私の視点 2024
ゼロからの商品開発で創造力を養う
「地域ブランド創造プロジェクト」
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私の視点 2024 Vol.1
ゼロからの商品開発で創造力を養う
「地域ブランド創造プロジェクト」
実践的な学びに重きを置いている産業能率大学ですが、中でも特色授業はユニークなテーマが学生に人気です。今回は湘南オリーブのブランド化をテーマとして地域貢献に取り組む授業「地域ブランド創造プロジェクト」について、昨年度の履修生が担当教員と対談しました。
1本4,000円!国産オリーブを学生自ら栽培
山口

情報マネジメント学部3年の山口遼です。「地域ブランド創造プロジェクト」は昨年履修して、たくさんの学びがありました。今日は松岡先生に色々聞いていきたいなと。よろしくお願いします!

松岡

担当教員の松岡です。よろしく。
この授業では、湘南オリーブをテーマにマーケティングとブランディング視点で、地域ブランドの認知向上を目的として実践的に学んでもらったね。

山口

実は僕、神奈川県出身ですが、湘南オリーブについては知らなかったです。

松岡

湘南オリーブは、湘南エリアの二宮町、大磯町、小田原市それから平塚市で地域ブランド化を目指して始まったプロジェクトで、SANNOも2022年度から参加しています。

山口

前学期では農業実習とオリーブを使ったメニュー開発が大きな取り組みですよね。

松岡

そうだね。でも、いきなりメニュー開発を始めるわけではありません。ほとんどの学生がオリーブに馴染みがないから、まずはオリーブオイルの試飲や実を食べることからスタートしてもらっています。

山口

僕はお菓子作りが趣味なのでオリーブオイルには馴染みがあったんですけど、1本300ml で4,000〜5,000円するオリーブオイルは初めて試飲しました。味はすごくまろやかで、国産だとこんなに違うのかと驚きましたね。

松岡

普段スーパーで見ている価格帯ではないから、誰にどうやって売っていくのか、そこにもマーケティングのセンスが必要だよね。

山口

体験することでいうと、農業実習もすごく楽しかったです。

松岡

湘南キャンパスの近くにオリーブ農園を借りていて、そこに植えられている30本のオリーブの木を学生一人ひとりに割り当てて、1年間お世話をしてもらっていますね。

山口

一人1本担当するので、責任感が芽生えました。

松岡

オリーブって不思議なんだけど学生に似ているんだよね。手入れしていると伸びたり、伸びなかったり(笑)。結果がすぐ出ないってところも、面白いよね。

山口

そもそも栽培から自分たちでするのは、何か狙いがあるんですか?

松岡

やっぱり農産物は現場を見ないと商品開発のアイデアが出にくいんですよ。自分たちが扱うオリーブについて、どんな手間をかけて生み出されているものなのか、その生産過程から、オリーブの魅力や独自性を理解することで、商品開発のアイデアが出てきやすくなるんだよね。

山口

なるほど。たしかに僕も農業実習で初めてオリーブ農園に行って、栄養分がちゃんと循環するように農地が傾斜面にあったり、オリーブの品質を高めるために手積みで収穫をしていたり。そういう現場に行かなければわからなかったことを知れたことは、商品開発をする上でよい学びでした。

松岡

山口くんは、どうしてこの授業を履修しようと思ったの?

山口

僕の地元の神奈川県開成町では、「弥一芋」という里芋を活用して地域おこしをしているんですが、その活動をきっかけに食や地域おこしに興味を持ったからです。そもそもSANNOに入学した理由が「地域ブランド創造プロジェクト」という授業を知ったからなんです。

松岡

山口くんみたいに食や地域おこしを学びたいと思って履修してくれているとか、地方出身者、実家が観光地域で旅館を営んでいる学生まで、この授業を履修してくれている学生は幅広いよね。

山口

みんな何か目的や興味があって履修している学生は多いと思います。

松岡

この授業を履修する学生は、比較的土仕事とか虫とか平気な学生が多いよね。この間なんてオリーブ畑でアオダイショウを素手で捕まえた学生がいたり(笑)。

山口

それはたくましいです!(笑)

手を動かし、視点を変えるとアイデアが生まれる
山口

ズバリお聞きすると、この授業で僕ら学生に学んでほしいと思っていることはなんですか。

松岡

一番はマーケティングの基礎となる“観察する力”だね。僕らは物事を見ているようで意外とちゃんと見てないことが多くて、みんなの気づかない違いに気づくってことがマーケティングでは結構大事。

