私の視点 2023
人に感動を与える
華やかなエンタメ業界、
音楽業界歴約40年の
教授が語る業界の裏側とは?
私の視点 2023 Vol.4
人に感動を与える華やかなエンタメ業界、
音楽業界歴約40年の教授が語る業界の裏側とは?
就職先として、学生からも人気の高いエンタメ業界。産業能率大学 経営学部には、そんなエンタメ業界を広く、そして深く学べる授業がたくさんあります。今回は、自身も長年音楽業界で働いていた経験を持つ谷口教授へインタビュー。エンタメ業界とはそもそもどんな業界なのか、業界に入るために必要なスキルや能力、そして今学生が学ぶべきことについて、経営学部マーケティング学科3年の勝木麻菜美さんがお話を伺いました。
エンタメ業界で働く魅力
勝木

エンタメ業界とは、ズバリどんな業界ですか。

谷口

一言でいうと、エンタメは人々を楽しませるための産業です。生物の行動原理は基本的に、「自分が生きるため」と「子孫を残すため」の2つのみですが、人間には「楽しむため」という3つ目の原理があります。この「楽しむため」を充実させるためにあるのが、エンタメ業界だと考えています。

勝木

「楽しむため」…!たしかに。エンタメ業界にはどんな仕事があるのでしょうか。

谷口

例えば音楽でいうと、曲を作る、歌う、演奏する、商品化する、そこから派生する著作権などの権利関係の管理をする、宣伝するなど本当にいろいろな職種、業種が存在します。特にSANNOの学生だと商品企画や宣伝などに関わりたいと考えている人が多いよね。

勝木

谷口先生も長年、音楽業界にいらっしゃったそうですが、どんな仕事をされていたんですか。

谷口

著作権や知的財産などの管理や運用をする仕事です。基本的にクリエイターが作ったコンテンツは、勝手に使われたり、改変されたり、ルールに反した扱いをされないように著作権などの権利で守られています。著作権管理というのは、クリエイターに代わり、そうした権利を管理する仕事です。

勝木

なるほど…。作品を作るだけでなく、作品を守るというのも仕事の一つなんですね。そんな谷口先生は、エンタメ業界で働くことにどんな魅力ややりがいを感じていましたか。

谷口

音楽が大好きなので、音楽に近い場所で働けていたことが幸せでしたね。音楽に関わる仕事をすること自体が自分にとってエンタメ業界に対する魅力であり、モチベーションでした。

勝木

好きなことを仕事にしてみていかがでしたか?

谷口

最初の頃は音楽に関われるだけで楽しかったんですが、仕事を続けるうちに音楽がビジネスのネタとしか聞こえてこなくなるんですよね。休日にテレビやラジオから音楽が流れてくると、「いい曲だな」と思う前に、「これはあの会社のあの人が関わっている曲だ」「こういうデビューの仕方か」などばかり考えるようになって。それでも嫌いになったことはないです。どうせ働くなら、自分のやりたいことや好きなこと、あるいはそれに近いことの方がモチベーションにはつながると思いますね。

勝木

たしかに、好きなことを仕事にすると、モチベーションに繋がりますよね!「裏側」から音楽を見られるというのも一つ魅力なのでしょうか。

谷口

この曲が出るために、どういう人達がどういうことを裏側でしていたか、どんなことを仕掛けているのか想像するのは楽しいですね。

今、求められているエンタテインメントとは?
勝木

先生は今、エンタメ業界にはどんな課題があると思いますか。

谷口

音楽業界で言えば、昔はCD何万枚達成などの成功イメージがなくても音楽なら何でも売れる時代でした。でも、今は違う。きちんと成功イメージを描いて施策を打つことが今日のマーケティングです。昔のやり方、考え方にとらわれず、時代の変化とともに考え方も変えていかないといけないのに、そこが未だ足りていないのは業界の課題だと感じますね。

