bjリーグの普及に向けた取り組み
ー東京アパッチと産業能率大学のコラボレーション-

調査レポート
bjリーグの普及に向けた取り組みー東京アパッチと産業能率大学のコラボレーション-
1.東京アパッチと産業能率大学のコラボレーション
07- 08 シーズンから、b j リーグ東京バスケットボール・プロモーション(以下東京アパッチ)と産業能率大学とのコラボレーションが始まった。このコラボレーションの目的は、東京アパッチと産業能率大学が協力し、bj リーグの普及・発展に資するスポーツマネジメントの研究を行うとともに、それに伴う様々な取り組みを産学協同で行うことにある。08 – 09 シーズンも共同での取り組みは継続して行われている。プロバスケットボールの試合は、試合のスピード感、迫力、熱気ある会場の雰囲気、ゲームの面白さは他のスポーツと比べても遜色のないものである。しかしながら、プロ野球やJ リーグ、相撲やバレーボールさらにはK-1 などの格闘技と比べると観客を引き付ける力という点ではまだまだ弱いと言わざるを得ない。観客を集め、その入場料収入による運営を基軸とするプロスポーツ・ビジネスという観点から考えると、競争環境は厳しい。さらに、近年の不況のあおりを受けて、家計に占めるスポーツ観戦やイベント観戦などにかける金額は低下傾向にある。そうした厳しい状況下にあって、プロバスケットが人気あるプロスポーツとして定着していくためには、適切なマーケティング戦略の展開が不可欠である。ではb j リーグの魅力を向上させ、認知率を高め、継続的に観客に集まってもらえるようなしくみをいかに構築すべきか。すぐに解決できる課題ではないが、産業能率大学と東京アパッチはその目標に向けての一歩を踏み出したところである。こうした背景をふまえ、本稿ではコラボレーションによって実施されたこれまでの取り組みについて紹介するとともに今後の展開について述べたい。
2.bj リーグの沿革
まず、今回の研究対象であるb j(basketball japan)リーグ誕生の経緯及び沿革について述べておこう。b j リーグは、今年で4 シーズン目を迎える日本で初のバスケットボールのプロリーグである。2005 年11 月に全6 チームでスタートし、2 年後の07- 08 シーズンに参加チームが10 チームに拡大してから、関東、関西の2 つのカンファレンスに分かれたリーグ戦方式が採用されている。さらに今08 – 09 シーズンからは新たに2 チームが加わり、計12 チームで運営されている。来年度以降も新規参入が予定されており、b j リーグの規模は年々拡大している。シーズンは10 月からスタートし、5 月に関東、関西のチャンピオンチームがファイナルを戦い、チャンピオンチームが決定する。
3.顧客調査活動
今回のコラボレーションにあたり、まず取り組んだのは観客の調査である。当初から来てくれている熱心な観客を中心にアンケート調査を実施し、顧客属性はもちろんのこと、フードやドリンク、グッズに対する意見や、ゲーム全般にわたる不平不満などについてのデータを収集した。調査の目的は、観客の属性を知ることに加え、コアとなるファンの満足度を向上させ、良好な関係性を構築することにより、プロバスケットの楽しさを伝えてくれる伝道師を育成したいという目的があった。このアンケート調査は07- 08 シーズンから、2 シーズンにわたり東京アパッチ主催ゲームの約80% の試合で実施された。b j リーグにおいてこうしたアンケート調査はこれまでほとんど行われておらず、その意味では基礎データとして貴重な資料を収集することができた。またこの調査の副産物として、08 – 09 シーズンからは産業能率大学の学生が、東京アパッチのインターンシップスタッフとして参加している。彼らはアンケート調査だけでなく、試合当日は朝から夜遅くまで、会場の設営や観客誘導、物品販売などスポーツビジネスの現場を、身をもって体験している。こうした現場でスポーツイベントに携わることのできる機会は、彼らにとって大きな刺激となった。
4.SANNO スペシャルゲームの開催
本学と東京アパッチとの交流も盛んに行われた。その一環として行われたのが、2008 年11 月20 日に代々木第二体育館で行われた『東京アパッチ産業能率大学スペシャルゲーム』である。試合に先立って、東京アパッチの選手が本学の自由が丘キャンパスに来校しプレイベントが行われ、学園祭にダンスチームが来校するなどといったイベントが催されていたこともあり、当日は本学関係者を中心に体育館が満員となる盛況ぶりであった。さらに、試合も接戦の末、残り0.5 秒で東京アパッチが逆転するというスリリングな展開となり、多くの学生が初めて見たプロのバスケットボールゲームを楽しんだ。
5.今後の展開について
今回のコラボレーションが始まって、まだ実質的には1 年と少ししか経っていないが、少しずつ効果はあがっていると思われる。プロバスケットボールを取り巻く環境については、先ごろ国際バスケット連盟の要請を受けて、日本リーグとb j リーグが2011 年を目標に統合されるという報道もあり、大きな変化が予想される。とはいえリーグのかたちが変わろうと、観客に楽しんでもらえる場をつくるという目的に変わりはない。bj リーグは大きな可能性を秘めている。スポーツマネジメント研究所では、東京アパッチとのコラボレーションを通じて、アリーナを継続的に満員にするビジネスモデルの探求に今後も取り組んでいきたいと考えている。