2018年度 報告

2018年度 事業実績および成果

 過去最大となる年間計160科目を対象に授業内スタッツデータの測定を行い、のべ62科目の授業撮影を実施した。本格的な授業なスタッツ測定の開始から4年を経て、全専任教員が授業内スタッツ測定に基づく授業改善に取り組んだことになり、授業改善に関する新たな全学的体制を確立することができた。また、必修科目の出欠データを中心に学生の学習行動の把握に有用なデータを収集・蓄積する体制を整備することができ、専任教員を対象としたアンケート調査によると、96%の教員が学生指導においてラーニングポートフォリオ(学生カルテ)が役に立ったとの回答を得た。学習支援講座の企画、告知、実施、各種資料の作成等にかかわる業務フローを確立し、年間1,800件の授業外学習支援を実施することができた。
 また、ラーニングコモンズの学生認知度は経営学部で88.0%、情報マネジメント学部で89.4%に達し、学生への認知は十分に浸透したことがわかった。また、学生にアンケート調査を実施したところ、学生は週1-2回のペースでラーニングコモンズを利用しており、順調に活用が進んでいることがわかった。また、探究学習支援を目的に整備した探究型学習スペースの利用(指導)件数)は前年度から123%アップの589件にのぼり、年度目標である120件を大きく上回った。また、APを契機に発足した学生による学生のための学習支援「学びのピアサポート活動」の運営ノウハウが蓄積され、年間30件を超える学習支援企画・イベント等を安定的に実施できるようになった。
 1,2,3年生を対象に実施したPROGテストの受験率が98%に達した。PROG結果を学生ポートフォリオにアーカイブする体制も整い、受験率の向上によりほぼすべての学生が、過去のPROGテストの結果を振り返り、自己成長を実感したり、自らの課題を発見し、その後の学習・活動計画に活かしたりできるようになった。卒業生135名に対して調査(PROGテストおよびアンケート)を実施し、68.2%の卒業生が「大学で学んだことが仕事に役立っている」、65.9%が「仕事にやりがいを感じている」と回答し、本APで推進したアクティブ・ラーニングによる授業科目は、受講経験のある卒業生のうち75.3%が社会に出て役に立ったと回答した。これにより、本学の専門教育およびキャリア教育が一定の成果を伴っていることがわかった。また、40社を対象に就職先調査を実施した。本調査結果を卒業生調査の結果と合わせて分析した結果、リーダーシップに関して卒業生と就職先企業の認識にズレが生じており、企業はその必要性を認識しているが、卒業生の認識は低いことがわかった。
 開発した「主体的学習者育成プログラム」を3校、計567名の高校生を対象に実施した。また、高校が(本学の支援なく)独自にプログラムを実施できるように本プログラムの実施ノウハウを整理し、6校で高校教員向け研修を実施し、その後3校で高校教員によりプログラムが実施された。さらに、「協働的学習者育成プログラム」を開発し、2校で実施した。また、高校教員向けアクティブ・ラーニング研修を全5回実施し、のべ834名の参加者を得た。
実施計画 事業実績および成果
(1)スタッツデータ測定・分析の内製化を完成する。 本年度は、2キャンパス2学部3学科において、過去最大となる年間計160科目を対象に授業内スタッツデータの測定を行った。結果、2014年度後学期の授業内スタッツの本格的な測定開始から4年を経て、全専任教員が授業内スタッツ測定および学習者行動改善シートに基づく授業改善に取り組んだことになる。これにより、授業改善に関する新たな全学的体制を確立することができた。また、測定スタッフの育成、測定・分析・結果の出力、学習者行動改善シートの記入・提出、学部長によるコンサルテーションという一連のフローも確立し、安定的に運用できるようになり、スタッツデータ測定・分析の内製化を完了した。
全専任教員が、授業内スタッツデータに基づいて学習者行動改善シートに沿って授業改善に取り組む体制を確立できたことにより、全学的なデータに基づく授業改善のPDCAサイクルを完成することができ、学生の深い学びを伴った教育の実現を加速することができた。
(2)教員間での次世代アクティブ・ラーニング(AL)型教室でのAL実践ノウハウを共有する。 ALサポートツール(無線対応プレゼン資料集積投影機器wivia、可動式ホワイトボードなど)を備えた次世代アクティブラーニング型教室(実験教室)の利用実績を積み重ね、本教室を使用した教員に対するアンケート調査を継続的に実施し、AL実践ノウハウ(クリッカーの有効な使用場面など)を蓄積した。