勝木

CDショップでアルバイトをしているんですが、特典目的で買う方もいて、音楽の魅力が届いていないように感じることがあります。

谷口

私達は音楽を売るのではなく、そのまわりの非音楽的なエンタメも併せて売っているんですね。昔はアーティストがステージに立って歌うだけで売れたけど、今はそれだけではお客さんが飽きてしまう。だから、アーティストを一人よりも二人にしたり、歌い手と踊り手を分けたり、ブックレットや解説、アーティスト写真もプラスするなどの付加価値が必要で。確かに、これは音楽を売っているのではないと言われるとその通りなのですが、音楽ありきでの付加価値なんですよ。そこまでの付加価値を含めて、私は音楽エンタテインメントだと思っています。

エンタメ業界で働くのに必要なのは、感動体験とクリエイティビティ
勝木

エンタメ業界に向いているのは、どんな人だと思いますか。

谷口

エンタメ業界は人に感動を与えるのが仕事なので、感動経験があり、エンタメが好きで、それをなぜ好きかを言語化できる人。そして、自分の体験を次世代に伝えることができる人ですね。自分が感動するきっかけとなった接点であるタッチポイントを忘れずにいると、マーケティングにとても役立ちます。

勝木

特定のスキルがないとできないイメージがありましたが、確かに感動体験は大事ですね。

谷口

必要なのはクリエイティビティ(創造性)です。どんな仕事をしていてもクリエイティビティを発揮できるかどうかが大事です。

勝木

クリエイティビティを鍛えるためにはどうしたらいいですか。

谷口

まず自分がやってみることが大事。やってみると自分のクリエイティビティの指標ができるし、自分と比べてクリエイターがどれだけ高いクリエイティビティを持っているかが理解できるので、その素晴らしさが分かるようになります。英語能力を知るなら英語で話す機会を作ると、自分ができないことが分かり、もどかしさを感じますよね。そのもどかしさがクリエイティビティを鍛えることにつながります。

勝木

私はSANNOに入ってクリエイティビティの重要性を学ぶことができましたが、そうした学ぶ場がない場合は、どうやって自分のクリエイティブ力を測ったらいいですか。

谷口

やっぱりまずはやってみることですね。例えば、勝木さんはCDショップでアルバイトしているんですよね。それなら、CDショップの売り方に対して「自分なら、こうするかも」と会社と自分の考え方を比較するとかね。よく見て、人と話して、とにかく自分が体験することが重要かなと思います。実体験ですが、私ももともと音楽をやっていたから、アーティストに会うとなぜその人が素晴らしいかが分かるんですよ。

勝木

エンタメ業界の会社の選考を受けていると、自分もアートをやっているという人事の方に出会うことが多くて、今のお話を聞いて「たしかに!」と思いました。

谷口

学生時代に経験していることが何に役立つか分からなくても、将来のどこかで必ず紐づきます。日本だと大学で何を勉強してきたかよりも、就職後に学ばせることに重きを置く傾向があります。それも間違いではありませんが、これまで学んできたことは、学生の皆さんが社会人になって必要な能力やスキルを知った時に初めてリンクするんですよ。

エンタメ業界のリアルを知り、広く深く知識を習得できる、
SANNOの学び
勝木

SANNOでは、エンタメ業界を志望する在校生に向けて、どのような授業を行っているのでしょうか。

谷口

私が担当している「ミュージック・エンタテインメント」や「アミューズメント・ビジネス」の授業では、理論や実践ベースの学びを通して、エンタメ業界にある職種や業種、著作権やマネジメントなどに関する知識を学ぶことができます。レコード会社のプロデューサーやライブハウスの経営者、ゲームの開発会社やテレビ会社の元代表の方など、業界をよく知る方を特別講師として登壇いただくので、業界のリアルに触れることができます。

