プロが教える「進路づくり」 第4回 <2024年度連載>

第4回 新課程入試って何? 保護者が知っておくべきことは?

【新課程で、何が変わるの?】

 2024年現在の高校3年生は、新課程入試の対象者です。でもこの「新課程」って何のことでしょうか? 高校で聞いた気もするけれど詳しくは知らない、でも入試の説明で頻繁に目にするのでちょっと不安……なんて方のために、保護者が知っておくべき点に絞ってご説明をします。

 幼稚園から高校までの学校教育において、教育課程の基準になっているのが学習指導要領。社会の変化などに対応するため数年おきに改訂されているのは、皆様もしばしばニュースなどで耳にされると思います。

 現在はちょうどその改訂時期にあたり、高校では2022年の1年生から新学習指導要領での学びがスタートしました。その生徒達が現在の3年生。大学入試も新しい教育課程に合わせて今回から変わるので、「新課程入試」というわけです。

 新学習指導要領の狙いは、変化の激しい社会で生きる力を身につけるため「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力、人間性等」という三つの柱で資質や能力をバランス良く育む、というもの。そんな新課程の目玉の一つが「総合的な探究の時間」をはじめとする探究的な学びです。高校での探究活動の成果を評価する入試を始める大学も増えていますので、学習指導要領の改訂が受験に与える影響はやはり大きいのですね。

 「世界史A / B」「日本史A / B」といった科目が「歴史総合」「世界史探究」「日本史探究」などに再編されるなど、教科や科目の区分も変わっています。全国で行われる大学入学共通テストの教科・科目もこれに合わせて変更されるため、様々なところで学修範囲の変更が生じています。「情報」が大学入学共通テストに加わったことで、国公立大学の受験者の負担が増えるなどの影響も出ています。

【大学受験に与える影響は?】

当の高校生達は入学当初から新課程で学んでいるので、従来からの変更点を意識することはあまりないかもしれません。でも高校教員や大学の側は「いよいよ今年から新課程入試か……」とドキドキしているはず。正直なところ、受験生の動向にどのような影響が出るかは、なんとも言えません。

 今回に限らず、入試制度などが変更された際は多かれ少なかれ、志願者動向にも影響が出ます。実際、昨年度の入試では「来年から課程が変わってしまう」ということで、浪人を回避する動きが見られました。結果的に安全志向、年内入試志向も強まったと言われています。それを考えれば、今年は浪人がやや少ないことになるのですが……「だから強気の受験でOK」と考えて良いかどうか。複合的な要素が絡む話なので、断言は難しいのです。

 大学入学共通テストの出題傾向がどう変わるか読めないこと、「情報」の受験が必要になることなどから、国公立大学の志願者が減るのでは? と予想する方は少なくないようです。その場合、私立大学の志願者が増える、あるいは国公立と私立の併願が難しくなるなど、志願者の動向に何らかの影響が出る可能性もあるでしょう。

 状況が読めない一般選抜を避け、年内の総合型選抜や学校推薦型選抜を選ぶ受験生が増えるかも……と想像される方もいます。これも確かに考えられる事態ではあります。

 ……と、このように様々な情報が飛び交っています。保護者の方も気になるところでしょう。ただ、あまり過度に心配し、「新課程入試だから志望校を変えた方が良いのかな」「一般選抜は避けた方が無難だろうか」などと、受験プランを大きく見直す必要まではないと私は思います。置かれている状況はみな同じ。大学入学共通テストを避けて私大受験や総合型選抜にシフトしたら、そちらの方が競争率が上がってしまった……なんて可能性も。このあたりの損得はやはり、蓋を開けてみるまでわかりません。

 それに学びたい大学や学部を変え、後で「やっぱり受験すれば良かった」と後悔するのももったいない。すべてのチャンスで全力を尽くす、という受験の原則は新課程であろうと変わりません。まして現時点で高校3年生であるなら、情報に翻弄されて目標を見失ったり、ペースを乱したりする方がリスクです。保護者の皆様も、新課程入試の意味はアタマの片隅に入れて起きつつ、あまり振り回されないようにするくらいが良いのではと思います。
も。気になる取り組みがあったら、ぜひ早めに申し込んでみてください。
倉部 史記
進路指導アドバイザー。北海道から沖縄まで全国200校の高校で生徒・保護者向けの進路講演を実施。各都道府県の進路指導協議会にて、高校の進路指導担当教員に対する研修も行う。多くの大学で入試設計や中退予防、高大接続についての取り組みを手がける。三重県立看護大学高大接続事業・外部評価委員、文部科学省「大学教育再生加速プログラム(入試改革・高大接続)」ペーパーレフェリーなど、公的実績も多数。
日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。著書に『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/