プロが教える「進路づくり」 第9回 <2020年度連載>

第9回 オンライン授業、受けてみてどうだった?

大学のオンライン授業は着実にレベルアップしている

この2020年度、春は多くの大学が新型コロナウイルスの感染予防策としてキャンパスを閉鎖し、学生への授業をオンラインで実施しました。秋以降は、一部で対面授業を再開する大学も増えています。ただ、この原稿を書いている間も、全国の感染者数はまた増加の兆しを見せ始めており、今後もコロナ禍がすぐに収束するという保証はなさそうです。

状況が落ち着かないこともあり、多くの大学は、対面授業の再開にはどちらかと言えば慎重のようです。実習や実験をはじめ、必要な授業は対面に戻しつつも、講義などはオンライン授業のスタイルを残すという方針の大学が多いでしょうか。

ところで、オンラインの授業って、実際どうなのでしょう? 保護者の皆様も気にされている点だと思います。

この半年間、オンラインで学生により良い授業を提供できるよう、多くの大学関係者が試行錯誤を重ねてきました。効果的な取り組みは組織の垣根を越えて共有され、他大学でも参考にされています。結果的に大学のオンライン教育が、全国的にレベルアップしていることは間違いありません。

実際、大学関係者達が学生に行った各種の調査では、オンライン教育のメリットが明らかになってきています。対面だった前年度に比べて、学生の理解度と満足度が上がったという調査結果のほか「前期の授業をもう一度受ける場合、オンラインと対面のどちらを望むか」という問いに対して、オンラインという回答の方が多かったという調査もあります。

オンライン授業でも、アクティブラーニングは可能?

議論や発表を重んじる、アクティブラーニング型の授業ではどうなのでしょうか?
産業能率大学の場合、前学期は初年次ゼミを除き、全ての授業をオンライン形式で実施。後学期は全ゼミと一部授業で対面授業を実施しています。オンライン授業は①ZoomやTeamsによる同時双方向型、②学習支援システムを利用したオンデマンド型、③①と②の混合型、④対面とオンラインのハイブリッド型、という4方式で展開しています。

前学期の授業アンケート(※2)では、以下のような声が寄せられています。

・一回一回の授業の内容がとても濃かった。また、自分のペースで学習し、復習ができるのは良いと思った。
・先生が学生の様子をよく見てくださり、積極的に質問をしていただいたので、発言がしやすかった。
・対面だと手を挙げづらいこともあるが、オンライン上では比較的発言がしやすかった。
・オンライン上でグループを作ってワークを行う機会があり、オンラインでも仲間と協力して学ぶことができた点が良かった。
・学修支援システムの掲示板上で学生の質問や意見、それらに対する先生の回答を共有でき、理解が深まった。
・オンラインの授業を受ける前までは授業の質に不安を感じたが、実際に授業が始まると、対面授業と変わらない質を感じることができた。


これらを見る限り、先生方の様々な工夫もあり、オンラインでも効果的なアクティブラーニング型の授業が行われているようです。むしろ対面とは異なるメリットを感じているという声もありますね。「オンライン授業だと、他の学生とコミュニケーションできず、学生が孤立してしまうのでは」と心配する声もマスメディアやSNSではしばしば見かけますが、その点は授業の工夫次第なのかなと思います。

こうした調査結果を見る限り、こと授業に関しては、オンラインだから質が低い……とは限らないように思えます。

※2:産業能率大学が前学期最終週の授業で実施した「学生による授業評価」より

授業外のオンラインでのサポートにも注目

保護者をはじめ、多くの方が懸念されているのはどちらかと言えば授業以外の部分、キャンパスライフ全体の充実度ではないでしょうか。以前のコラムでも書きましたが、私もその点は気の毒に感じています。ただ、そうは言っても安全第一。「そろそろ通わせてあげたい」という心情や願望と、感染する・しないという事実は別です。今は対策を徹底しつつ、可能なことを徐々に増やしていくしかありません。

産業能率大学の場合、全学生に対してアカデミック・アドバイザーの教員がオンラインで面談を実施したり、ピアサポートグループの学生がオンライン上で1、2年生をサポートしたりといった取り組みを行っています(詳しくはこちら)。学生本人はもちろん、保護者の皆様にとっても心強い取り組みですね。

コロナ禍への対策は、少しずつ前進しています。とは言え、まだまだ予断は許しません。こうしたサポートの仕組みなども含め、引き続き各大学の取り組みに注目してみてください。

倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)http://kurabeshiki.com/