蓄積したノウハウを学内で共有したことで、学生の学びを深める次世代アクティブ・ラーニングの実践について各教員の具体的な検討が加速した。
(3)教員間でのALサポートツールの活用法を共有する。 これまでの検証結果から、ALサポートツールの中でも特に学生の集中力維持や理解促進に高い効果が期待できると考えられる「クリッカー」の活用を推進した。FD研修会において、物理的なクリッカーと、学生所有のスマートフォンを利用したクリッカーのメリット・デメリットを紹介し、その具体的な使用方法について事例を伴って解説を行った。
事例研究により、ALサポートツールの1つである「クリッカー」の活用により、学生の集中力が維持され、理解が深まるなどの効果があることが確かめられ、FD研修会においてその結果が専任教員に共有された。また、私有機接続可能なWifiの整備が完了したことを受けて、スマートフォンアプリによって利用可能なクリッカーの活用が推進しやすくなり、その具体的な使用方法がFD研修会で解説されたことにより、学生の学びを深める授業運営ノウハウの理解が進んだ。
(4)高次のPBL支援強化を行う。 高次のPBL(Project Based Learning)実施を支援するため作成した、PBLの協力先(企業・団体・地域等)との協定締結の手続やPBL実施上の注意点などをまとめた「教員向けPBL実施ガイド」の改訂を行った。2018年度に、PBLを通じて地域創生ならびに産官学との連携を強化し、外部機関との相乗効果を創出する仕組みを作るために新設した地域創生・産学連携研究所を中心に、具体的なケースを想定しながら、特にコンプライアンス上の観点から改訂作業を進めた。
「教員向けPBL実施ガイド」が完成し、運用が開始されたことにより、高次のPBL実施に関する留意点等が全専任教員に周知徹底されるようになり、かつ、PBL企画・実施における学内手続の円滑化が図られるようになった。また、前年度に完成した「学生向けPBL実施ガイド」の運用により、学生がPBLに取り組む上で注意すべき点が全学で統一され、周知徹底されるようになった。これにより、企業や各種団体の本学とのPBL実施に関する安心感が高まり、協力先の開拓が円滑に進むようになった。このような一連の取組みにより、高次のPBLを通じた学生の知識活用機会を機動的に提供する体制を整備することができた。
(5)事前・事後学習の組織的チェックを成熟する。 本補助事業を契機に導入した「事前・事後課題を含む授業外学習のシラバス記載の詳細化」「授業外学習の成績評価割合20%以上」は、教員間でも、学生間でも完全に定着した。また、事前・事後学習を含めたシラバスの記載内容を、設定したチェック項目に沿って教学委員が全科目確認し(一次点検)、副学長・学部長・学科主任が授業プログラムがカリキュラムポリシーに適合しているか等の確認を行う(二次点検)組織的なチェック体制が成熟し、安定稼働できるようになった。年度を経るごとに、チェック項目に適合したシラバスの執筆が増え、チェック負担も軽減しつつある。
学生の間で各学期の学習計画をたてる際、シラバスに詳述されている授業外学習の内容および所要時間を考慮することが一般化した。これにより、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びが促進され、結果、学生の授業外学習時間が伸長した。授業外課題はラーニングポートフォリオ上で提示され、学生はラーニングポートフォリオ上で課題提出を行う原則も定着してきている。これにより、学生の学習履歴がラーニングポートフォリオ上に記録されるようになり、学生自身が過去の学習履歴を振り返りながら、将来の学習計画を立案することができるようになり、より深い学びにつながる学習の実現が加速した。
(6)授業撮影による問題点発見ノウハウを実装する。 これまで蓄積した授業撮影ノウハウ(準備手順、最適なカメラ位置や撮影範囲など)を活かして、過去最大となるのべ62科目(経営学部35科目、情報マネジメント学部27科目)の授業撮影を円滑に実施することができた。また、授業内スタッツデータを分析して特色ある授業を抽出し、その授業風景を撮影した映像を確認して、授業進行上のポイントなどを検討する授業研究ノウハウも蓄積することができた。撮影した映像データは教育支援センターで保管し、教員は自身の映像データを確認して、授業進行上の問題点などを客観的に把握することができるようになった。
