2014年度FD研修会

2014年度 FD研修会 開催概要

学内の教員を対象にFD研修会を開催し、教授法に関する内容の修得のみにならず、学内の各部署と学生教育上必要な情報共有の場となっています。2014年度は、アクティブ・ラーニングを中心に、研修を実施しています。

第8回「行政が推進するアクティブラーニング」〈2015年2月20日〉

松坂浩史氏(文部科学省 大臣官房 文部科学広報官)

2014年度のFD研修会の締めくくりとして大学改革推進室長として高等教育機関の抜本的改革にご尽力されてきた松坂浩史氏をお招きし、「行政が推進するアクティブラーニング」と題し、高等教育機関におけるアクティブラーニングの必要性やその背景についてご講演いただいた。講演には、教員に加え、経営管理研究所等々、大学職員の方々にも参加をいただき有益な情報共有となった。
(1)なぜアクティブラーニングなのか
初等中等教育においては、生涯学習社会への変化の中で、子どもに「何を教えるか」ではなく子どもが「何を身につけるか」という「教育」から「学習」への大転換が進められてきた。近年、高等教育においても学生の学修の観点から様々な取り組みが求められており、平成24年3月の答申では学士課程においても「学生同士が切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する能動的学修」の必要性を説いており、アクティブラーニングを何故行政が推進するかの理由について冒頭に説明があった。

アメリカと日本の1週間あたりの授業外の学修時間の比較では、米国の学生が11時間以上勉強している人数が6割近い。一方、日本は5時間以下が約7割という現状に対し、「勉強しないのが大学」という学生のマインドセットをどう変えていくかが課題になっている。さらには授業時間の比較において、大学の授業時間が小学1年生の授業時間よりも少ないという現状に対し、大学設置基準第21条の「単位の実質化」や「学士課程教育の質的転換」についての必要性を示唆された。また、「馬を水飲み場に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない。」という諺に準え、主体的な学びの確立と学習時間の増加・確保に向けた一手法として「アクティブラーニング」が求められているとのことであった。

(2)アクティブラーニングの背景と大学を取り巻く環境
8歳人口は年々減少している反面、大学生短大生の学生数は殆ど変化がない。また、高等教育機関(専門学校含む)への進学率は過去最高の80%という数字が示しているように、以前は進学しなかった層の掘り起こしを行っている現状が示された。学生の価値観が多様化し、旧態以前の教員と学生との価値観の違いに関する説明があり、この価値観の状況に対して、適合させていくための特殊な方法論・教育手法として「アクティブラーニング」が生まれたのである。

大学を取り巻く環境も大きく変化している。東京、京都、神奈川は約7割近い学生が大学・短大に進学しており、これ以上増加する見通しはなく、目の前の学生の質を落とさないことが大きな課題となっている。また、OECDの高等教育機関への社会人の入学者の割合調査の結果から、「大人の学びの意欲」が今後の日本の大学の将来に繋がっており、大学の学費から考えてみても、いかに大学の授業に付加価値をつけ、魅力をつくるかを求められている。今後のグローバルな競争時代においては、目の前にいない海の向こうのライバルたちに負けない政策が必要になってくるとのことであった。
学生が主体的に学ぶ為にも、科目間の関係を接合し、大学教育の到達レベルを高めていくことが求められ、生きていく力を身につけるためにも「アクティブラーニング」が必要となる。アクティブラーニングには様々なスタイルがあり一律ではないことを前提としており、学生が「知識を受け入れる時間帯」と「知識をアウトプットする時間帯」の両方があってこそアクティブラーニングに繋がるものであり、アクティブラーニングは「学び」そのものであるとの説明があった。