会になってきた以上、大学4年間のあり方も昔と同じままではいられません。先の見えない社会で生き抜くための知識やスキルを磨ける環境を整えることは、大学の使命でもあります。自己責任だと学生を放り出すのではなく、教える側もその責務を果たすというのが現在の大学です。

 早くから専門的な授業を受けられることや、キャリアについて視野を広げる機会があることは、学生本人にとっても悪い変化ではないのではないか、と私は思います。それにコロナ禍による影響はあるものの、いまの学生達も自分なりに授業やキャンパスライフを楽しんでいます。一昔前とは少々様子が違うかも知れませんが、現在の若者達の4年間をぜひ応援してあげてください。

(ご参考)産業能率大学の初年次教育・キャリアサポート

倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/