各教員が、測定したスタッツデータと授業撮影データを組み合わせて自身の授業を客観的に観察・分析することができるようになり、学生の学びを深めるための授業改善を加速することができた。また、複数クラス設置科目の担当者会議において、各教員が蓄積した授業改善のポイントや改善ノウハウを共有し、組織的に授業改善を加速することができるようになった。
(7)リーディング・ライティング量の全学的管理の継続的運営ノウハウを確立する。 学生が自らLMS(Learning Management System)上に毎週の授業外の学習時間、リーディング量、ライティング量を記録する方法を確立することができ、これを安定的に運用する全学的管理体制を整備することができた。必修科目や複数クラス設置科目を中心に調査対象として有効な科目の特定も進んだ。複数クラス設置科目の担当教員が集まり、調査結果をもとに授業プログラムの改善に取り組み、シラバスの改訂が行われるなど、具体的な改善が図れるようになった。
学生の授業外の学習時間・リーディング量・ライティング量をデータで、かつ、経年で把握できるようになり、学生の学習実態に即した授業改善を組織的かつ機動的に推進する体制を確立することができた。また、学生自身が授業外の学習時間・リーディング量・ライティング量をLSM上に記録する方法を採用したことで、学生が自身の授業外学習の時間・内容を振り返る契機となり、授業内外の一体的な学習の実現が加速した。
(8)学習支援サービスを安定供給する。 各キャンパスにおいて資格取得支援、語学学習支援、基礎学力養成講座等を実施した。また、資格検定試験日程一覧や資格ガイドを作成した。講座の企画、告知、実施、各種資料の作成等にかかわる業務フローを確立し、年間スケジュールに基づいて学習支援サービスを安定的に供給する体制を整備することができた。そのことにより、APの年度目標875件を大きく上回る年間1,800件(自由が丘キャンパス1,457件、湘南キャンパス343件)の授業外学習支援を実施することができた。
学習支援センター主催の英会話レッスンは、少人数で学生各人の能力に応じた質の高い学びを提供することができ、学生から高い満足度を得た。また、資格検定試験日程一覧や資格ガイドの作成、後援会(保護者会)からの資金援助を受けた資格取得奨励費の支給、資格取得や検定合格を支援する講座の開講により、学生の学習意欲をさらに高め、主体的学習態度をより一層引き出すことができた。
(9)出欠等の学習行動データの安定的測定、ラーニングポートフォリオの運用を定着する。 必修科目の出欠データを中心に学生の学習行動の把握に有用なデータを収集・蓄積する体制を整備することができた。また、アーカイブした学習行動データと、PROGテストの結果等の学修成果データを組み合わせ、アカデミックアドバイザーによる総合的な学習指導を安定的に実施することができるようになった。専任教員を対象としたアンケート調査によると、96%の教員が学生指導においてラーニングポートフォリオ(学生カルテ)が役に立ったとの回答を得た。
学生がラーニングポートフォリオを活用して、過去の履修状況や授業出席の状況、単位取得数、提出した課題レポートの内容、PROGテストの結果、アカデミックアドバイザーとの面談記録等を確認して自身で目標を設定し、学習計画を立案し、学習・生活改善を図っていく姿勢の定着が進んだ。これにより、学生の主体的な学習が一層促進された。
(10)ラーニングコモンズの活用促進、探究学習支援を強化する。 過去の実績に基づいて有効だと思われるラーニングコモンズの認知度向上施策を継続的に実施した結果、学生認知度は経営学部で88.0%、情報マネジメント学部で89.4%に達し、学生への認知は十分に浸透した。また、学生にアンケート調査を実施したところ、学生は週1-2回のペースでラーニングコモンズを利用しており、順調に活用が進んでいることがわかった。また、探究学習支援を目的に整備した探究型学習スペースの利用(指導)件数は前年度から123%アップの589件にのぼり、年度目標である120件を大きく上回った。
ラーニングコモンズが授業外における学習スペースとして定着し、学生の授業外の学びが促進された。また、探究型学習スペースを整備したことにより、学生の多様なニーズに応じて教員が個別指導を行う件数が増え、向学心の強い学生の学びを深めることができた。ラーニングコモンズおよび探究型学習スペースの整備は、学習環境面から、学生の主体的学習態度を引き出し、教員の授業外での指導の意識を高め、学習者中心の教育の実現を加速した。
