プロが教える「進路づくり」 第6回 <2022年度連載>

第6回 知らないと損をするかも? 実は多様な「一般選抜」の中味

【英語外部試験に共通テスト。様々なスコアを利用できる方式が増えている】

受験生の皆様はいよいよ忙しくなる時期ですね。総合型選抜や学校推薦型選抜は入試の真っ最中。年明けからスタートする一般選抜も、本番に向けてここから追い込みの時期に入ります。

一般選抜(一般入試)は、筆記試験を主体とする入試方式です。文系なら英語・国語・社会科、理系なら英語・数学・理科を中心に、高校での学習成果をテストの点数で評価。ほとんどが1〜3月に実施されます。昔からある入試スタイルですので、保護者や教員の皆さまにとっても馴染みがあるものでしょう。だからこそ「実は変わった」という点が気づかれにくいかもしれません。

具体例として、産業能率大学の一般選抜を見てみましょう。
たとえば英語外部試験の活用。実用英語検定(英検)やTOEFL iBTといった各種試験のスコアを利用できる入試方式「一般選抜 前期プラスワン」というものがありますね。英語外部試験と大学独自の英語試験を受験した場合、いずれか高得点を選考時に採用してくれます(外部試験のスコアを持っていなくても問題ありません)。外部試験のスコアを持っている方にとってはメリットが大きいですね。

大学入学共通テストのスコアを利用できる入試方式も用意されてます。「大学入学共通テスト利用方式(3教科型・4教科型)」は、共通テストのスコアだけで合否が決まります。一般選抜の中期日程では、大学による独自試験(英語、国語、数学から2教科を選択)と、大学入学共通テストでの地理歴史、公民のスコアで合否を判定。「スカラシップ選抜(国公立大学併願タイプ)」では、大学入学共通テストの5教科7科目と大学の独自試験によって合格者を選抜します。大学入学共通テストを受ける方はお得になる仕組みですね。特に国公立大学を受験される方であれば、チェックしておくと良さそうです。

このように様々な外部試験のスコアを利用できる仕組みが、多くの大学に広がってきています。大学としても優秀な学生に出会う機会は増やしたいのです。

【正解がない問題も? 自分に合った入試方式を選べるよう、情報収集はお早めに】

一般選抜の変化は、入試問題の中味にも見られます。
(ご参考)第10回 基礎学力だけでは受からない?一般選抜の新たなスタイル「未来構想方式」
以前にご紹介した産業能率大学「未来構想入試」は一般選抜のひとつですが、合否判定に使用される事前記述課題や未来構想レポートには、これでなければダメだという決まった正解がありません。受験生の数だけ解答があります。小論文や面接などを一般選抜の中で課す大学は以前からありましたが、ユニークな試験問題を通じて受験生の思考力や表現力などを測る傾向は、ここ数年でますます多くの大学に広がってきたように思います。

大学入学共通テストは全国で一斉に実施される「共通試験」ですので、正解はひとつに決まっています。しかし大学の独自試験は、その限りではありません。各大学の求める人材像が、受験生へのメッセージとして色濃く表れます。

「総合型選抜と似てきてない? 何が違うの?」と思う方もいるかもしれません。基本的には、試験当日にアウトプットしたものだけで評価するのが一般選抜であり、高校生活を通じて経験したプロセスや挙げた成果などを総合的に評価するのが総合型選抜だと思っておけば良いでしょう。

選べる選択肢は増えました。自分に合った入試方式を選ぶことで、受験生は様々なメリットを享受できます。逆に言うと、一般選抜の仕組みは以前と比べてかなり多様化し、複雑になってきています。お得な仕組みも、知らなければ恩恵を受けられません。受験生の側も情報を早めに集めておいた方が良いでしょう。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/