勝木

将来に向けてどんなことが必要だと思いますか。

谷口

自分が楽しいと思うことをたくさんやることです。○○業界を目指した学びというものがあるわけではありません。楽しいことを散々やった結果、突き詰めたいことが出てきたらそれを深堀りする。それが軸となる正しい考え方じゃないかと思いますね。
あとは、遊ぶ時間も大事ですよ。遊ぶにしても、なぜ自分はこれを楽しいと思うのか、なぜこの人といると楽しいのかを考えながら遊び、体験を体験だけで終わらせないでください。なぜなら、それが将来の感動、興奮の第一歩となるからです。

勝木

授業では、業界の方から直接お話を伺えて、貴重な機会だと感じています。授業を受けたことがきっかけで、エンタメ業界の方とつながりを持つことができているので、ありがたいなと思います。

谷口

講師の方達も、ビジネスのメインターゲットでもある学生との接点は普段あまりないので、彼らにとっても接点を持てる機会は嬉しいはずです。だから、学生の皆さんには是非この機会を利用して、どんどん交流を持ってもらいたいです。

勝木

谷口先生は授業の他にも、谷口塾を開講されていますよね。谷口塾ではどんなことを学べますか。

谷口

谷口塾は特に音楽業界に興味のある学生がグループLINEでつながり、情報交換をし合うコミュニティです。学生の間では「秘密結社」と呼ばれていますが(笑)。時には音楽業界に就職した卒業生を囲んだ座談会や、会社見学をして担当者に話を聞くような取り組みもしています。音楽業界との接点を増やすことで、学生にもっと業界を身近に感じてもらえればと思って開催しています。

勝木

私は谷口塾に入り、アーティストのSNS運営などにも携わらせていただいたり、業界の方にお会いできたりとすごく刺激を受けました。谷口塾つながりの先輩からいろいろ教わることも多いし、コミュニティが広がっているのがすごくSANNOらしいと感じます。

「なぜ、エンタメが好きなのか?」
原点に立ち返り、一緒に学び、一歩を踏み出そう
勝木

今後のエンタメ業界に期待していることを教えてください。

谷口

エンタメ業界は人に感動を与え、喜んでもらうのが目的としてあるので、いつまでも夢を語る人が多くいる煌びやかで楽しい業界であってほしいですね。一方で、業界が廃れてしまわないように、将来を見据えて今後何が求められるのかを考えるブレインが必要です。今だけではなく、先々に続く幸せな業界づくりをエンタメ業界としてもやっていかなければならないと思います。

勝木

最後に、エンタメ業界に携わりたいと考えている高校生にメッセージをお願いします。

谷口

まず、なぜエンタメ業界に行きたいのかを言語化してみましょう。そして自分がエンタメを好きな理由を考えてみましょう。さらに、どのようにエンタメ業界に関わりたいのかを考えることで、自分に必要な学びが見えてくるでしょう。一緒に大学4年間で学びを深化させていければと思っています。

プロフィール
谷口 元 HAJIME TANIGUCHI
産業能率大学 経営学部教授/株式会社東京谷口総研 代表取締役社長
ソニー・ミュージックグループで8年、エイベックス・グループで20年、主に音楽著作権や国際業務、海外戦略を担当し、長年エンタメ業界に従事。一般社団法人日本音楽出版社協会会長、内閣府知的財産戦略推進本部コンテンツ強化専門調査会委員などを経て、現在は産業能率大学経営学部の教授として、「ミュージック・エンタテインメント」や「アミューズメント・ビジネス」などの科目を担当している他、学生とエンタメ業界をつなぐ交流の場として谷口塾を開催。
また、その一方で、株式会社東京谷口総研の代表取締役として多くの音楽会社のコンサルティングを受け持っている。
勝木 麻菜美 MANAMI KATSUKI
産業能率大学 経営学部マーケティング学科3年
アーティストのライブに行って感動した経験から、将来は音楽業界に携わりたいと考えている。当初はコンサートプロモーターを目指していたが、SANNOの授業を通してさまざまなことを学ぶ中で、今はアーティストをサポートする仕事にも興味を持っている。谷口塾にも所属し、進みたい道へ向かって邁進中。
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