私の視点 Vol.1
正解はひとつとは限らない
産業能率大学 教員対談
私の視点 Vol.1
正解はひとつとは限らない!
これからの時代を切り拓いていくため求められるのは、自ら課題を見つける視点と、その課題を解決する力。学生一人ひとりがそうした視点や力を育むためのSANNOの学びの実際とは?
授業でカップ焼きそばの作り方をリサーチ!?
本学経営学部でそれぞれにユニークなゼミや授業を展開する齊藤弘通教授と加藤肇教授に、「独自の視点のつくり方」をテーマに語り合ってもらった。
----本題に入る前に、お二人の専門分野と、担当する授業やゼミでの活動内容について教えてください。
齊藤:専門は人材育成論。組織内外での社会人の主体的かつ継続的な能力開発のあり方などについて調査・研究を行っています。研究の際には、インタビューや観察、フィールドワークといった「質的調査」と呼ばれる方法を用いています。この調査は、事象の性質や特徴といった数値化しにくいデータを集め、事象を質的に理解したり、説明したり、解釈したりする際に有効な方法です。ここ数年は専門ゼミで「若者のライフスタイルや購買行動」を統一の研究テーマとして設定し、自由なテーマで質的な研究をさせています。
加藤:僕は長年にわたり駅ビルやエキナカに関する研究や開発に携わっていました。「移動者マーケティング」という新しいソリューションを開発しました。ゼミでもそれに近いこと、例えば日々通勤・通学する移動者をターゲットに、彼らのインサイト(隠れた消費者心理)を探り、どのように消費行動を促進すればよいか。どんな商業施設であればもっと繁盛するのか。このような課題を考えさせています。
齊藤:加藤先生と私ともう一人の先生で3クラス同時にやっている「行動観察で消費者を知る」という授業があり、いろいろな題材を使って人の潜在的な行動の背後にあるインサイトを探るということをやっています。その授業で使っている演習の一つにカップ焼きそばを食べる人たちの行動観察というのがあります。4人のユーザーがカップ焼きそばを買ってきて食べるまでの一連の行動を動画で撮って観察するのですが、面白いことに蓋の開け方や湯切りの仕方に至るまで人によって全部違う。それぞれのユーザーが無意識にやっている行動にどんな背景があるのかを考えて、最終的にそれを文章化して焼きそばを食べる人のペルソナ(典型的なユーザー像・顧客像)を作るという演習です。たった4つのサンプルですが、学生たちも「行動を細かく観察することで見えてくるものがあるんですね」なんて言う。
加藤:あれは面白がりますね。まさか授業でカップ焼きそばを扱うなんて思っていないし。
齊藤:この行動観察の授業はデジタルマーケティングの授業とセットになっています。「行動観察で消費者を知る」の授業で質的にユーザーの行動を見る、そこで出てきたペルソナをベースに「デジタルマーケティング」の授業ではどのようなコンテンツを提供すればいいか考えさせる、というふうにつながっています。こういうことを4回か5回練習させて、次は自分たちでテーマを決めて行動観察や質的調査をさせると色々と面白いテーマが出てきて、例えば「なぜ若者は位置情報シェアアプリを使うのか」とか。切り口は自由にさせていますが、学生が実際にアクセスしやすい若い人の行動に焦点は絞っています。自分たち世代を観察するなんて、実は彼らはやったことがないはずです。なぜなら彼らにとって自明なことだから。でも一歩引いて観察したら、そこには彼ら世代が持つ何らかの考え方や感覚があるはずで、そうやって見えてくるものを解釈するということこそ、今日のテーマである「視点をつくる」ことにつながってくると思います。
加藤:「行動観察で消費者を知る」は私も一緒に担当していますが、「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」と、問いを繰り返す中で自分たちなりの解を導き出していくという、大切な経験を重ねている気がします。
