新しいことを生み出すには、
仮説とトライ&エラーをする
実行力が必要

カルビー株式会社
マーケティング本部 商品3部 1課 課長

香山 宏

  • 生活の面倒を解決する商品やストーリー性を持つ商品が人気になる?
  • 仮説を立てる力やトライ&エラーを繰り返す実行力が求められる!
  • 学生時代にはとにかく夢中になるものに打ち込むべき!

生活の面倒を解決する商品やストーリー性を持つ商品が人気になる?

2025年には時短から一歩進んだ「時産」やマイクロインフルエンサー、高齢者の自己実現などがキーワードになってくるかも。

カルビー株式会社の全社およびフルグラ事業における、5年後、10年後の成長戦略についてお教えてください。

カルビー全社としては継続的成長と高収益体質の実現に向け、イノベーション(成長戦略)とコスト削減を基本戦略としています。イノベーションとしては、海外事業の拡大、フルグラ事業の成長、新製品開発、国内マーケットシェア拡大、2009年に業務・資本提携したペプシコとの連携強化、L&A (Licensing & Acquisition)、新規事業開発を7つの柱として展開しています。

カルビーはこれまでスナック事業を中心に展開してきましたが、今後の日本の人口減少・少子高齢化を前提にして、新しい需要やこれからの成長が見込める事業に目を向けていかないといけません。そのひとつとして成長戦略の柱にもなっている、フルグラ事業を進めています。カルビーでは1988年にシリアルの発売をスタートし、2011年より「フルグラ」で市場を大きく拡大しました。しかし2017年以降、売上はほぼ横ばいになっており、次の一手として、例えば形状を変えたバータイプや甘さを抑えたグラノーラなど、今までにはないお客様のニーズに対応した新たな価値を持った商品展開をしていきたいと考えています。目標としては中期的に売上500億を目指しています。また、2018年には京都に海外向け商品(フルグラ)の工場を稼働させましたが、1000億円以上ともいわれる中国のシリアル市場にも、大きな成長の可能性があると見込んでいます。

2025年には、どんなコンセプトの商品やサービスが人気になると思いますか?

時代の流れを踏まえ、3つ挙げたいと思います。

1つめは、生活の中の面倒を解消するサービスや商品が人気になると考えています。今後も共働き世帯数が増加し、忙しく生活を送る人が増えるでしょう。そんな消費者に受け入れられたのが、本の持ち歩きを簡単にしたタブレット端末や、出かける手間を省いたオンラインショッピングなどで、最近のキャッシュレスの流れもその一部だと思います。時短からさらに踏み込んで、時間を産み出すという概念の「時産」というワードも話題ですね。

2つめは、背景にストーリー性のある商品です。スマホの出現によって私たちの生活は一変しました。動画やニュースメディアが盛り上がり、人々はより自身の興味関心事に時間を費やすようになりました。これからもっとニーズの細分化やパーソナル化が加速するのではないでしょうか。そこで影響力が拡大するのはマイクロインフルエンサーなどの個人です。彼らが実際に使用し、紹介することで特別な価値が付加されることになります。

3つめは、高齢者の自己実現をサポートする商品です。日本は2025年には超高齢社会になっていると予想されます。生活の質の向上や医療技術の進歩によって寿命は延び、人生100年時代とも言われている中で、アクティブで時間に余裕のあるシニアは自己実現へと向かうでしょう。それをサポートする健康軸の商品の需要がこれからもっと高まるのではないかと思いますね。

仮説を立てる力やトライ&エラーを繰り返す実行力が求められる!

答えのない社会で新しいものを生み出すには、仮説を立ててトライ&エラーを繰り返すのが近道。

マーケティングの方法や、データの生かし方は2025年に向けてより変わっていくと考えていますか?

データに関しては、これまでの消費者の購買データに、よりパーソナルな情報が付随していくのではないでしょうか。個人の時間を、ほとんどスマホに費やしているという大きな流れも、このことに関連しています。検索ワードや視聴動画などを追うことで、購買に至るまでの経緯や個人の価値観まで深く理解できるようになるでしょう。メーカーの視点でいえば、新しく生み出す製品のコンセプトや顧客に打ち出すメッセージなどの成功の精度が上がっていくと考えています。今後は、どのようにデータを取得して活用できるかが大きなテーマとなりますね。

新しい視点で、新しいビジネスを作り出すには何が必要だと思いますか?

日本は世界でいちばん早く高齢化が進んで、消費者の生活も変化してきています。このような前例や答えのない社会で、新しいことを生み出すには、仮説を立てる力、またトライ&エラーを繰り返す実行力が必要なのではないでしょうか。そのベースとなる仮説立てを行うには、知識や能力の軸を複数持っていることが重要なのではないかなと思います。その複数の知識や能力を掛け算した力が、他の人にはない武器となって、社会に出た時にきっと役に立つことでしょう。ひとつの会社の中で働くにしても、多くの部署を経験することによって、マーケティング×ファイナンス、マーケティング×製造など、経験がかけ合わさることでその人固有のオリジナルな思考になっていくと思います。

学生時代にはとにかく夢中になるものに打ち込むべき!

何かに熱中した経験を持っている人は魅力的。何でもいいから行動して熱中してみよう。

香山さん自身が商品企画の仕事をする上で大事にしていることや考え方はどんなことですか?

ひとつは、自分なりにお客様の普段の生活を想像してみることです。例えば、子育て中のお母さんの1日を想像して「どういう場面でどのような課題を抱えているのか?」「その課題に自社の商品が役に立つことができるのか?」など想像力を働かせて考えてみます。商品企画という仕事をしていると、どうしても商品を主役にした考えに偏ってしまうことがあるのですが、あくまで消費者を主役に考えを巡らせることが重要です。

もうひとつは、オフィスの中で考えるだけではなくて街に出ることです。自分がマネジメントの立場になってから意識していないと社内にこもりがちになってしまうので、できるだけ時間をつくって商品が売られている現場に足を運び、お客様の状況を観察するなどしています。例えば、スーパーマーケットに行って、どのような属性のお客様がどんな商品をカゴに入れているかを自社の製品に限らずチェックするようにしています。また商品の販促を展開するときにも、どのようなメッセージを打ち出すか、実際に店頭で検証を行っています。最近の事例では、1つの商品に異なる3種のメッセージを書いた店頭広告を作って小規模なエリアで展開し、効果のあるものを見極めてから全国展開する方法をとりました。

商品企画の仕事は、製造・販売・物流部門をはじめ、関わる人の数も多く、大変なことも多いのですが、その分、関係者全員が一体となって作ったものが店頭に並んで、お客様にご購入頂けたとき、そしてさらに喜んでもらえたときには、すごく達成感があり、嬉しいですね

2025年に活躍する人材は、どのようなパーソナリティを持った人だとお考えですか?

行動できる人ではないでしょうか。学生時代には、なんでも構わないので本当に好きなことを見つけて、周りに流されず、とにかく行動に移して熱中してほしいと思います。何かに熱中したことがある人の方が、ない人よりも人間的に魅力的ですし、その経験が社会人になって生きてくると思いますね。

ただ単に優秀な人より、そのような経験に裏打ちされた特別な魅力をもった人の方が、圧倒的に希少価値が高いのではないでしょうか。私自身、そのような経験を持つ方と一緒に仕事をしたら、何かやってくれるんじゃないかという期待がふくらみます。

特に、新しくビジネスや商品を生み出すには、個の力(強い思いや意志)がいちばん大事です。そして、それを支えるのがチームであり会社だと私は考えています。

※所属・役職は2020年3月時点のものです。

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