プロが教える「進路づくり」 —AI時代のキャリアに必要な視点と学力—
第5回 <2019年度連載>

第5回 2020年度からの新大学入試③
あなたを高く評価するのはどの大学?

あらゆる選抜方式で「学力の3要素」が問われることに

2020年度から、大学入試のあり方が大きく変わります。大きな変更点は2つ。
学力観が変わることと、その学力の評価軸が大学ごとに多様化することです。

これまで大学の入試方式は大きく分ければ2種類でした。
1つめは筆記試験で基礎学力を測る入試。テストの点数の高い順に合格を出す入試で、一般入試やセンター試験利用入試などがこちらに該当します。2つめは面接や志望理由書などを活用し、多様な観点で総合的に「学ぶ力」を評価する入試。推薦入試やAO入試はこちらのタイプです。

2020年度からは、この状況が変わります。
これまで筆記試験型の入試で学力とされてきたのは英・数・国・理・社などの教科に関する知識および問題を解くスキルでしたが、我が国が進める高大接続改革や新しい学習指導要領は、学力を以下のような3つの要素で改めて定義しています。
そして、大学入試は「大学入学者選抜」となり、次のように区分が変わります。

一般選抜でも多面的・総合的評価の導入を推奨する一方、総合型選抜でも教科に関する知識・技能をしっかり評価して良いことに。

「学力だけ」と「学力以外」の2択に近かった従来の入試方式とは違い、あらゆる方式で学力の3要素が測られることになります。

「アドミッション・ポリシー」は、入学者選抜に関する重要なヒント

ここで、こんな事例を考えてみましょう。
ある理工系大学に、2人の高校生が出願してきました。どちらが合格すると思いますか?
従来の入試方式でしたら予想は簡単。
一般入試なら絶対にA君が受かります。点数以外の要素は一切評価されないからです。

一方、AO入試などであればB君が受かる可能性が高いでしょう。
しかし、2020年度以降は、これらすべてが総合的に評価されることになるわけです。

どちらを合格させるか、大学も悩むかもしれませんね。
さらに複雑にしてみましょう。

A君は点数が高い上、サイエンスに関する活動にも積極的。
一方、B君には、少し違う魅力や強みがあるようです。

さて、受かるのはどちらでしょうか?
この問いに対する答えは、おそらくこうなります。
「A君をより高く評価する大学と、B君をより高く評価する大学がある」。

これまでのコラムで述べてきた通り、大学によって教育方針が違うのですから、その教育を受ける学生の選抜基準も違って当然です。
学力の評価軸が大学ごとに多様化する、と冒頭で述べたのはこういうことです。

予備校が提供する模試などで言えば、入学難易度を示す偏差値の数字が低い大学に落ち、より難易度が高い方の大学に受かる……といった現象は今後、現在よりも増えると思われます。偏差値だけをアテにして出願先を決めるのはやや危険かもしれません。

その大学がどのような能力や姿勢を受験生に求めているか、受験生側は知りたいですよね。
実は書かれているのです。それが「アドミッション・ポリシー(AP)」という情報です。

「2020年度からの新大学入試」と題し、第3回ではディプロマ・ポリシー(DP)、第4回ではカリキュラム・ポリシー(CP)についてそれぞれ解説しました。
今回のAPは、CPが前提としている入学者の資質や能力、姿勢などを示しています。

たとえば、DPで「グローバルなエンジニアを育成する」と掲げ、CPに「一部の専門科目を英語で開講する」などと記載している大学なら、APでも「一定水準以上の英語力」などを受験生に求めたりするわけですね。(このような教育方針を持つ大学なら、総合的な評価の結果、上記の例で挙げたB君タイプの受験生にスポットを当ててくれる可能性は高そうです)

APは、入学者選抜での合否判断にも関わってきます。
そう聞けば、多くの方が各大学のウェブサイトに書かれたAPの文面をチェックされると思いますが、正直なところ、APだけを読んでもその大学の姿はなかなかイメージできないと思います。
DP、CP、APは連動していますから、3つ合わせて理解することが効果的。
これまで本コラムの3回にわたって、これら「三つの方針」を解説してきたのは、この重要性をぜひ一人でも多くの高校生に知っていただきたいからです。

ただし、「受かりそう」という観点だけで出願先を決めたり、入りたい大学に合わせて自分を偽ったりする進路選択はお勧めしません。
自分に合った教育方針を掲げる大学をきちんと探していけば、結果として、あなたを評価してくれる大学に出会える。そういう観点でぜひ「三つの方針」を参考にしてみてください。

(ご参考)産業能率大学の三つの方針

倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)http://kurabeshiki.com/