2016年度 報告

2016年度 事業実績および成果

授業内スタッツデータの測定スタッフの養成、パソコンによる測定、分析、結果の出力という一連のフローおよび「学習者行動改善シート」の運用フローを確立し、教育支援センターを中心に安定的に実施できるようになった。また、FD研修会において、授業内スタッツデータの分析結果を記した「フィードバックシート」の見方や活用例について研修を行い、アンケート形式で授業改善アイデアを収集し、全専任教員に共有した。さらに、担当教員が「フィードバックシート」および「学習者行動改善シート」をもとに学部長からコンサルテーションを受けることで、授業改善のポイントが明確になり、改善の着実な実施を担保する体制を確立できた。

アクティブラーニングサポートツール(wivia、クリッカー)の運用を継続し、ツールを活用した授業設計・進行のノウハウを収集した。また、クリッカーを用いた授業を受講した学生に対してアンケート調査を実施し、クリッカーを用いた授業において学生の興味が深まり、授業内容の理解が進む効果が確認できた。また、無線対応プレゼン資料集積投影機器の導入により発表等の円滑化が図られるようになり、教員のフィードバックが充実し、学生の深い学びにつながることが確認された。さらに、アクティブラーニングサポートツールを配備した実験教室で講義を実施した担当教員からの意見を蓄積し、学生の学びを深める次世代のアクティブ・ラーニング型教室の検討が深まった。

事前・事後課題を含む授業外学習の詳細をシラバスに明記する点、授業外学習の成績評価の割合を20%以上とする点の定着が進み、授業外学習の実質化を推進することができた。また、事前・事後課題を含めたシラバスの記載内容の組織的なチェック体制が確立された。

前年度に開発した学生の授業外の学習時間、リーディング量、ライティング量の調査方法を用いて全学的調査を実施し、調査結果が担当教員にフィードバックされ、学生の学習実態に即した授業改善が促進されるようになった。シラバスに授業外学習(事前・事後課題を含む)の詳細が明記されるようになり、必要な授業外学習時間を把握し、学生がより詳細に学習計画を立てることができるようになった。また、授業外学習の成果が成績評価において一定割合考慮されることが学生の間に浸透し、学生の授業外学習に対する意識が向上し、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びが促進されるようになった。

学生の学習行動の把握に寄与するデータ(必修科目の出席状況など)の収集からアーカイブまで、一連の運用フローは確立しつつある。また、アーカイブした学習行動データをもとにアカデミックアドバイザーが学生と面談を行い、学習計画等についてアドバイスを行い、その結果をラーニングポートフォリオに反映する運用も定着しつつある。過去の履修状況や授業出席の状況、単位取得数、提出した課題レポートの内容、アカデミックアドバイザーとの面談記録等がすべてオンライン上にアーカイブされるようになったことにより、学生は大学キャンパス・自宅の区別なく適宜、学習計画の見直しができるようになった。本年度、LMS(Learning Management System)の自宅での利用が、大学キャンパス内での利用を上回り、自宅での主体的な学習が促進されている様子が確認できた。

1,2,3年生にPROGテストの受験を義務づける取組み(1年生は自主事業、2,3年生は補助事業として実施)を継続した。学生は、経年でのPROG結果の分析により自身の技能・態度の変化を客観的に把握し、今後の学習・活動計画に活かせるようになった。また、PROG結果をアカデミックアドバイザーとの面談資料の1つとしたことで、PROGテストおよびジェネリックスキルに関する学生・教員双方の理解が進んだ。

