授業科目紹介

「ワークプレイスの人間関係」ライブ型(Zoom)授業  両学科共通実務教育科目2年次・前学期開講

担当:経営学部 経営学科 皆川 雅樹 准教授(本科目主務者)

どのようなことを学ぶ授業?

「ワークプレイス」とは、一般的には仕事場・職場を意味し、「オフィス」とも近い意味を持ちます。しかし、高度情報化が進み、仕事場に行かなくても、実体のないネットワーク上も「ワークプレイス」となりえる社会になってきています。そこで、本科目では、オンライン上でのコミュニケーションスキルを実践的に身につけることを目的とします。その際、Web(会議、オンラインミーティング)ツールとして多くの企業などが導入しているZoom(ズーム)を利用します。
本科目の主な内容は次のとおりです。
1.オンラインコミュニケーションの特徴を理解する。
2.オンラインコミュニケーションにおける聴き方、訊き方(質問する方法)と伝え方を実践し理解する。
3.オンラインにおける会議・打ち合わせの場を設計し運営することができるようになる。

この授業の面白さや、学生に学んでほしい、興味をもってもらいたいポイントは?

対面・リアルでのコミュニ—ケーションによって人間関係を構築することに慣れている私たちは、「リアル、対面だったらできるのに…」「オンラインだから難しい…」という言い訳をしがちです。しかし、これからの時代を見据えて、本科目ではオンライン上でのコミュニケーション力を上げることで、よりよい人間関係づくりをできるようにしていくための知識・技能を学びます。

授業内容に関する近年のトレンドは?

近年、DX(Digital Transformation /デジタルトランスフォーメーション)という言葉が日頃から使われるようになりました。DXとは、進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のことです。そして、世界的には、来るべき未来が「すべてにおいてオンラインが前提となる」と捉えています。これを「アフターデジタル」と呼ぶことがあります。「ビフォアデジタル」は、リアル(店や人)でいつでも会えるお客様が、たまにデジタルにも来てくれることを意味します。一方、「アフターデジタル」は、デジタルで絶えず接点があり、たまにデジタルを活用したリアル(店や人)にも来てくれることを指します。つまり、「アフターデジタル」とは、デジタルやオンラインを「付加価値」として活用するのではなく、「オフラインとオンラインの主従関係が逆転した世界」(デジタルが基盤)という視点で物事を考えていきます(藤井保文・尾原和啓『アフターデジタル』日経BP社)。このような状況を想定する中で、オンラインコミュニケーションを円滑に進めるスキルが求められます。

ライブ型(Zoom)授業での工夫は?

本授業では、次のような展開で毎回実施します。
1.Zoomのチャット機能を使ってのアイスブレイク・出席確認を兼ねた「チェックイン」(例:「最近、感動したことは?」)
2.【講義(教員)】  授業の目的・目標を説明し共有する。
3.【個人ワーク(学生)】  テキスト(片桐あい『オンラインコミュニケーション35の魔法』自由国民社)の内容を把握・理解するテストに答える。テストは、LMS(学習管理システム)のmanaba(マナバ)の小テスト機能を活用して答える(※画像A)。
4.【グループワーク(学生同士)】  Zoomのブレイクアウトセッション機能を活用して、4名1組に分かれて、①1分間自己紹介、②3.で考えたテストの答えをグループで検証する。
5.【講義(教員)】  3.のテストの答えとオンラインコミュニケーションに関わるプラスアルファの内容を説明する。
6.【グループでの演習活動(学生同士)】  上記の活動で学んだ内容を活用できる演習(グループワーク)に取り組み、得た知識を実践的に活用する。例えば、第3回の授業では、オンライン会議の心得と「誤解」について学んだ上で、実際にオンライン会議をする場合に、会議の目的・議題や参加メンバー・役割分担などを考えてみるワークを展開する。
7.Zoomのチャット機能を使っての「チェックアウト」(本日学んだことを短い言葉で共有)
8.manabaアンケート機能を使っての「振り返りシート」入力(※画像B)
※画像A:manaba(マナバ)の小テスト機能を活用したテキストの内容把握
※画像B:manaba(マナバ)アンケート機能を使った「振り返りシート」
※「振り返りシート」の質問項目(すべての回で共通した質問項目)
0.本日、対話をしたメンバー全員の名前をフルネームで入力してください。
1.本日の授業で、あなたにとって「よかったこと」「できたこと」は?
2.本日の授業で、あなたが「学んだこと」は?
3.本日の授業で、学んだことから、あなたが「気づいたこと」は?
4.本日の授業で、気づいたことを活用して、あなたが「次にする行動」は?
5.その次にする行動をすると、あなたにどんな「メリット」があるか? あなたのどのような「成長」につながるか?
6.質問・感想・担当者へのコメントなど、自由に書いてください(任意)。

