プロが教える「進路づくり」 第13回 <2020年度連載>

第13回 新学年に上がるいま、考えておくと良いこと

この1年間の「自分」を振り返ってみよう

学年が変わるこの時期、何だか落ち着きませんよね。新高校3年生は学校で「受験生の自覚を持ちなさい」なんて言われている頃でしょう。新2年生は部活動などでますます忙しくなってきます。そして新1年生はいよいよ始まる高校生活に向けて、期待と不安の両方が膨らんでいるものと思います。

高校生の1年間は人生において、とても貴重。そして、あっという間です。どのように過ごすのも本人の自由ではありますが、せっかくなら悔いのない時間にしてもらいたいと思います。そんな観点から、「いまの時期に考えてほしいこと」をお伝えします。

すべての学年に共通してお勧めしたいことがあります。それは、この一年間の振り返り。勉強や部活動など、様々な時間を過ごしてきたと思います。それらを以下のような観点で今一度、思い返してみてください。

・この1年間を振り返り、「あれで自分は成長できた!」と思える経験、ベスト1位は?
・具体的には、どんなことをした?
・当時、どんな気分だった? どんなことを考えていた?
・どのように成長できたと思う? できなかったことができるようになったのだとしたら、それは何?
・成長を後押ししてくれた人を一人選ぶなら、誰?


新しいこと、難しいことに挑戦しているときは、皆、余裕がありません。物事が進行している最中は、上記のようなことはあまり考えていないものです。だからこそ今のような節目の時期に振り返り、整理する。意識してみると、気づけることは沢山あります。そのときの情景をできるだけリアルに思い出してみましょう。どんな気分だったか、など感情面の変化も自分を知る上で大事なヒントになります。

第10回 ただ「やる」だけではもったいない!振り返りの勧め

以前の記事でも、振り返りの大切さについて述べました。振り返りで得られる様々な気づきは、将来の進路やキャリアを考える参考にもなるはずです。なお、これらの質問は保護者からしても良いのですが、自分の心の動きを保護者に語るのは、ちょっと抵抗があるかもしれませんね。「こんなことを考えると良いらしいよ」とだけご本人にお伝えいただけば、答えは無理に聞き出さないで良いと思います。

今後1年間にやっておきたいことは?

今後1年間の過ごし方を考える時期でもあります。新1・2年生にお勧めの目標設定は「部活と授業だけの1年間にしない」。部活動に打ち込むのは素晴らしいことですが、社会のこと、将来のことを考えるキッカケは学校の外にも山ほどあります。ボランティア活動でも、ものづくりでも、何でも構いません。

大学や公的機関が高校生向けに主催しているイベントやプログラムだってありますし、地域のお祭りの手伝いなどでも良いです。こうした多様な機会を「部活で忙しいから……」とスルーしてしまうのはもったいない。

コンフォートゾーンという言葉があります。意味は「快適な場所」。いつものメンバー、いつもの環境で、無理なくできる行動ばかりを繰り返していたら快適ですよね。でも、これでは大きく成長できません。
かといって過度に無理をし、パニックになってしまうような場では倒れてしまいます。「ちょっとだけいつもと違うことに挑戦する」、「気になっていたけど、自信がなくて敬遠していたことを思い切ってやってみる」というくらいで良いと思います。

保護者の皆様はお子さんがコンフォートゾーンから一歩踏み出そうとしていたら、「そんなことより勉強に集中して!」なんて言わず、ぜひ快く応援してあげてください。次の振り返りのときに、ちゃんと大事な気づきに繋がるはずです。
産業能率大学が開催する「高校生のためのキャリア開発プログラム」の様子
新3年生はいよいよ進路を具体的に検討する学年です。勉強に集中せねばというプレッシャーも大きいでしょう。気になる進学先は早めに、計画的にリサーチを進めた方が良いでしょう。後回しにしていると受験勉強に押し流されて、適当に選ぶことになりかねません。春の間にオープンキャンパスを開催する大学も増えています。保護者の方から「勉強の気晴らしにでも観に行ってきたら」と背中を押してあげても良いと思います。

振り返りと、今後の目標設定。忙しなくなりがちな時期だからこそ、ちょっとだけこの時間をとってみてください。一年間の過ごし方が変わってくると思います。

(ご参考)産業能率大学の高校生対象の春のイベント

高校生のためのキャリア開発プログラム 
産業能率大学では、高校生が自分の将来について考える3日間の通学講座を春と夏に開催しています。いくつかのテーマについて同年代の人と話し合い、自分の将来について考えます。本プログラムでは、情報活用能力(情報活用能力、考える力、学ぶ力、取捨選択する力)や将来設計能力(夢を抱き、実現するためのプロセス設計能力)、その他、意思決定能力、問題解決能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力を伸ばします。
産業能率大学では、オープンキャンパス来校型を3月~8月まで、自由が丘と湘南の両キャンパスで毎月開催しています。本学の学びの特色やキャンパスライフを学生が紹介するプログラムが充実している他、保護者ガイダンス、入試ガイダンスも行っています。また、グループワーク体験やキャンパスツアー、模擬壽朝など、体験型のプログラムもご用意しています。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/