(11)学習サポートスタッフのノウハウを発揮する。 APを契機に発足した学生による学生のための学習支援「学びのピアサポート活動(通称Shares, Sanno hearty experts in active-learning resources)」の運営ノウハウが蓄積され、これを発揮することにより年間30件を超える学習支援企画・イベント等を安定的に実施できるようになった。
学習支援センターによる支援活動に加えて、学びのピアサポート活動による「学生目線での学習支援」も安定的に実施されるようになり、学生一人一人のニーズに沿ったきめ細やかな学習支援活動の充実を図ることができ、深い学びを伴った学習を促進することができた。
(12)2,3年生を対象にしたPROGテストを実施する。 1,2,3年生を対象にPROGテストを実施し(1年生は自主事業、2,3年生は補助事業として実施)、受験を徹底した結果、受験率は98%に達した。PROG結果を学生ポートフォリオにアーカイブする体制も整い、受験率の向上によりほぼすべての学生が、過去のPROGテストの結果を振り返り、自己成長を実感したり、自らの課題を発見し、その後の学習・活動計画に活かしたりできるようになった。また、半期に一度のアカデミックアドバイザーとの面談において、GPAや既修得単位数、授業出席状況に加えて、PROGテストの結果を活用し、学生の特性(強み・弱み)を踏まえた的確な指導・アドバイス・フォローが可能になった。
1,2,3年生にPROGテストの受験を義務づけ、受験率が向上したことにより、学生の間で、専門知識の修得のみならず、自身の技能・態度(ジェネリックスキル)の向上に対する意識が高まり、PBL等の演習により積極的に取り組む姿勢を引き出すことができた。また、アカデミックアドバイザーが、学生のPROGテストの結果を経年で把握できるようになったことで、学生の大学入学以降の成長を踏まえて的確にアドバイスを行うことができるようになった。さらに、教員と学生が、①知識②技能③態度という3つの「共通の物差し」で学生の成長を測り、課題を明らかにすることが可能になったことで、学生の成長を多面的に支援・加速できるようになった。
(13)卒業生に対するアンケート調査結果の分析方法を深化する。 本年度も前年度に引き続き卒業生135名に対して調査(PROGテストおよびアンケート)を実施し、結果の分析方法の深化を試みた。そして分析結果の中で、特に68.2%の卒業生が「大学で学んだことが仕事に役立っている」、65.9%が「仕事にやりがいを感じている」と回答している点、本APで推進したアクティブ・ラーニングによる授業科目は、受講経験のある卒業生のうち75.3%が社会に出て役に立ったと回答している点に着目した。これにより、本学の専門教育およびキャリア教育が一定の成果を伴っていることがわかった。他方、卒業生の外国語科目に対する評価が低いことがわかった。そこで、外国語およびグローバル教育を強化するため、本学がこれまで培ったアクティブ・ラーニングの知見を応用し、外国人学生と協働で課題に取り組み、実践を通じて語学力向上や異文化理解を促進するプログラムを強化するなど、教育プログラムの改善を図った。
継続的に卒業生調査を実施し、データが蓄積されてきたことにより、教育の質保証に向けた本学の教育プログラム上の課題が明らかになってきた。卒業生に対するアンケート調査で評価が思わしくなかった科目(外国語)に関して学内で問題意識が高まり、改善の取組みが加速し、外部機関の協力も得ながら初年次英語科目の抜本的なプログラム改善に取り組むことになった。また、卒業生のPROGテストの結果から計画立案力が弱いことが分かり、初年次PBLなどにおいて計画性をもって物事を進める力(プロジェクトマネジメント力)を身につけられるようなプログラム改善の検討が加速した。
(14)学生の主な就職先に対するヒアリング調査結果の分析方法を深化する。 本年度は、昨年度の25社を上回る40社を対象に就職先調査を実施した。前年度まで改訂を重ねて完成した調査票をもとに聞き取り調査を行い、本学卒業生が就職先企業からどのような評価を受けているかを検証した。そして、本調査結果を卒業生調査の結果と合わせて分析し、そのギャップを調べてみると、前年度同様、企業が必要としている能力と、学生が企業で働く上で必要だと考えている能力はかなりの程度一致していた。もっとも、リーダーシップに関しては、卒業生と就職先企業の認識にズレが生じており、企業はその必要性を認識しているが、卒業生の認識は低いことがわかった。