私は以前ずっと業務としてそうした行動観察を活用してきたわけですが、教員としてこの大学に来て齊藤先生の授業を見た時にそのクオリティとリアリティにとても驚きました。行動観察をしてインサイトを見つけて、そこから何かアイデアを生み出すということを実際に授業でやっている。学生たちに、「ビジネスの現場でも本当にこの通りにやっているから」という話をすると、食いついてきますね。
身近な事象の中に“正解のない課題”を見つける
----SANNOの特色としての「視点をつくる学び」というのは、どういうものだとお考えですか。
加藤:まさに今のビジネス社会で求められていることそのものじゃないでしょうか。正解はないので、自らの視点で課題を見つけてきて、自らで解決していく。それができないと、これからのビジネスの世界で活躍できないんじゃないのかな。
齊藤:視点がないと研究はできないので、もちろん「視点をつくる」ということはとても大事なんですけど、なんらかのインプットがないと視点はできないし、その視点の幅の広さも重要。大学で専攻している領域だけではなく、社会で起こっている問題や自分の身の回りに起きていることについて関心を持つことも大事でしょう。例えばスマホに色々なアプリを入れて楽しんでいるかもしれないけど、それでは単なるサービス受益者なんです。「なぜこのサービスが生まれたのか」「どうしてこのシーンで使いたがるのか」というふうに問題意識を持って世の中の事象を見ないと視点は育ちません
そういう意味で本学は、アクティブな活動をする過程で、その面白さから視点が見えてくる可能性が高いのかもしれません。講義型の授業でもそれは可能だし、読書や映画を観ることでも視点は育つわけで、ジャンルを偏らせることなく、幅広い方法をとっていくことも大切です。
----「自らの視点を持って課題解決する」こと自体、多くの学生にとって大学に入学して初めての経験だと思いますが、そういう学生たちに興味を持たせるために教員としてどのようにアプローチしているのでしょうか。
加藤:個人的には、本学には、こういうスタイルの学びを受け入れる土壌を持った未来志向の学生が多いと感じています。正答や正解が一つではないというのが社会でありSANNOの学びなのですが、高校まではみんな大学受験のために正答率を高めようと学んできたはずです。だから学生たちはもっと戸惑うのかなと思ったのですが、意外に多くの学生たちが「自ら視点を持って課題を見つけて、それを解決していく」という学びを許容してくれる。もちろん個人差はありますが、特に問題意識を持って、未来の自分のあり方をしっかり考えているような学生は周囲を引っ張っていく力もあります
齊藤:そうですね、あえてこういう学び方をしたいっていう学生も見られます。体験から感覚的に捉えていく、試行錯誤しながら掴んでいくのが得意なのかな。帰納的に身体知にしていくだけでは限界があるから、演繹的に情報を集めて自分の考えを整理してロジックを作ることも両方必要なんです。
加藤:私のゼミでも優秀な学生は、すごく感覚的に捉えてそれなりの成功体験を重ねます。でも、さらにレベルアップしようとする際に、やっぱり理論が必要だということに気づいて一生懸命、本を読むんです。そういうタイプの学生はやっぱり伸びますよね。体験してみて、それが理論的に正しいかチェックして、また体験して、という繰り返しをしていくと能力は高まります。そういう学びをマスターしたら、もうその学生は放っておいても大丈夫、と判断します。
齊藤:それは全く同感。
----自分で伸びていく学生がいる一方で、なかなか自ら気づきを得ることができない学生もいると思います。そうした学生たちから主体性を引き出すために、どういうアプローチをしていますか。
齊藤:主体性という言葉の意味が非常に曖昧ですが、私は「自分なりに問題意識を持って世の中を見つめ、何が自分にとって大事な課題なのかを考えられる」と解釈しています。ビジネスにおいては、その課題に対して解決策を考えることが求められますが、学生のうちは解決策まで考えなくていいと僕は思っています。むしろ世の中には様々な課題があるということを自分なりに見つけられる力を育てたい