ライブ型(Zoom)授業で特に意識していることは?

1.学生の参加者意識を醸成
本授業では、毎回70名前後の学生が出席します。Zoom上での授業は、教員からみた相手(学生)がいることを意識しづらいと言われがちです。しかし、Zoomのチャット機能を使っての最初の「チェックイン」、最後の「チェックアウト」を毎回することで、参加者全員の声(文字)を共有することで参加意識を醸成します。さらに、入力された内容について、いちいち教員が読み上げたり、コメントしたりすることで、学生は自分のことを意識してくれていることを実感できます。
2.学生の個人ワークの時間を効果的にする
対面授業ですと、まわりの目を気にしながらの個人ワークになり、集中できない場合があります。しかし、オンライン(Zoom)上ですと、作業する際には、まわりに同じグループのメンバーがいない場合が多いです。したがって、自分のペースでじっくりと考える時間をとることができます。
3.教員による講義と指示は丁寧かつ簡潔にする
講義および指示を出す場合は、対面授業で話すよりも少し遅めに(0.8倍速くらいで)話すようにしています。早口で話しすぎると聞き流されたり、ネット環境などによっては学生側にうまく声が発信されなかったりすることがあるからです。また、「いま講義の時間」「〇〇をする時間」など、場面や指示をチャットにも入力しておきます。

ライブ型(Zoom)授業ならではのエピソードは?

本授業で、私(皆川)は大学内の教室から配信しておりました。実は、その教室に本授業に参加する学生数名がいました。オンライン授業なのに、目の前に受講している学生が何名かいる状態でした(※写真C)。目の前にいる学生については、グループワークの際になるべく同じグループにならないようにして、各グループでの取り組みをZoom内で確認しつつ、リアルな反応も確認することができました。これにより、対面でもオンラインでも対話中の表情や身振り手振りの大切さを教員側も見える形で実感でき、そのことを学生に伝えることで、学生の中でも納得感が増しました。
※写真C:教室からの配信による授業風景

授業に関連して、併せて受講してほしい科目、習得してほしい知識は?

対面でのコミュニケーションスキルを身につけることで、オンライン上でのコミュニケーションスキルを磨くことができます。そして、対面・オンラインどちらの状況でもコミュニケーションをとれる場をたくさん踏むことで、スキルアップにつながります。また、「リアル、対面だったらできるのに…」「オンラインだから難しい…」というマインドを一度忘れることが必要になります。例えば、オンラインでのコミュニケーションは、対面でのそれにくらべて、空気を読むことができません。これは裏を返せば、空気を読まずに発言や質問ができるということです。その結果、リアルな対面では伝えられなかったことや確認してこなかったことが見えるようになることもあります。したがって、対面がオンラインに勝るとは、必ずしも限らないことを意識することが大切になります。

授業を通じて学生に伝えたい事

相手あってのコミュニケーション。リアルでもオンラインでも、コミュニケーションには相手がいることをいつも以上に意識してほしいです。自分からの発信がうまい人がコミュニケーション上手とは限りません。相手の考えや意見を引き出しつつ、自分のことも相手に理解・納得してもらえるような関係性をつくることがコミュニケーション上手です。