付加価値を提供できる
人財を育てていかないと
いけない

産業能率大学 経営学部 教授

松尾尚× 谷口元

  • 授業では、来てよかったと思えるライブ感を大事にしたい!
  • 新しいものを生み出すには、想像力と発想力が必要!
  • 産能大はたくさんのチャンスを用意している!

授業では、来てよかったと思えるライブ感を大事にしたい!

授業もオンラインで受けられるようになっていく今の時代には、学生同士や教員と学生のコミュニケーションを大事にしたリアルな学びを提供。

2025年の世の中はどのようになっていると想像しますか?

松尾:より効率化した社会になり、AIによって機械による自動化で無駄がなくなると思います。そんな中で「人間はどう生きるのか?」が課題になっていくでしょう。世界的に有名なクリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏が示唆するように、人の営みの段階を1から10までの工程で表せるとすると、AIが人間よりも優れているのは今あるものを最適化する1〜9の部分。0から1を生み出すことや、9を最後10にする部分については人間の方が得意です。0から1を生み出すクリエイティブな企画や何かを0から創造する部分や、9を10にする人との接点、感動や喜びを生み出すところは、人間の仕事として残る部分だと思います。そのように人間の仕事は二極化していくかもしれません。

谷口:文化的なこと、例えば私が携わってきた音楽の業界についても、2025年にどうなっているかは誰もわからないと思います。例えば2011年にLINEが出てきて今では多くの人が無いと困るくらいにコミュニケーションの手段は変わりました。しかし6年前にそれを予測できた人はいなかったように、2025年にどんな新しいものが生まれてどう変化しているかは正直わかりません。

その反面、人間の感性の部分、音楽や絵画などの文化・芸術と出会うことで心の琴線に触れるようなところは変わらないでしょう。その部分はAIにはわからない、AIが取って代われないところだと思います。琴線に触れるような仕事の仕方ができれば、その部分では社会は大きく変わらないとも言えると思います。

今現在、授業で大切にしていることはなんですか?

谷口:経営学は、どう考え、どう行動するか、組織をどう動かすか、どうすれば人を動かせるのか、を考える学問だと思います。究極をいえば、世の中を動かすには、人から信頼され愛されることが大切なんです。そのために学問の前にある、嘘をつかない、モラルを守る、信頼を得ることなどの基本的なことを、経営学の観点から人間行動に落とし込んで教えるように心がけています。

自分の専門のエンタメの分野、音楽業界ではCDの売上が落ち込むなど以前のメインプレイヤーだったレコード会社が斜陽産業とも、とらえられるような状態になっています。そのような事実を知った上で、会社として悪い状況になったときに、何がいけないのかを考えるマインドを持つことが重要です。社長として、部長としてなど、それぞれの役職の立場で会社や社会をどう考えるべきかをイメージできるようになってほしいと思っています。

松尾:大学にはアカデミックな部分として、経営学の理論など決して変わらない普遍的な要素があります。ただ理論だけを学んで分かったつもりになるのはダメで、理論と演習が補完的に結びつかないといけません。演習できちんと実践することによって、学生たちの成長にもつなげることができます。

授業で特に大事にしているのは、ライブ感です。経営学での主語は、企業や人です。それぞれの業界は常に変化しますので、旬な企業やビジネスモデルを取り上げる必要があります。また温故知新で過去の遺産から学ぶべきところもあります。今後もっとオンラインで受けられる授業なども増えるでしょう。ネットショッピングの利用が増えているように、大学も授業に通うことが当たり前でなくなるかもしれません。実際に大学まで来てもらうには臨場感やライブ感が大事です。学生同士や教員と学生とのリアルな交流がある授業、楽しいと思ってもらえる、来て良かったと思える付加価値のある授業をしていかなくてはと思っています。

新しいものを生み出すには想像力と発想力が必要!

今までにないものを世に出すには想像力や発想力、それを人にきちんと表現し伝える力が必要。

教員として未来に向けてどんな人財を育てたいと考えていますか?

谷口:先ほどの松尾先生のお話にあったように1〜9の仕事はAIがするようになったとしたら、そのほかの置き換えられない付加価値を提供できる仕事をできるような人財を育てていかないといけないと思います

松尾:骨格のしっかりとした人財ですね。骨格となる芯がないと戦えませんから。

話を聞いていると今の学生には「オンとオフをはっきり区別する」というタイプが多いのですが、私はあえて誤解を恐れずに言えば、「常にオン」でいられる人財を育てたいと考えています。私自身も常にオンで、寝てる時以外はいつも授業や学生、大学のことを考えていますし、そうでなければいい授業はできないと思っています。常に一生懸命で、いつもチャレンジしている人でなければいい結果は出せないし、周りの人も助けたいと思わないでしょう。やはり成功する人というのは人の10倍努力して、認められる人だと思いますし、努力する人が報われる社会であってほしいと思います。

今の学生は器用なので、課題のレポートも悩むことなくすぐに書き始めて、出来てしまう人が多いのですが、実は書く前に頭の中で悩んだり考えたりしながら、しっかりとした設計図を描くことが大事なんです。いつもオンの状態で考えるクセがつけば、社会人になってからも企画書や報告書を書く際にも役に立つと思います。

新しい視点で、新しいビジネスを作り出すには何が必要だと思いますか?