山口

なるほど。

松岡

アイデアを考える時にも、オリーブそのものだけじゃなくて土壌を見て、pH値を測って、剪定されていく葉を見て…っていろんな視点から対象物に迫っていくと、新しいアイデアが生まれてくるよね。

山口

確かに大局的な視点で見ることが大切だと感じました。

松岡

いつもと違う場所、今までにない経験をすることで人間の観察力って自然と上がっていくもの。そういう状況の中で、マーケティングのスキルを学ぶと理解促進につながるんだよね。

山口

いろんな視点で考えることで、印象に残っているのは、前学期に取り組んだメニュー開発です。6人1チームになってオリーブの実とオリーブオイルを使ったメニューを開発しました。発表会の当日は買い出しから調理、盛り付けまですべて制限時間内で行ったので緊張感あるプレゼンテーションでした。

プレゼンテーション当日の様子
松岡

プレゼンテーションの審査員には二宮町の副町長やオリーブ農園の経営者、フレンチレストランのオーナーなどそうそうたるメンバーにきていただいて、みなさん、厳しくも優しい目で学生のメニューを審査してくれました。

山口

僕らのチームはそうめんにオリーブの塩漬けを細かくしたものや野菜を盛り付けて、オリーブオイルのジュレと食べてもらうメニューを考案しました。

松岡

そうだったね。

山口

途中までは良かったんですが、最後の部分で行き詰まってしまって、先生から「料理を乗せる容器を変えてみたら」という今までと違う視点のアドバイスをもらいました。

松岡

やっぱり差別化のポイントって商品だけでやろうとするとどうしても限界がある。だから、商品の提供方法にも目を向けて、一体どんな人がこの提供方法ならいいと思ってもらえるかという視点で考えてみると新しいアイデアが見てくるんだよね。

山口

先生のアドバイスを受けて最終的にはレンゲに一口サイズに盛り付けるという前菜のような一品に仕上がりました。審査員の方にも評価していただけて嬉しかったです。

山口さんのチームが提案したメニュー
「知らない」が一番成長につながる
ターゲティングから企画立案、商品開発をリアルに体験
松岡

山口くんはこの授業の中で何が一番大変だった?

山口

うーん、やっぱり知らないことだらけって言うのが一番苦しかったですね(笑)。オリーブそのもののことも無知ですし、一つひとつ探りながらやっていくという感じだったので。

松岡

学生が一番成長するのは、大混乱に陥った時なんだよね(笑)。窮地に立たされると光るアイデアや芽は出てくるものだから。

山口

窮地に立たされるといえば、人に頼るっていうことも一つ学びとしてありました。一度、先生に呼ばれてアドバイスをもらいましたよね…。

松岡

そうそう。「たまにはNOといいなよ」ってね(笑)。

山口

学びたい気持ちが前に出て、つい一人でなんでもやってしまって。

松岡

山口くんはチームでの合意事項をきちんと整理していく、まとめ役としての能力がとても高い。それに性格も穏やかだからつい受け入れすぎちゃうところがあってね。

山口

先生に言われてハッとしました。全部受けいれていくと逆にチームとしてまとまらなくなるし、言いたくないことを言うのもリーダーとして大事なんだなって。

松岡

後学期授業の時には、少しNOと言えるようになって成長を感じたよ。

山口

自分のできる範囲にも限界があるし、そもそも後学期授業の課題であるヘルスケアの商品開発は僕の全く知見のない領域だったので。うまくチームで意見を出し合って、やっていけたらと考えながら取り組みました。

松岡

後学期授業は学生にとっては最大の山場だったかもしれないね。オリーブを活用したヘルスケア商品を社会課題の解決と掛け合わせるというテーマで商品開発してもらったね。

山口

チームメンバーみんなスタートの段階から頭を悩ませました。

松岡

一般的にヘルスケア商品を開発しようとなると、みんな自分の使いたいものになる。でも、そうすると面白くないし工夫も出てこない。そこで一つ考える軸となる社会課題の解決につながるような商品を考えてもらったね。

山口

僕らのチームはマタニティケア領域で、妊婦さんの妊娠線という課題を解決できるようなボディクリームを考えました。

松岡

そうだったね。最終的には、この企画をクラウドファンディングで募って商品完成まで持っていきたいと思ってるんだよね。

山口

それ、実現できたらすごいですよね!
ところで、この授業を履修する学生は、マーケティングやブランディングを学びたいと思っている人も多いと思うんですけど、どんな実践の場があるか教えてください。

松岡

まず、1本4,000円のオリーブオイルを売るってこと自体がいい題材だよね。誰に向けた商品なのか、ターゲディングから考える。4,000円もするオリーブオイルを楽しむ人ってどんな人なんだろう?その人たちの生活は?って考えていくとだんだんリアルな使用シーンが見えてくる。そこから、どのように呼び掛ければ売れるのか、アプローチの仕方を実践的に探っていくのがマーケティングの学びにつながるよね。

山口

ブランディングはどうでしょうか?

