サッカー日本代表に世代交代は起きるか?

研究員コラム
サッカー日本代表に世代交代は起きるか?
2017年8月31日。埼玉スタジアム2002において、サッカー日本代表が来年2018年のロシアW杯出場の切符を手にした。2-0でオーストラリアに快勝したこの試合後、ほとんどのマスコミが鮮烈なゴールを決めたFW浅野拓磨選手(22)とMF井手口陽介選手(21)、若き2人の活躍を大々的に報じた。特にこの日は、これまで中心選手としてチームを支えてきた本田圭佑選手(31)と香川真司選手(28)に出場機会がなかったこともあり、「世代交代」論がにわかに過熱している。

筆者はテレビ朝日の中継を通して観戦したが、興奮冷めやらぬままに後続の『報道ステーション』がスタートした。その冒頭、キャスターを務める富川悠太アナウンサーが、持ち前の屈託なさで「井手口選手を知りませんでした」と漏らし、解説者の澤登正朗氏にたしなめられるシーンがあった。サポーターからすれば失言とも取られる富川アナの発言だが、一般視聴者の声を代弁しているようにも感じられた。多くの国民にとって、サッカー観戦の機会はA代表の重要な試合だけにほぼ限られる。したがってどんなにポテンシャルが高い選手であっても、その舞台で大きな活躍を示さない限り、その名が一般国民に浸透することもないことを、ここ数年の調査研究結果が物語っているからである。

産業能率大学スポーツマネジメント研究所では、「サッカー日本代表選抜総選挙」と銘打ち、全国の1万人を対象にしたWebアンケートを実施している。2013年に第1回、2015年に第2回調査を実施し、以降は毎年同様の調査を行っている※。調査の実施期間はいずれも4月末から5月初旬の、いわゆる「ゴールデンウィーク期間中」である。なお、各年度の調査対象者1万人は、総務省最新人口統計における都道府県・性別・世代(10年刻み)の比率に準拠した、20歳から69歳までの国内在住者である。
※2014年は別途「ブラジルW杯直前調査」を実施しているため、興味のある方は、そちらも合わせて参照いただきたい。
調査内容は、現役でプレーをしている国内外の主要な日本人プロサッカー選手をリストアップし、その中から「もしあなたが日本代表監督だったら、どの選手を選びますか?」という質問を投げかけ、W杯同様に最大で23人まで選ぶことができるというものだ。1人以上選手を選んだ場合を有効回答とし、有効回答数Nを分母に「支持率」を算出している。初回2013年から最新2017年までの当該調査の支持率TOP10選手の時系列推移をまとめるたものが上の表になる。

この表から明らかなことは、全4回の調査を通じて、主要メンバーに大きな変動が見られないという点である。各選手が高い支持率をキープしているならば問題はないが、ほとんどの選⼿の⽀持率いわゆる期待度が、軒並み低下傾向にあるのが懸念材料だ。2017年の最新調査では、支持率50%を超える圧倒的な中心選手が不在となりつつある傾向も読み取れる。直近のTOP10で最年少の選手は大迫勇也選手(27)であるが、2013年に78.5%の驚異的な支持を集めた香川選手の当時の年齢は24歳、同じく59.5%の長友佑都選手が26歳だったことを考えても、若手の台頭が待たれることは集計結果上も明らかである。

豪州戦でベンチ入りした代表メンバーは、DF三浦弦太選手(22)以外は本調査においても調査対象としている。その中で25歳以下の選手を支持率の高い順に挙げると、最上位はFW久保裕也選手(23)の12位(20.5%)、つづいてMF柴崎岳選手(25)の14位(20.2%)、そのあとはFW浅野拓磨選手(22)の21位(18.0%)、DF昌子源選手(24)の46位(6.1%)、GK中村航輔選手(22)の59位(3.2%)と続く。一躍スターダムにのし上がった感のあるMF井手口陽介選手(21)は、5月時点ではまだ63位(2.7%)であり、FD杉本健勇選手(24)は120位(0.7%)という結果であった。

2017度調査では、「なぜ、その選手を選びたいのですか?」という理由についても尋ねている。TOP5の各選手の自由記述を『ユーザーローカル』(https://textmining.userlocal.jp/)を用いてテキストマイニングした結果が下図になる(青:名詞、赤:動詞、緑:形容詞)。この図から、トップ選手は共通して「香川選手=活躍」「長友選手=運動量」「川島選手=守護神」「岡崎選手=泥臭い」「内田選手=かっこいい」といった国民的イメージを確立していることがわかる。ロシアW杯本戦での大活躍により、その名を我々の脳裏に焼き付けてくれる、新たなスター選手の登場を待ちたい。
2017.09.26 11:00 AM | 投稿者:小野田哲弥