松尾:論理的に語れることですね。仮説や思いつきを、きちんと表現できること、そして周りを説得できること。そして、論理的な垂直的思考に加えて、常識にとらわれない水平的思考をうまく組み合わせられるといいですね。また極端な行動パターンや極端なこだわりを持つ人(エクストリームな人)を受け入れる力、面白いアイデアや今までにないものを受け入れる力も必要です。例えば、レコードに代わってCDが台頭してきたときに、セオドアくん(グランド・ウィザード・セオドア)がレコードでスクラッチを始めて、それを受け入れて取り入れたのがDJの人たちでした。一人の変人がアナログレコードの市場を救ったことになります。

谷口:必要なのは、想像力と発想力。今はないものを作ることで、「どう変わるか?」「みんなが喜ぶか?」を想像する力が必要です。例えばT型フォードをつくったヘンリー・フォードやiPhoneをつくったスティーブ・ジョブスは、自家用車やスマートフォンという概念がないときに、新しいものを生み出しました。そのためには、世の中が変わるイメージを想像し、周りの人を「便利だから試さない?」と巻き込んでいく力、世の中に出していける力が大事です。

想像力は訓練でも身につきます。例えば授業では、仮定のビジネスプランを作成し、ある商品やサービスをいくらで、何人で働いて作ったときに、いくつ売れば採算が取れるか、それが現実的であるかを想像していきます。妄想に近いものでもいいので、想像する訓練することで、いろんなことに対応できる柔らかい脳をつくれます。私の最初の授業でよく話すのですが、高校まで生徒(既知の事実を学ぶ人)と呼ばれていたのが、大学では学生と呼ばれるようになるのは、学生には「未知の仮説を証明する人」という意味があるからです。インターネットで検索できるような既に知られているものを学ぶだけでなく、授業で見聞きしたことについて、どう考えたのか自分の力で考察し、未知の仮説を立てて証明することが大事なんです。

松尾:新しいことをするには、自分のアイデアや意見を否定されることにも慣れないといけません。なぜ自分の意見が受け入れられなかったのか、問題の本質をつかむことで、次の成長に繋がります。

谷口:私の持っている授業でもイエス・ノーで答えられる簡単なことから始めて、発言力を身につけ、自分の主張を出すという訓練をしています。産能大ではグループワークやプレゼンテーションも多いので、その発言力も育っていきます。

松尾:そうですね。学びは内化と外化のループで成り立っているので、インプットだけでなくアウトプットすることも大事ですね。

産能大はたくさんのチャンスを用意している!

産能大では、多彩なバックグラウンドを持つ教員がチャンスを提供してくれるので、そのチャンスをつかんで生かそう。

これから受験を考える高校生や保護者に向けて、産能大の魅力を教えてください。

松尾:産能大では、教員から様々なチャンスが提供されていますし、チャレンジできる環境もあります。すべての学生に機会は均等に与えられますが、結果はある意味不平等かもしれません。与えられたチャンスをものにするかどうかは、その学生が4年間をどう過ごすか次第。幅広いキャリアを持つ教員がいますので、自分が変わりたい、知識の幅を広げたいという学生には、とても合っている大学だと思います

谷口:私自身はアメリカの大学出身なので、ほかの日本の大学と産能大の比較があまりできないのですが、大学の文化や雰囲気を表すもののひとつに、ホームページで使われている写真があると思います。私が入職する時(2015年)に調べてみたら、産能大では男女4、5人の学生がパソコンを見ながらホールで談笑している写真が使われていました。ほかの大学では教室で先生がホワイトボードに書きながら授業をしている写真だったり、学園祭の際にステージで踊っている写真の大学もありました。それぞれが大学の文化を表しているのだと思いますが、産能大の写真は自主的に学生が集って問題解決を楽しんでいる姿を表しているのだと思います

松尾:私が入職(2005年)して以来の産能大のパンプレットを見返したときに感じたのは、写真に写っている学生のほとんどの顔と名前をエピソードとともに覚えているということです。研究室のドアは基本的にオープンにしているので、アポなしに訪れてくる学生も多くいます。2018年度には半期だけで250人の学生が訪ねてきましたが、それぞれの学生と思い出があります。教員と学生の距離が近いのも産能大の魅力のひとつだと思いますし、それぞれの教員が多彩な職歴や専門分野を持っているので、例えば「音楽業界のことなら谷口先生に聞いてみたら?」とか、自分より適任の先生がいれば紹介することもあります。

谷口:逆も然りで、私も松尾先生を紹介することがあります。授業と関係なくエンタメに興味がある学生のためのグループLINEをつくって学生に情報を流したりもしていますし、私も研究室のドアはオープンにしています。産能大は、ずっと先生をやっている教員、松尾先生のように民間人から転身された教員、私のようにビジネスに片足を残したままの教員と、いろんな教員が揃っているので、社会に通用する学生を育てる環境を提供できるのだと思います

※所属・役職は2019年2月取材時のものです。  

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