そのために私のゼミでは、自分たちの半径1メートル以内にあるような「自分たちにとって身近な課題」を見つけよう、ということをやっています。あるチームが調査テーマを決めるとき、一人の学生が「コンビニで、恥ずかしくて買うことに抵抗のあるものがある」と言ったことがあります。聞けば「バナナを1本買うのが恥ずかしい」と。すると他の学生が「お得用のお菓子を買うのがヤダ」とか言い出す。どうも昭和時代の私たちとは違う感覚があるということが見えてきたので、それをテーマに研究するようにアドバイスしたら、彼らは面白がってやっていました。
その研究発表会をある企業の方に聞いてもらったらとても面白いと。学生たちのそういう感覚に企業も全然気づいていなかったんです。今の若い世代にとってはコンビニなんて最先端でもなんでもなく、暇つぶしの場所にもなっていない。これは一例ですが、そうやって調査テーマを考えさせると、身近にある、ネットにも答えの載っていない面白いテーマがいっぱい出てきます。そういう調査を3年間で7~8回やらせるのですが、2年生の後期に専門ゼミに入って調査を手探りで始めた学生たちが、4年生になる頃には、だいぶ自律的に質の高い調査ができるようになっていきます。
加藤:問題意識の高い学生の影響力はめちゃくちゃ大きいです。彼らを核としたチームづくりをすると、彼らに引っ張られ主体性を持って取り組む学生が増えるということが実際にあります。また、学びの意味とか意義をまだ理解していない学生に対しては、とにかく話をよく聞くことにしています。何をしていいかわからないという学生に、面談で「なぜ?」「なぜ?」と一生懸命聞いていくと、そのうちボヤっとした何かが出てくる。単に言語化できないとか、恥ずかしくて言えないとかいろいろあるけれど、しっかり聞いていくうちに何か出てくるから、その何かと学びの関係性を説明すると、意味に気づいてくれる。それで急に変わってバリバリ学ぶようになるわけではないけど、学ぶ意義や意味を見出す糸口みたいなものにはなるかな。また、学生がやりたいことができる環境をつくるようにいつも気を遣っています。
齊藤:そういうサポートは難しいですよね。自分なりに問題意識を持ってやれる学生に引っ張られて周囲の学生も伸びるというのは加藤先生がおっしゃる通りで、私もそういうコア人材をゼミ長にしたりしています。もう一つは、違う視点を持った人の話を聞くという意味で“越境”させています。例えば加藤先生の話を聞きに行くとか、企業の方に研究発表を聞いてもらって質問してもらうとか。そういうことが彼らにとって気づきになる。
それからレビューをマメに入れること。やっぱり、やらせっ放し、やりっ放しじゃダメです。上から目線ではなく、どうしてこういうフィードバックになったのかちゃんと納得できるように、背景まで丁寧に説明します。そういうコミュニケーションの取り方もチームをうまく起動させるポイントになるのではないかと思います。
----具体的にどういうフィードバックをするのでしょう。
齊藤:正解のない身近な問題をテーマに社会調査をする前に、解を探すことに慣れてきた高校までの学習をいったん“アンラーニング”、つまり忘れさせてあげることが大事になるんです。1年生を対象としたプロジェクト型の学習授業は、与えられた課題に対する解決策を考えるものですが、私のゼミでは解決じゃなくて課題発見の方に重きを置くので、1年生の時にやったカッコいいプレゼン資料は一切いらないって言う。コンビニに足繁く通うとか、ひたすら夕食の写真を撮るとか、もっと泥臭くやれと。学生たちは最初は戸惑って、企画書をやっぱり綺麗にまとめようとするんだけれど、それはいらない。
だから2年生でうちのゼミに入ってきた学生をアンラーニングさせることが結構大変で、半年かけて最終発表会で出てくる資料がまだカッコいいんですよね。もっと泥臭くていいと強調しているんですけど、人のインタビューデータも全部綺麗にまとめちゃうんですよね。そうじゃなくてその人が言った言葉、テープ起こしを持ってきて、と。それをみんなで解釈するのが面白いんだって。
----見た目ではなく、いかに本質に気づけるかと?
