プロが教える「進路づくり」 第4回 <2023年度連載>

第4回 オープンキャンパスで保護者がチェックすべき点は?

【保護者だからこそ気づけるポイントもある】

夏はほとんどの大学がオープンキャンパスを実施します。今は保護者が一緒に参加されるケースも多いですし、大学側も保護者向けの講演や情報発信に力を入れています。そこで本稿では保護者の皆さまに、オープンキャンパスの効果的な活用法をご説明します。

 そもそもの話として「保護者は一緒に行くべきか?」と迷っている方へ。一緒に行っても良いし、もちろん行かなくても構いません。「高校生なのだから一人で行ってきなさい」という教育方針も素晴らしいと私は思います。

 ただ、保護者の方が気づきやすいポイントがあるのも事実です。たとえば就職率や中退率などの数字。「具体的にどのような業界に、何人くらいが就職しているのか」「中退や留年の原因はどこにあるのか」といった会話を通じて、入学後の実態を立体的に把握するといったコミュニケーションを、すべての高校生ができるわけではありません。

 オープンキャンパスは楽しいイベントです。学食を体験したり、サークルの話を先輩から聞いたりと、ついキャンパスライフの様子に高校生の目は向きがち。でも一番大事なのは、どのような学びができるかと、それによってどう成長できるかですよね。その点をしっかり検証する上で、保護者の冷静な視点が有効な場面もあるでしょう。雰囲気ではなく事実、キャンパスライフではなく教育を確認することが大切ですね。

 イベントの性質上、オープンキャンパスではどうしても施設や設備、立地といったハード面の印象が前面に出ます。だからこそゼミはどのように実施されるのか、アクティブラーニングの授業はどのように行われるのか、困ったときの支援体制はどうかといったソフト面を、お子さんと一緒にリサーチしてみることをお勧めします。

 先輩学生の様子から読み取れることもあります。現在では多くの大学で、学生スタッフがオープンキャンパスの運営に参画しています。中には学生主導で企画を行っていたり、学生が中心になってオープンキャンパス全体の運営を行っていたりといった、すごいケースも。

 もちろん学生達はこの日に向けて準備や練習を行っているわけですので、各種の説明や案内などはみなそれなりに上手でしょう。それでも決まったセリフをただ繰り返し暗唱しているだけなのか、自分の考えを自分の言葉で語っているのかといった違いは、大人が見れば何となくわかるものです。来場者への対応の様子などから「普段から議論や発表で鍛えられているのかな」「社会人と話す機会が多いのだろうな」などと類推できることもあるでしょう。こうした観察眼も、保護者の方の強みではと思います。

 また高校生は、知名度の高い都心の大規模総合大学ばかりを巡りがちです。それを悪いとは言いませんが、小規模な大学や単科大学の方が肌に合うという人も本当は少なくないはず。似たような環境の大学ばかりまわっていても気づきの幅は広がりません。対照的な特徴を持つ大学を意識的に選んで比較してみることで、大学を見る目が養われます。

【保護者が気をつけるべき点も……】

 保護者が気をつけるべきポイントもあります。当然ですが大学で学ぶのも、その後に働くのもお子様本人です。あなたが学ぶわけではありません。たとえ保護者が気に入った大学であっても、本人が学びたいと思えないのなら、望んだ結果にはならないもの。保護者に強く勧められて進学した大学や学部に関心を持てず、結果的に中退してしまう学生も少なくないのです。考えや結論を押しつけるのではなく冷静に、サポート役に徹しましょう。

 保護者ができることをここまで述べてきましたが、もし本人が「オープンキャンパスには一人で(あるいは友人と)行きたい」「相談ブースには一人で行ってきたい」なんて仰るようなら、その意志を優先してあげてください。保護者に聞かれたくない質問だってあります。その場合は本稿で述べたチェックポイントや注意点を本人に伝え、自分でしっかり確認してきなさいと言えば良いのです。最近ではオンラインでの情報発信に力を入れる大学も多いので、オンラインの方を保護者がチェックし、対面イベントは本人が参加といった役割分担にするのもアリですよ。

 高校3年生だけではなく、最近では2年生、1年生からオープンキャンパスに参加する方も増えています。私も早期からの活用をお勧めします。ぜひこの夏は、色々な大学に触れてみてください。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/