松岡

収穫したオリーブの実を塩漬けにした新漬けがあるので、それをパッケージからネーミング、ラベルまで全部学生にイチから作ってもらいます。

山口

僕らの代では収穫時期のタイミングと合わなくて、残念ながら取り組めなかったんですよね。

松岡

そうだったね。実際には工場との交渉や買取先との値段交渉、納品までの進行管理やパッケージデザイン、SNS発信まで全部学生たちがやる。年々取り組めるイベントが増えていっているから、体験的に学ぶ機会はたくさんあると思うよ。

山口

「地域ブランド創造プロジェクト」は今後どんなふうに展開していくんですか。

松岡

湘南オリーブという商品そのものの魅力を伝えていくことは引き続きやりながら、今年の4月に特許庁の「地域団体商標」として「湘南オリーブオイル」がようやく登録されたんだよね。これを記念して今後はオリーブ畑のポテンシャルを活かす体験型のイベントをやっていきたいなと。

山口

体験型イベントですか?

松岡

実際にオリーブ畑で収穫作業を体験しながらオリーブの味を知ってもらう。イベント化がうまくいけばリピーターにもつながるし、湘南オリーブのブランド化にも広がりが出てくると思います。

山口

学生も参加できるんでしょうか?

松岡

もちろん、イベントの企画から参加してもらいたいなって思ってます。2024年度の秋頃には実現できるように今、計画中です。

山口

楽しみです!

授業での学びから自分自身をブランディングしていく
山口

僕自身、授業を通してマーケティングやブランディングについて学べました。それ以上に、未知なことに挑戦する力も身についたなと感じています。

松岡

ゼロからものを売る力って、将来どこにいっても役立つと思うんだよね。

山口

右も左もわからなくても、とにかく一つひとつ取り組んでいくことですよね。

松岡

誰にニーズがあって、一体どんなものなのか、そこがまだはっきりしていないものを売るためには、まずは違いをしっかり学んでいかないといけない。そういうことを順序立ててイチから取り組める力があれば、社会人になった時に仕事でも活きてくるはず。

山口

違いをいかに見つけるかですね。

松岡

実はブランド化って商品とか地域のブランディングだけじゃなくて、自分のブランド化にもつながるんだよ。

山口

自分のブランド化ってどういうことでしょう?

松岡

例えばせっかく良い物持ってるのに、それを上手く伝えられない学生は多い。そこも“違いは何か”を見つけることで自分の売り込み方が見えてくるはず。だから、プロジェクトを通して自分のブランド化もしてねと伝えてます。

山口

それは就職活動にも活きそうですね。

松岡

そうだね。自己PRする時に「僕はみんなの意見をまとめる能力があります」よりも、「どんなにチームが最悪の状態になっても、まとめる力があります」の方がよりブランド化されている。そういう差別化できる前置きをちゃんと作れることも、このプロジェクトの魅力かな。

山口

1年を通して確実に自分の強みが見えてきている気がします。これからのプロジェクトも楽しみです!

松岡

ありがたいことに二宮町や農園の方々、地域の協力がありこのプロジェクトは順調に成長しています。そんな環境の中で、学生が学べる体験をこれからもたくさん用意していきますから、期待していてください。ありがとう!

山口

ありがとうございました。

プロフィール
松岡 俊 TAKASHI MATSUOKA
情報マネジメント学部 教授
「地域ブランド創造プロジェクト」担当教員。地域とのコラボレーションを通じた地域ブランドの創造開発やマネジメントに置いて数々の研究実績を残す。湘南オリーブプロジェクトには、2022年度参画時から携わり、ブランディングとマーケティングの両視点から生産者や地元レストランなど当事者たちと協働しながら学生が学べるプログラムを考案。専門はフードビジネス、ブランディング。
山口 遼 RYO YAMAGUCHI
情報マネジメント学部 現代マネジメント学科3年生
両親が食に携わる仕事をしていたことから、自身のルーツとなる食と地域ブランドに興味を持ち、2021年度産業能率大学へ入学。「地域ブランド創造プロジェクト」では、1年を通して様々な企画に携わり、プロジェクトのまとめ役として活躍。俯瞰的な視点から物事を見るだけでなく、いち早く可視化する能力で地域ブランド創造にも貢献した。将来は食に携わる仕事を目指している。
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