齊藤:そうです。でも、そういう見方の転換、学び方の転換、アウトプットの仕方の転換に不慣れな学生が多いから、そこをサポートしています。そのとき、自信のない学生に対しては基本的には否定しません。彼らの持ってくるテーマって面白いですから。「インスタグラムのストーリー中毒の人っているんですけど、こんなの面白くないですよね」と言うから「いやいや、面白いよ」っていう、そういう認め方は大事だと思います。
加藤:僕はアイデアの面白さも企画書の美しさも求めちゃうんですけど、どんなにいいアイデアをたくさん出しても、それが課題解決の手段になっていなかったら意味がないから、必ず課題を見つけなさいとは言うようにしています。「課題を絞って、そこからアイデアで広げて、それを綺麗にまとめて相手に伝わるような企画書にしてね」って口が酸っぱくなるくらい言いますね。齊藤先生がいつもやられているような行動観察やインタビューといった手法を前提としてしっかり課題を見つけ、だからこのアイデアだという流れができていないとボツにします。論理的な整合性がないとビジネスの世界では絶対に通用しないと言います
少しレベルの高いステージへの挑戦が成長につながる
齊藤:学生たちにとって、4年間の中でのターニングポイントというのは授業や、授業外での活動が後押しをしたということばかりじゃないような気がします。うちのゼミなんてそんなに派手なことをやっているわけじゃないんですが、「見えている世界が変わってくる感覚を味わえた」と言ってくれる学生もいます。質的調査に取り組むまではあまり周囲の人に興味もなかったし問題意識も持っていなかったけれど、調査を面白くやって人前で発表する、ということを積み重ねていくことで周りの人々がみんな違う感覚を持った面白い人に見えてきた、と。その学生を見ていると確実に、ものを見るセンスが備わってきたなと思う。
また、卒業生ですが、早い段階から「就職は調査関係に行きたい」という学生がいました。特に人と話をするのが好きだから、インタビューをしてそこからものを見ていくという仕事をしたいと言って、ずっとブレずに深めていき、最終的にリサーチ会社に就職しました。そういう成長の仕方もあります。
加藤:なるほどね。僕は少しだけレベルの高い晴れ舞台を作る、ということを意図的にやっています。他大学の学生との合同研究とか、企業に対するプレゼンテーションとか、学生向けのコンペティションとか少しプレッシャーのかかるステージ。定期的にそういうのに参加する機会を作ると、最後には驚くほど力を発揮するということがあります。そこに向けて、下級生の場合は少し丁寧にアドバイスをしますが、3年生ぐらいになるとあまり細かく指示をしなくても自分たちなりに解釈してできるようになってくる。そういう刺激を与えていくと、それなりにみんな伸びます。これは私が驚くぐらい。
----学生にしてみたら、企業の人にプレゼンテーションするのってすごいリアリティがありますね。
加藤:そう。それに企業の人たちは、けっこう厳しく指摘してくれますしね。そういう機会は大事。学生のタイプにもよりますが、優秀と言われている学生ほど、ダメ出しをされると逆に刺激になるし。それがSANNOならではの学びだと思います。
何が課題なのかを導き出すことが大切で、そのためにはちゃんとインサイトを把握しないとできない。これを学内で指摘されてもあまり実感しないかもしれませんが、外部の人から「ダメ」と言われると、先生が言っていたことってやっぱり重要なんだと納得するわけです。それはすごくいいことです。
齊藤:中身のないことをカッコよくやっている感じが僕はダメだと思っていて。本質的なところをどこまで考えたのか、どこまで調べたのかを提示する方がむしろ正しい。流暢に喋ってカッコよくプレゼンするなんていうのはいらないって指導をしています。いかに遠回りできるかということが大事なので、寄り道しなさいということ。綺麗にまとめる前に、まず寄り道して観察することで新たな視点が見えてくるし、違ったものの見方も育つんだから。
解なんて出なくてもいい、モヤモヤして終わるのが一番いい。綺麗に終わると人は勉強しなくなる。モヤモヤさせて終わるのが僕のゼミの基本的な運用の仕方であり、大学はそういう場であるべきだと思っています。
