渋谷というまちを、
人々が能動的に何かを
したいと思える場所にしたい

東急株式会社
渋谷開発事業部 開発計画グループ
まちづくり推進担当 課長
(現 沿線生活創造事業部
エンターテインメント戦略グループ
企画担当 課長)

寄本 健

  • 2025年頃には「時間をどう使うか」が消費の軸になる?
  • 渋谷にはまだまだポテンシャルがある?
  • 自分は「運がいい」と思える人になろう!

2025年頃には「時間をどう使うか」が消費の軸になる?

これからモノ消費とコト消費のボーダレス化が進んでいくと、
「時間をどう使うか」が消費の軸になる。

東急株式会社 まちづくり推進担当の5年後、10年後の成長戦略を教えてください。

私が所属しているまちづくり推進担当では、主に渋谷のまちづくり、まちの広報活動を行なっています。2019年11⽉に渋⾕スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)と渋⾕フクラスが開業し、渋谷の再開発プロジェクトがひと段落します。5年後を考えると、2023年度には渋谷駅桜丘口地区が竣工予定、2027年度には渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)も開業し、駅周辺の整備が完了する予定です。10年後には、東京オリンピックも大阪万博も終わり、人々の消費動向も変化しているはずなので、その時代の生活スタイル、渋谷で働く人や遊ぶ人、生活する人のニーズに合った取り組みをしていきたいですね。

2025年には、どんなコンセプトの商品やサービスが人気だと考えていますか?

今はモノ消費やコト消費などと言われていますが、これからは今まで以上にモノとコトのボーダレス化が進んで、商品やサービスというよりも「時間をどう使うか?」ということが消費の軸になるのではないかなと思います

渋谷のまちづくりとしては、「安心・安全、歩きやすい、ゴミが落ちていない」などの具体的な課題もありますが、理想の姿としては「世界中の人が何度も渋谷に来たいと思うようなまち」や、「渋谷で何かをやってみたいと思うようなまち」を目指しています。今もたくさんの外国人観光客の方が渋谷に来てくれていますが、今は「御朱印帳」に御朱印を集めにくるかのように、とりあえず一度は渋谷に来てみたいという方が多いですよね。それはそれで素晴らしいことですが、そこから一歩進んで何度も来たくなる、長く滞在したい、そんなまちを創りたいんです。そのためには、渋谷にしかないものや渋谷でしか体験できないことを提供して、世界中の人に「渋谷でエンタテインメントを提供したい」とか「渋谷でビジネスをしたい」とか、能動的に何かをしたいと思える魅力的なまちにすることが必要だと思っています

渋谷にはまだまだポテンシャルがある?

渋谷は、フリーWi-Fiやデジタルサイネージ(電子看板)を使って、
今までにないシステムにチャレンジできる。

マーケティングの方法やデータの生かし方は、今後もっと変わっていくと考えていますか?

技術は日々進歩していますし、データを活用したい人やデータに価値があると思う人は今後も増えていくでしょう。ただ日本人は真面目というか、ビックデータに関してデータを提供する側も、使う側も少し構えてしまっているような感じがします。もっとオープンで柔軟に、良い方向にデータを活用できる仕組みを作って、悪いことは技術でシャットアウトするような仕組みができるといいですね。渋谷にはフリーWi-Fiや駅前の交差点付近にある複数の大きなビジョンなどデジタルサイネージのような、環境も整っていますので、例えば渋谷に来てログインするとその人の特性に合ったサービスや面白い体験を提供できる仕掛けや、顔認証システムを使うことによって結果として犯罪抑制につながる仕組みなど、渋谷をテストケースとして、新しいシステムにチャレンジできると思います。また、渋谷はそのようなポテンシャルをまだまだ持っていると思います

新しい視点で、新しいビジネスを作り出すには何が必要だと思いますか?

今までの開発というのは、鉄道・小売・不動産など事業ごとに分かれていましたが、これからは事業に関わらずいかに生活者・消費者の目線で考える仕組みやチームを持てるかが重要になるでしょう。例えば「オフィスを提供する」というビジネスを考えた場合、単にオフィスを貸すということだけではなく、人がどんな形で働く場所を提供すればいいのかその根本から考える、といったように、人それぞれの価値観が多様化していく中で、どのようにお客様の課題を解決してサービスとして形にするかを考えていくことが、今以上に必要になると思いますね。

寄本さんがまちづくりや、これまでの仕事を進めてきた中で、必要なことや役に立っていることはどんなことですか。

仕事を推進していくのに必要なのは「何にでも関心を持つ力」「必要な場面での瞬発力」「継続するための持続力」の3つの力と、その場に応じてこれらのバランスを取ることだと思いますね。私は大学での専攻は機械工学でしたが、ホテル事業や東急線沿線のマーケティング、学童保育事業、鉄道事業、文化事業などグループ内で多くの事業を経験してきました。いろんな事業を実務として経験できたことは、今のまちづくりの仕事にも活きています。

まちづくりをしていくためには、自分たちの部署だけでなく、東急グループ各社、行政の方、専門家の方、渋谷で暮らす人や働く人など、多くの人が関わってきます。そのような中でそれぞれの人の考えや思いを共有しているので、時間がかかっても皆が良いと思えるようなまちをつくっていかないといけません。いろんな業種や価値観の人と話をするときに、打ち解ける鍵のひとつになるのが、好きな音楽やアートなどの文化的な側面です。人と人、人と会社、人と地域をつないでいく際に、文化・芸術に関する価値観や体験が共通の軸となることも多いんですよ。

自分は「運がいい」と思える人になろう!

何かが起きたときに「運がいい」と思えるようになるには、
その人にチャレンジできる気持ちがあるかどうかが大事。

先ほどお話いただいた「瞬発力」と「持続力」ですが、若いうちにより必要なのはどちらでしょうか? また仕事上のコミュニケーションで「空気を読む」ことは必要だと思いますか?

若いときは、まず「瞬発力」があればいいと思いますね。「持続力」については若いうちは特に意識していなくても備わっている方が多いので大丈夫です。

空気を読むことが必要かどうかは、その仕事で求められている結果を出すために何が最善かによって答えは変わってきます。仕事でいちばん求められることは「結果を出すこと」です。そのために、空気を読まずにチャレンジするのか、空気を読んできちんとプロセスを踏んで進めていくのか、それぞれの場面での最善を選ぶ必要があると思いますね。ちなみに私は、コミュニケーションする際に「配慮は必要だけれど、遠慮はいらない」と周りによく話しています。

2025年に活躍する人材は、どんなパーソナリティを持った人だと考えていますか?

私個人としては、自分で仕事を作り出して、それに向けてチャレンジできる人、そしてその意識を持続できる人と一緒に仕事をしたいと思います。そのためには与えられた環境を言い訳にせず、自分は運がいいと思えるか、ひいては自分を運がいい状態にできるかが大事ですね。同じことが起きたとしても、それを自分にとって運がいい状態にできるかどうかは、その人にチャレンジできる気持ちがあるかないかで変わってきます。これから働き方改革関連法が次々と施行されて、働き方が変化していく中で、自分の仕事を楽しめるか、自分の働き方を見つけていけるかどうかがより求められてくるのではないでしょうか。

※所属・役職は2020年3月時点のものです。

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