第16回キャリア教育推進フォーラム(自由が丘開催)講座概要

<プログラム>

【セッション1】

特別講演 「AI時代、これから必要な学びと失敗について」
VUCA時代と言われ、先行きの不透明な社会になっている。事象の正解が一つとは限らず、また「この学校・会社に入っていれば大丈夫」といった明確な地図も存在しない。教育領域では徐々にAIが導入され、最近ではChatGPTなど生成AIの活用について議論が起きている。これから必要な能力は情報処理力とともに、一見無駄、失敗が多いと思われる探究型学習で得られる「やり切る力」や「協働力」等である。そのような中で重要なのは「効果的な失敗」である。本講演では、失敗とは何か、失敗情報の特徴や失敗から学ぶ方法、そして文科省が2023年度から5ヵ年注力していくと発表したアントレプレナーシップ教育(起業家精神教育)と失敗との関係について情報を共有する。参加いただく方々が「失敗」について考える機会となれば幸いである。
特別講演 「半径5mからはじまる世界」 
自分が生活する身近な場所に、自分だけのキャリアや探究のきっかけとなる対象が存在する。変化が激しく、選択の機会や範囲がより増えていくと思われる社会だからこそ、大切にしたい観点をお話させていただきます。

【セッション2】※1時限・2時限より1講座ずつ選択

「授業研究会」1時限目

A ICT活用(化学) 実験・観察を「自分ごと」に 〜クロマキー合成で映像を作ろう〜
理科の授業では、実験・観察が時折行われます。生徒にとっては座学よりも楽しい時間が過ごせるし、先生から見ても生徒が主体的・対話的に学んでいるような錯覚に陥りがちです。しかし、生徒たちのようすを観察していると、実際には実験の目的をきちんと理解せずに操作だけを進めていたり、実験手順を確認しているだけの会話だったり、ということも散見されます。今回は実験結果についての説明映像を作成する実践について、ご参加の皆さんと一緒に考えてみたいと思っています。
B 日本史 「考えて理解する」授業デザインのための「問い」を考える
昨年度の<歴史総合>に引き続き、「探究科目」も実施されました。新学習指導要領では「指導と評価の一体化」を重視した授業、大学共通テストでは思考力や資料を読み取る力が重視されています。これらの要望に応えるためには、やはり「問い」をどう設定するのか、生徒がどう「問い」をもつのかがキーポイントだと思います。ここで改めて歴史の授業における「問い」とは何かを問いてみませんか?提案授業を通して参加者の皆さんとこれからの歴史の授業デザインについて語り合いましょう。
C 国語 「国語好き生徒」が増える対話型授業 主体的な思考は「楽しい」から始まる
授業を含め、学校・クラスでの「場づくり」の重要性が言われるようになって随分たちました。 さて、私たち一般的な教員にとって、授業は一回限りではなく年間を通してであることが多く、また時には3年、6年という長期的な視点での場づくりが可能(そして必要)であったりします。  今回は、記述問題の採点を題材に、対話型授業を順調に行える「下地」づくりをテーマとした模擬授業を行います。対話の練習を繰り返すことで、生徒たちが楽しみながら主体的にテキストに向かう力と態度を養成することを目標としています。
D 数学 学びを調整する力を考える
昨年夏に公表された『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』では、「主体的に取り組む態度」の評価のイメージとして①粘り強く学習に取り組もうとする側面と②自らの学習を調整しようとする側面の2つの側面から評価するイメージが掲載されました。この講座では、②自らの学習を調整しようとする態度に焦点を当て、これを授業内でどのように評価していくかということについて、体験もしながら一緒に考えていきたいと思っています。
E 探究による自己の変化と成長~高校在学中の探究活動のプロセスと成果~
高校在学中に取り組んだ探究活動を振り返り、当時の先生方の支援や自身の探究プロセスから、活気のある探究指導を実現するための観点を考えます。 学習者に問いを立てさせる際の指導や、探究全体の評価について、学習者と教授者の視点の両方から複眼的に考えられればと思います。

「授業研究会」2時限目

A 生物 看図アプローチで生物を学ぶ~写真を利用した問いづくり実践~
ジェネレーティブAIが話題となる中、問いを作るスキルの大切さが鮮明になってきたように感じています。質の高い問いの作成とその活用は、生徒の主体的な学習を促す授業デザインを考えていく上でも重要なテーマになっています。本講座では、前半は写真を利用した問いづくり、看図アプローチを参加者同士で進めいきます。後半の振り返りでは、問いづくりで大切になる要素について考えるとともに、高校生物における学習の目的や方法、評価についても改めて考えてみたいと思います。
B 公共 公共の授業における探究活動をともに考えましょう
新学習指導要領では幸福・正義・公正に着目しながら課題の追究と解決する活動をとおして、多面的・多角的に考察して表現することが求められています。 今回の授業では、ベンサムが唱える「最大多数の最大幸福」的な考え方から北海道内観光地を一例として公共的な空間を形成するための考え方を学ぶ授業を実施します。昨年度より実施されている新しい科目なので、皆様も日々の授業で試行錯誤をつづけているものと思います。それは私も同じですので、この講座をとおして夏休み明けの授業を共創する時間としましょう。
C ICT活用(歴史総合) ICTを活用して生徒の学びと教員の時間を引き出す
〜歴史総合で行う指導と評価のかんたん実践
私が行っている歴史総合の授業では「単元の課題」に対して諸資料の分析や問いを解決する活動を通じて自分なりの解を考えていく授業を実施しています。生徒はGoogle Workspace for educationのスプレッドシートによる授業ツールを用いて活動を進めています。今回は生徒が実際に使っているツールと教員用の評価ツールを紹介しながら、AL型授業、教師が行う個に応じた指導や評価についての実践をご紹介します。評価の妥当性などまだまだ課題は多いですが、ICT活用の一助になれば幸いです。
D 数学 単元や教材を学ぶ本質を考える問いとは?
「学習評価」を行うには「学習目標」の設定が不可欠です。昨年度から始まった新たな観点別評価を機に、改めて「なぜその単元や教材を学ぶのか」について考えてみたいと思います。数学世界での系統的な意義だけでなく、その単元・教材の学習・思考過程から掴める本質的な意義を言語化し、他分野や実社会での活用や有用性について一緒に考えていければと思います。参加者の多様な意見や考え、知識や経験の共有で新たな気づきや学びを得られる時間を共に創っていきましょう。
E 探究によるキャリア開発と学びの進化~探究活動以降につながる学びとキャリア~
探究活動がその後の大学・大学院での研究活動や、現在のキャリア形成にもたらした影響について考え、学習者の未来へのつながりを考えることで、探究指導における学習者の意欲や納得感を引き出す素材としていただける観点を提示できればと思います。

【セッション3】

特別講演 「学習評価の本質と観点別評価の生かし方~探究的な学びの充実へ~」
本講座では、評価とは何かから説き起こしながら、煩雑で多忙化を進めるのではなく、シンプルかつ教師の指導改善や生徒の学習改善につながる評価のあり方について提起します。特に、教科における観点別評価のあり方について、パフォーマンス評価を生かす「学びの舞台」に向けたヤマ場づくりという単元設計の視点を示します。そして、主体性のタキソノミーをふまえながら、総合的な探究の時間を含めた探究的な学びの価値とそこで評価すべきものについて考えます。