プロが教える「進路づくり」 第2回 <2021年度連載>

第2回 保護者のためのオープンキャンパス活用法

今年のオープンキャンパスは、対面式とオンラインの両方で

高校生が大学を知る上で、重要な機会となっているのがオープンキャンパス。様々な学部・学科の模擬授業やキャンパスツアー、入試制度についての説明会、在学生や教職員による質問・相談コーナーなど、各大学とも様々な企画を用意しています。企画運営の一部を学生達に任せる大学も多く、そこでの先輩学生の様子が志望校選びの参考になったという声も良く聞きます。

昨年はコロナ禍の影響でオープンキャンパスを中止したり、オンラインのみで開催したりという大学も少なくありませんでした。2021年度の今年は、オンラインのコンテンツを充実させつつ、対面式のオープンキャンパスも開催予定という大学が増える見込み。志望校が気になっていた方にとっては、待ちわびていた夏になりそうです。

対面の場合、感染対策として定員を厳格に設定し、事前申込制を採るケースが多いのでご注意を。志望校のウェブサイトは小まめにチェックした方が良さそうです。多くの大学が高校生向けのSNSを運営していますので、そうしたアカウントをフォローしておくと大事な情報を逃さずにすみます。

また意欲や資質などを総合的に評価する「総合型選抜」入試の中には、出願前に、大学が実施する体験プログラムなどに参加していることを求めるものもあります。そのプログラムがオープンキャンパス当日に開催されるというケースも多いので、この点も事前に確認しておいた方が良いでしょう。

昨今では保護者と一緒にオープンキャンパスへ参加する高校生も少なくありません。そこで今回は保護者の皆様向けに、「進学後に後悔しない大学選び」という観点でオープンキャンパスの活用法をお伝えします。

「大学を見る目」を養うために、オープンキャンパスを活用しよう

保護者の方も、昨今のオープンキャンパスに参加されたら「イマドキの大学はこんなに綺麗なのか!」と驚かれるはず。各大学とも古い校舎を建て替え、図書館や学生食堂もリニューアルするなど、キャンパスを美しく整備しています。でも「あら素敵な雰囲気、良いかも!」と判断するのはちょっと待ってください。何事も比較が大事。いくつかの大学と比べてみて初めて、その大学ならではの特徴が見えてきます。

比較する際は「学びの中味に関すること」に注目することが大事です。そんなの当たり前だと思うかも知れませんが、高校生は繁華街に近いかどうかといった立地やキャンパスの雰囲気、学食の豪華さなど「大学生ライフが楽しそうかどうか」という要素に引っ張られる傾向があります。でも、授業内容の充実度と学食の充実度は関係ありません。保護者は冷静な目で大学をチェックしましょう。

教員の講義をただ聴くだけではなく、議論やプレゼンテーションなどを通じて主体的に学び、様々なスキルを鍛える「アクティブラーニング」と言われる教育スタイルが広がっています。たとえばこのアクティブラーニングに、大学として力を入れているかどうか。「授業の○%でアクティブラーニングが採り入れられています」といったデータや、具体的な授業の様子などを紹介する情報が用意されていることもありますし、少人数でのグループワークに対応した教室や、グループワークのための「ラーニングコモン」と呼ばれるスペースが整備されているといったキャンパスの環境から気づくこともあります。

リサーチする大学の選び方にもぜひ一工夫を。「夏休みに最低○校を調べてきなさい」と生徒へ課す高校は多いのですが、その際、都心の繁華街に近い大規模総合大学ばかりを選ぶ高校生が少なくありません。MARCHや日東駒専など、受験業界がつくったフレーズの影響もありそうです。でも小規模で教員との距離が近い大学や、単科大学の良さもあります。対照的な環境の大学を意識的に選んでみると「自分には小規模な大学が合うかも」などと、大学選びの精度が上がります。

そして質問・相談コーナーは必ず活用しましょう。全体説明の場ではどうしても大多数の方が気にする点や、大学としてPRしたい内容が話の中心になります。でも他の参加者が気にする点と、あなたが気にする点が同じとは限りません。留年率や中退率など、聞きにくいデータも具体的に聞いて大丈夫。オンラインのオープンキャンパスでも、学生や教職員と個別に話せる場を設けている場合が多いです。

最後に、保護者がやってしまいがちな失敗について。当たり前ですが、学ぶのは保護者ではなく本人です。卒業後の人生も本人のものです。「この資格を取れば就職に強いらしい!」「○○大学の方が知名度も高いし安心」など、保護者として学部選び、大学選びに意見したいこともあるでしょう。でも保護者が勧める進学先が本人に合っているとは限りません。たとえ世間的に評価の高い大学でも、本人が学習意欲を持てないのなら、期待する結果には繋がらないものです。昨今の高校生は保護者の意見を気にしがちですので、自分で調べ、自分で選ぶためのサポート役をぜひ心がけてみてください。

(ご参考)産業能率大学SNS公式アカウント・オープンキャンパス情報

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産業能率大学では、オープンキャンパスを7月~9月まで、自由が丘と湘南の両キャンパスで毎月開催(来校型・オンライン型)しています。本学の学びの特色やキャンパスライフを学生が紹介するプログラムが充実している他、保護者ガイダンス、入試ガイダンスも行っています。また、グループワーク体験やキャンパスツアー、模擬授業など、体験型のプログラムもご用意しています。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/