加藤:最近、私が学生たちに勧めようと思っているのが、美大の受験をテーマにした『ブルーピリオド』という漫画です。美大の受験というのは、一般的な受験と違って正答がありません。受験する本人は、何が正しいのかわからないまま、受験がどんどん近づいてくる。いくら予備校で勉強しても、これが正答ですとは教えてくれないから悩みまくる。自分が描いたものが前は「良い」と言われ、今度は「ダメ」と言われても、なんでだかわからないんです。それでも最後に勝ち負け、つまり合否が決まる。すごいプレッシャーの中で挑まなければならない。答えのない中で勝ち取っていかなければいけないこの美大受験ってまさにビジネスと同じで、そういう意味で非常に参考になる。
齊藤:そういうモヤモヤの中で自分なりの答えが見えてくると、最後に一皮剥ける。
加藤:そうですね。自問自答を繰り返していく様子がこの漫画ではよく描かれていて面白いんですが、それがいわゆる“アートシンキング(アーティストが芸術作品を創作する時の思考プロセス)”ということなのかもしれない。
齊藤:そういうアートシンキング的なことはたくさんやるべきです。私もそういったショートトレーニングをたくさんやっています。大学のゼミだけじゃなくて、社会人向けのセミナーでもやっているんですが、例えば代官山の街をフィールドワークしてもらって、ひたすらたくさん丸いものの写真を撮らせて、たくさんの丸いものの写真の中から3つの丸いものの写真を選んで、そこから代官山の街の面白いコンセプトを作る、とか。またはチームで銀座の街を歩いてもらって、どこから銀座が銀座じゃなくなるのか、境目を探してくる、とか。なんだかよくわからない課題に最初はみんな戸惑うけど、そういう答えが1つではない課題に対して、“行ったり来たり”しながら自分たちなりの答えを見つけ、主張することの難しさや楽しさを感じてもらえたらなと。そういう“行ったり来たり”を億劫がらないで面白がる感覚を学生たちに身につけてほしい。そのためには、とにかくやらせることです。
----そういうところから自分だけの面白がる感覚というか、自分らしさを引き出すというような指導はしますか?
加藤:最初に齊藤先生がおっしゃったようにそれ相当の知識とか理論を知らないと、なかなか自分らしさなんて生まれない。言うなればオタク的な感覚というか、時間をかけ深く深く洞察していく態度はとても大切という話はよくします。
齊藤:調査もやってみないと何が出てくるかわからないんですよ。100人に話を聞いても無駄になっちゃうこともあるけれど、100人に聞かないと見えてこない世界があって、100人の違った視点が見えてきたりするんです。そうしたら初めに考えていた課題が全然面白くなかったということが見えてきて、当初の研究テーマとは全然違うものになっちゃうこともあるけれど、それで全然構わない。問いは後から見えてきたりする。論文を書くときだってデータを見てからこんなこと言いたいなというのが見えてきて、後から問いが明確になっていったりするんだから。
加藤:論文、そうですよね。
齊藤:その後付けの問いは最初からは見えてこなくて、寄り道しながら見えてくる。そうやって、手を替え品を替え、寄り道とか探索することの大切さを伝えているつもりですけれど、どこまで響いているのかな。今の時代はYouTubeを開くとテーマごとにわかりやすい解説動画がたくさん載っていますから、こういう世代の人たちに寄り道の大切さを伝えるのって、すごく難しいと感じています。
疑問を持ち続け、イノベーションする側の人材になってほしい
----最後に、これからSANNOの学びを経て巣立つ学生たちにどんな社会人になってほしいのかお聞かせください。
齊藤:先ほどから言っている問題意識を持って世の中を見るということが、実は企業の中に入ると求められなくなるという問題があります。課題発見よりも課題解決が求められる世界だから。そしていつしか問題意識が消えて丸くなってしまう。すると、組織では「お前もやっと“学習”したな」なんて言ったりする。あえて僕は「そういう学習はするな」というメッセージを送りたい。
