プロが教える「進路づくり」 第2回 <2024年度連載>

第2回 受験生の半分は年内に合格している? 総合型、学校推薦型選抜とは

【学校推薦型選抜と総合型選抜って、そもそもどんな入試?】

前回のコラムでは、大学入試の変遷をご紹介しました。今回は学校推薦型選抜、総合型選抜について、「そもそもどんな入試なのか」といった点から詳しくご説明します。

 学校推薦型選抜は文字通り、高校が大学へ生徒を推薦する入試です。学業成績(評定平均)、欠席日数、生徒会や部活動での取り組みなど、高校生活を通じて積み上げてきた実績が評価に使われます。「評定平均4.0以上」といった出願条件が設けられていることも多いでしょうか。日々実直に学業などに向き合い、高校生活を充実させてきたコツコツタイプの方に向いている入試と言えるでしょうか。

 この学校推薦型選抜は、公募制推薦と指定校制推薦に大別されます。指定校制推薦の場合、各大学が各高校へ推薦枠を設定しており、その枠を使えば基本的にはほぼ確実に合格できる点が特徴。ですが枠の数は限られていますので、校内での競争はあります。公募制推薦の場合、枠にとらわれる必要はありませんが、確実に合格できるとは限りません。

 一方、総合型選抜は「受験生本人が大学へ自分を推薦する入試」などと言われることもある入試形式で、国立大学などでも活用が進んでいます。書類や面接、プレゼンテーションやグループワーク等、様々な評価方法を通じて受験生の成長可能性を総合的に見極めるという点が特徴。高校で行った探究学習での取り組みを問う例も増えています。主体的に挑戦を重ねて来た方、解決したい社会課題を真剣に考えたという方、探究学習に本気で取り組んだ方など、基礎学力のスコアだけでは測れない点をPRしたい方に向いた入試です。

 総合型選抜はかつて「AO入試」とも呼ばれていました。アメリカの大学では一般的に、学校の成績やエッセイ、推薦状、課外活動、テストの結果、面接などの様々な資料をもとに、総合的な判断で入学の可否を決定します。こうした入学者選抜を取り仕切るのが各大学にあるAdmissions Officeというチームで、日本のAO入試もここに由来します。1990年に慶應義塾大学が新しい入試方式としてAO入試という呼称を使い、それが全国の大学へ広がっていきました。

 以前のAO入試は日本の入試を取り巻くルールの影響などもあり、基礎学力を問わないものがほとんどでした。そのため世間では「勉強しなくても受かる」といった印象を持つ方も少なくなかったようです。現在は総合型選抜でも、調査書やテストなどを通じて基礎学力や学習習慣の有無を評価する大学が増えています。

【併願できる推薦入試も増えている?】

こちらをご覧ください。現在、私立大学の学生の実に6割近くが、学校推薦型および総合型選抜による入学者です。
 これは全国の私大すべての合算値で、実際の比率は大学や学部によって異なります。それでも保護者の方は驚かれるのではないでしょうか。様々な評価方法で多様な学生を受け入れようというのが、近年の大学入試の傾向なのです。学校推薦型および総合型選抜の場合、そのほとんどは12月末までに合否が確定します。私大志願者の過半数は、年末までに行き先を確保しているという状況です。

 これまで学校推薦型選抜は「専願」、つまり合格したら必ず進学することを条件にする例が多かったのですが、たとえば近畿エリアでは公募制推薦の併願を認める大学が多いなど、地域差もありました。最近では関東でも併願可能な学校推薦型選抜を設ける例が出ています。産業能率大学でも専願型と併願型、二種類の公募制推薦が設けられていますね。

 総合型選抜も同様です。以前は「志望理由」重視ということで、専願を前提にしている例も多かったのですが、近年では探究学習などによって磨かれた多様な力を評価する入試だという点に比重を置く大学も増え始めています。産業能率大学の場合、経営学部マーケティング学科で行われているMI(マーケティング・イニシアティブ)方式は、入学後の手続き(二次手続)期限が2/20と遅めに設定されており、実質的に他大学と併願できる仕組みになっています。

 学びたい大学・学部があるなら、チャンスは最大限活用することをオススメします。学校推薦型選抜の場合は日々の積み重ね、総合型選抜も出願に向けた準備が大切。その大学の教育方針に対する深い理解も求められますので、オープンキャンパスはもちろん、各大学が高校生向けに行うイベントなどには早めに参加しておいた方がいいでしょう。次回のコラムでは、具体的な大学リサーチのポイントなどをお伝えします。
倉部 史記
進路指導アドバイザー。北海道から沖縄まで全国200校の高校で生徒・保護者向けの進路講演を実施。各都道府県の進路指導協議会にて、高校の進路指導担当教員に対する研修も行う。多くの大学で入試設計や中退予防、高大接続についての取り組みを手がける。三重県立看護大学高大接続事業・外部評価委員、文部科学省「大学教育再生加速プログラム(入試改革・高大接続)」ペーパーレフェリーなど、公的実績も多数。
日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。著書に『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/