地域連携で得た学びの集大成として~「卒業研究」の一つのカタチ~

情報マネジメント学部 教授 三浦 智恵子
 産業能率大学 情報マネジメント学部 三浦ゼミ(以下、「本ゼミ」とする)の特徴は、学外の多くの異なる立場の方々とかかわることに活動の重点を置いている点にある。かかわる人の違いの数だけ学びがある、と考えているからだ。
 学生のがんばりで、これまでかかわった地域や企業の方々からは「またぜひご一緒に」と言われ、感謝されることが多い。しかし、「大学生としての学び」「研究活動の一環」としては、正直このままでよいのかという思いもあった。マーケティングの実践やさまざまな社会貢献活動、すべて実のある活動ではある。ただ、4年間(専門ゼミでいうと2年半)という期間で、いろいろ興味・関心のある活動をしたはいいものの、その場で「満足」して終わり・・・、せいぜい報告書を提出して終わり、でよいのかと。
 そんな思いを抱き始めていた時期、2022年度に「卒業研究」を4年次ゼミで正式に行うことになった。個人で興味のあるテーマを掘り下げるスタイルでもいいのではないかと考えていたが、当時のゼミ生から強い提案があった。
「コロナ禍で思うような課外活動ができないことも多かった。やっと解禁された今、これまで異なるプロジェクトで別々に活動していたメンバーと最後くらい一緒に一つのものを作りたい」と。
彼・彼女らの提案はこうである。
「JAでのマーケティング関係、こども関係、高齢者関係とこれまでゼミの中でプロジェクトに分かれて活動をしてきた。違う地域の違う連携先とかかわる中で、みんなそれぞれ得意技を得たと思う。それを組み合わせたらおもしろそうだし、お互いのためにもなる。地元の小学校という場をお借りして、自分たちが得たものをこどもたちに与えることができたら楽しいんじゃないか。」
 学生が求めた「集大成」は、これまでもお世話になっている伊勢原市立比々多小学校の4年生向けワークショップとして「野菜のありがたみを知ろう」というテーマで企画され、実現した。
 JAプロジェクトだった学生は、JAに野菜を納入している農家さんへのインタビューを行い、こどもに楽しく栄養や地産地消などの知識が身につくクイズなどを作成した。こどもプロジェクトの学生は多様なこどもへの接し方をあらためて学び、飽きずに学んでもらえるようなワークショップの構成を検討した。高齢者プロジェクトの学生は、これまでに身につけた1対1や1対2で教えるスキル、コロナ禍で施設での直接的なボランティアができなかった時期の活動「お散歩した気分になることができる伊勢原の名所の動画」を作成した経験を活かし、JAプロジェクトが取材した素材を小学生用教材として動画に仕上げた。
 ゼミ全体(大人数)での活動には葛藤も生まれることもあった。しかし、「こどもたちに楽しいワークショップを!」の目的は無事達成され、卒業研究としての成果を残すことができた。

 大学での学びの「集大成」の方法はさまざまあっていい。本ゼミの卒業研究のカタチも、学生の希望によってこれから変わっていく可能性もある。
 しかし、せっかくの「多岐にわたる」「多方面の」地域連携・産学連携の学びを「その時活動して終わり」にしないことの重要性については、あらためて強く意識すべきなのではないか。また、「地域連携・産学連携で経験した学び自体を“さらに連携”させ、まとめあげていく」仕組みを教員が仕掛けていくことは、学生たちが学外で得た知識と経験を主体的に深掘していくことにつながるのではないか。今回、学生からの卒業研究に関する提案と活動によって、筆者自身が得た学びはこの2点である。