国民体育大会の残したレガシー

研究員コラム
国民体育大会の残したレガシー
先日に和歌山市で開催された学会に参加しました。和歌山県では、1週間後に44年ぶりに国民体育大会(以下国体と略します)が開催されるとあって、市内各所で準備が進められていました。

夜7時を過ぎて、数人で学会会場の裏手の路地を歩き出すと、大きな屋根の架かった建物が暗闇の中に見えてきました。「これは・・・」と思いながら入口らしき場所に近寄ると、「和歌山県営相撲競技場」という看板が目に入ってきました。暗闇の中でしたが屋根が新しく見えましたので、ああこれは国体のために新設された土俵なのだなという思いがとっさに頭に浮かびました。


さらに周りの道を進むと、扉が開いており中から人の声がしましたので、暗闇の中、「もしや・・・」という気持ちもありましたが、恐る恐る競技場へ近づいてみました。すると、暗闇の土俵を取り囲む体格の良い人たちが数人で何か作業をしていました。突如現れた人影に驚いたように見えましたので、「こんばんは。」と挨拶し、「少し見学をさせて下さい。」とお願いすると、この土俵自体は44年前の国体開催時に建設されたもので、以来大切に使われ、最近、国体開催に合わせて屋根が新設されたことや数多くの大会がこの土俵で行われている話、また、和歌山県庁などの強豪チームが存在することも誇らしげに語って下さいました。

近頃、「オリンピックレガシー」という言葉を良く耳にします。これは、オリンピック開催後の未来に残すことを意味する言葉で、経済効果や競技場などの施設の有効活用が良く議論されています。

今回、偶然に出会った相撲場は、まさに国体レガシーであり、レガシーの実現に向けた相撲を愛する和歌山の人たちによって受け継がれた成果であると思いました。そして、東京五輪を契機に更なるスポーツの発展を目指すためには、レガシー実現のためにスポーツを支える気持ちを持った人たちを、もっと増やしていくことが重要であるという認識を強めた出来事でした。
※写真は、2015紀の国わかやま国体HPより転載