もちろん組織の中で社会化していくことは大事ですが、組織の規範に染まり過ぎると違ったものの見方ができなくなってしまいます。そういうところからはイノベーションは起こりにくい。だから、組織の中で社会化してパフォーマンスを上げていくと同時に、一方で本当にそのやり方でいいのかを一歩引いて疑問に持ち続ける感覚を養ってほしいと、卒業生に伝えています。
加藤:私は彼らにどうなってほしいかということを、ゼミの募集の時に明確に言い切っています。「デザイナー養成だ」と。グラフィックデザインとかファッションデザインはなく、ソーシャルデザインやビジネスモデルデザイン、つまり課題解決ですね。私のゼミにはそういう人材を目指す学生に来てほしいと言っています。確かに企業は“学習”させて“丸く”しちゃうんだけど、一方で経営陣にはそれを壊す奴をほしいっていう矛盾した感情がある。その壊す側、つまりイノベーションを起こす側の人材がいないと日本はダメになっちゃうから、そういう人材になってほしい
齊藤:イノベーションってスキルでできるようなものではなくて、ものの見方を変えたり、これまでの規範を疑ったりすることを意識していないとダメだから。全員がそういう人になってしまうと組織は回らないけれど、SANNOの卒業生の中からイノベーターが出てくれたらうれしいですね。
加藤:進路支援の授業では「働き始めて20年後ぐらいに自分がどうありたいかを、よーく考えろ、ありたい姿を描け」と言います。日本はどんどん厳しい環境になると言われていて、少しの努力ではなかなか思い通りにはならないかもしれない。そんな状況だからこそ、他者とは違う視点を持って、ピンチをチャンスに変えるようなイノベーション起こしてくれたらうれしいといつも思います。
齊藤:大学に入ってから迷ってもいいんですよ、視点なんてそんなに簡単に見つかるものじゃないから。
加藤:SANNOはPBL(Project Based Learning=課題解決型学習)を通して色々な職業の人たちとの接点を提供しているユニークな大学だと思いますね。高校までとは違う学びを体験できるから、入ってきて最初に「これをやろう」と思っていたことが変わることは珍しくないし、変わるっていうことはそこに何か気づきがあったということだから、それはとてもいいことだという気がします。
齊藤:そうですね、その「変わる」ということを悪いと思わないように教育していくべきだし、変わるためにはやっぱり別の考え方や視点が必要です。だから私が学生たちに常々言っているのが「学校と家とバイト先の行き来だけじゃダメ、視点を変えるために“越境”しなさい」ということ。“越境”というのはそれまで自分が前提としてきたフィールドを超えるということだから、これまでコミュニケーションをとったことのないような世界の人たちと話したり、全く知らなかったジャンルの本を読んだり、自分が前提だと思っていたことを疑うような体験をたくさんするべきです。SANNOは “越境体験”的なコンテンツに出会う機会が他の大学よりも多いんじゃないかなって気がします。参考書籍 「ブルーピリオド」(著者名:山口 つばさ  発行:講談社)
教授プロフィール
齊藤 弘通 SAITO Hiromichi
経営学部 教授
慶應義塾大学文学部人間関係学科教育学専攻卒業、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了。博士(政策学)。
1998年に本学に入職。これまで社会人教育部門にて、研修プログラムの開発や人材開発に関する実態調査、サービス組織に対するコンサルティングなどの仕事に携わる。研究では、わが国の高等教育機関における社会人教育の実態やそこでの学修効果、企業内教育との接続のあり方などについてフィールド・リサーチを行っている。
加藤 肇 KATO Hajime
経営学部 教授
コピーライター、マーケティンプランナー、営業、メディアプランナー、プロモーションプランナー、研究職と広告会社の多くの職種を経験。また、文房具メーカーにも在籍し商品開発や事業開発を手掛ける。近年は、都市特有の消費行動の研究とその攻略法としてのマーケティング及びコミュニケーション手法(=移動者マーケティング)の開発を手掛ける。
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