リーダーシップに関する就職先企業と卒業生(学生)の認識の差を埋め、ビジネスにおいてリーダーシップを発揮し得る人財を育成するため、経営学部のビジネスリーダーコースをパイロットケースとしてプログラム強化を試みた。具体的には、コースのエントリー科目である「リーダーシップベーシック」およびコースの総括科目である「プロジェクトリーダーシップ実践」のプログラム改善を行った。その結果、「リーダーシップベーシック」については授業評価で4.23という高いスコアを記録し(5点満点, 全科目平均4.06)、「プロジェクトリーダーシップ実践」については受講生は限られているものの全員が本授業を「非常に良い」と回答した。
(15)高校生向け「主体的学習者育成プログラム」の開発・試行を行う。 前年度までに開発した「主体的学習者育成プログラム」を、本学教員が講師を務めて3校(静岡県立伊東高校、仙台市立仙台高校、立命館宇治高校)で計567名の高校生を対象に実施した。また、高校が(本学の支援なく)独自にプログラムを実施できるように本プログラムの実施ノウハウを整理し、6校(川崎市立幸高校、仙台市立仙台高校、三重県立桑名西高校、沖縄県立開邦高校、興南高校、福島成蹊高校)で高校教員向け研修を実施した。その後、3校(川崎市立幸高校、三重県立桑名西高校、沖縄県立開邦高校)で高校教員によりプログラムが実施され、AP事業成果の普及を実現した。さらに、2つ目のプログラムとして「協働的学習者育成プログラム」を開発し、2校(沖縄県立開邦高校、静岡県立伊藤高校)で実施した。「主体的学習者育成プログラム」同様に「協働的学習者育成プログラム」の実施ノウハウをまとめ、それをもとに1校(沖縄県立八重山高校)で高校教員によりプログラムが実施された。これにより、AP事業成果のさらなる普及を実現した。
これまで蓄積した「主体的学習者育成プログラム」の実施ノウハウに基づいて、3校で高校教員によりプログラムが実施された。その際、プログラム実施前後に主体的学習態度を診断する簡易テストを実施し、学修成果を検証したが、いずれの高校でも探究心や自己肯定感などのスコアに伸長がみられた。本取組みにより、AP事業の成果の具体的な普及が実現し、主体的学習態度を身につけた学生の増加、ひいては大学におけるアクティブ・ラーニングの円滑かつ効果的な実施を加速することができた。本取組みについてメディアを通じて知ったSSH指定高校から簡易テストの内容および実施方法について問い合わせを受けるなど、着実に事業成果の普及を進めることができている。
(16)高校教員向けアクティブ・ラーニング研修を充実強化する。 参加者に各学校でアクティブ・ラーニングの推進者になってもらうことを目的に、高校教員向けアクティブ・ラーニング研修を全5回実施し、のべ834名の参加者を得た。本研修では、本学が開発した「主体的学習者育成プログラム」および「協働的学習者育成プログラム」を紹介しつつ、具体的なプログラムに沿ってこれまで本学が蓄積したアクティブ・ラーニングに関する知見を共有することによって、アクティブ・ラーニングに関して抽象的な理解にとどまらない、具体的で活用可能な知識の共有を試みた。
本学主催の高校教員向けアクティブ・ラーニング研修で、高校における探究学習の導入プログラムとしても機能するように開発した「主体的学習者育成プログラム」および「協働的学習者育成プログラム」を紹介し、その導入方法について具体的に解説したところ、多くの高校教員から興味関心をいただいた。そして、本プログラムに関して理解を深めてもらうにつれて、高校教員のアクティブ・ラーニングに対する理解度も深まっていき、結果、高校におけるアクティブ・ラーニングの推進を加速することができた。
(17)専門家委員会からのアドバイスおよび第三者評価委員会からの助言・指摘を受けつつ、事業を推進する。 2019年2月8日に外部委員会(専門家委員会・第三者評価委員会)を開催し、外部委員に事業の進捗および成果を報告し、本事業の成果の最大化および補助期間終了後の事業の発展的継続に向けて有益なアドバイスをいただくことができた。高校での探究学習の円滑な推進を支援する活動、入学前教育の見直し、一般入試比率の高まりに対する対応、多面的な学修成果の把握と分析ノウハウの確立などに関して具体的なアドバイスをいただき、今後のAP事業の発展的展開に向けて示唆を得た。
外部委員(専門家委員・第三者評価委員)との意見交換を通じて、入学者像の変化に伴った教育プログラムの見直しの必要性に関して学内の問題意識が高まった。また、外部委員の助言により、アクティブ・ラーニングによる学習経験を持つ学生と持たない学生、留学後の学生など、学生の多様なバックグラウンドに応じた教育プログラムの開発、および学習支援の在り方の検討を加速することにつながった。