本年度の取り組みにより、中間評価に向けて着実に事業を推進していく仕組み、体制が確立し、ノウハウの蓄積が進んだ。
実施計画 事業実績および成果
(1)スタッツデータの測定・分析を行い、分析結果に基づいて教員に対してコンサルテーションを実施する。 年間80科目を対象に授業内スタッツデータの測定を行った。測定スタッフの養成、パソコンによる測定、分析、結果の出力という一連のフローが確立し、安定的に実施できるようになった。また、測定前に担当教員が授業計画と授業進行上の工夫等を記入し、測定後に測定結果について自己評価を記入する「学習者行動改善シート」の運用フローも確立し、教育支援センターを中心に安定的に実施できるようになった。
「スタッツ活用と学習行動改善」と題したFD研修会において、授業内スタッツデータの分析結果を記した「フィードバックシート」の見方や活用例について研修を行った。また、アンケート形式で授業改善アイデアを収集し、後日、全専任教員に共有した。これにより、教員のスタッツデータを活用した授業改善に関する理解が進んだ。
「フィードバックシート」および「学習者行動改善シート」をもとに、担当教員は学部長と面談を行い、コンサルテーションを受けた。担当教員がスタッツデータによって発見された課題および改善案を提示し、学部長からフィードバックを受けることで、授業改善のポイントが明確になり、改善の着実な実施を担保する体制が確立された。フィードバックシートが担当教員に示され、学習者行動改善シートによって授業プログラムおよび授業進行上の改善点が明らかになり、また、学部長によるコンサルテーションにより授業改善アイデアが具体化されたことにより、授業改善を着実に進め、学生の深い学びを伴った教育の実現を加速することができた。
(2)科目内容の違いによるAL型教室の適性に関する検証を実施する。 AL型実験教室での授業実績を積み重ね、授業後に教員および学生に対してアンケートまたはヒアリングを実施した結果、AL型教室に関する要望を把握することができた。これにより次年度以降、科目内容や教員の特性に応じた適切な教室環境・設備備品を検討する材料が揃った。
科目特性に応じたAL型教室およびALツールの検討過程において授業改善アイデアが創出され、より深い学びを導く教育の実現に向けて検討が具体化した。
(3)大教室におけるALサポートツールを用いた授業設計・進行についてのノウハウを蓄積する。 アクティブラーニングサポートツール(無線対応プレゼン資料集積投影機器wivia、クリッカー)の運用を継続し、アクティブラーニングサポートツールを配備した実験教室を使用した専任教員全員にアンケート調査を行い、ツールを活用した授業設計・進行のノウハウを収集した。
クリッカーを用いた授業を受講した学生に対してアンケート調査を実施し、「授業内容の理解が進んだ」「他者の解答傾向が分かり興味をもてた」などの効果が確認できた。また、クリッカーを活用した学生の理解度を確認しながら進める授業を拡大していくため、クリッカーに加えて、類似する機能を持つスマートフォン用アプリ(Clica, respon)もテストした。準備負担、機動的な活用等の観点から両者を比較検討し、ALサポートツール導入を加速するための知見を蓄えた。
クリッカーを用いた授業において、学生の興味が深まり、授業内容の理解が進む効果が確認できた。また、無線対応プレゼン資料集積投影機器の導入により発表等の円滑化が図られるようになり、教員のフィードバックが充実し、学生の深い学びにつながることが確認された。さらに、アクティブラーニングサポートツールを配備した実験教室で講義を実施した担当教員からの意見を蓄積し、学生の学びを深める次世代のアクティブ・ラーニング型教室の検討が深まった。
(4)高次のPBLのスタートアップ支援を実施する。 PBLのスタートアップにおける教員負担を軽減するため、PBLの協力先(企業・団体・地域等)との協定締結の手続やPBL実施上の注意点などをまとめた「教員向けPBL実施ガイド」の作成を進めた。また、学生向けにPBL実施における倫理上の注意点などをまとめた「学生向けPBL実施ガイド」の作成にも着手し、他大学の事例調査を行い、必要な項目等の検討を進めた。さらに、PBL授業を受講した学生にヒアリング調査を行い、PBLを通じた知識活用力の向上などについて教育効果の検証を行った。
「教員向けPBL実施ガイド」の作成が進み、協力先との協定締結の手続および書面、フィールド調査や販売実習等における留意点等が整理されたことにより、PBLの円滑なスタートアップが可能となった。また、「学生向けPBL実施ガイド」の作成も進み、学生がPBLに取り組む際に注意すべき点などが明らかになり、学生の知識活用力向上の機会を安全かつ機動的に提供する体制の整備が進んだ。
(5)事前・事後学習の内容に関するチェックの組織的運用を確立する。 事前・事後課題を含む授業外学習の詳細をシラバスに明記する点、授業外学習の成績評価の割合を20%以上とする点の定着が進み、授業外学習の実質化を推進することができた。また、事前・事後学習を含めたシラバスの記載内容を、設定したチェック項目に沿って教学委員会委員が確認し(一次点検)、副学長・学部長・学科主任が授業プログラムがカリキュラムポリシーに適合しているか等の確認を行い(二次点検)、不備があれば担当教員に修正を依頼する組織的なチェック体制が確立された。
シラバスに授業外学習(事前・事後課題を含む)の詳細が明記されるようになり、必要な授業外学習時間を把握し、学生がより詳細に学習計画を立てることができるようになった。また、授業外学習の成果が成績評価において一定割合考慮されることが学生の間に浸透し、学生の授業外学習に対する意識が向上し、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びが促進されるようになった。
(6)検討した授業撮影方式に沿って授業撮影を実施し、従来の授業参観との違いを検証し、新たな授業改善点を発見する。 前年度までに蓄積した授業撮影ノウハウ(最適なカメラ位置や撮影範囲など)に基づいて、のべ35科目の授業撮影を実施した。スタッツデータの測定と授業撮影を同時に実施し、スタッツデータから特色ある授業を抽出し、その様子を撮影した映像を用いて、次年度、FD研修会で実際の授業風景を見ながら、授業進行上のポイントなどを検討する準備を整えた。
スタッツデータと授業撮影の組み合わせにより、教員の教育方法のみならず、学生の受講態度やグループワークの進め方など、多角的視点から授業の改善点を発見することができるようになった。次年度、FD研修会で実際の授業風景を確認しながら、具体的に授業改善アイデアを検討する準備が整い、学生の学びを深めるための教育改善を組織的に加速する体制が整備された。
(7)リーディング・ライティング量の全学的管理を試行する。 前年度に開発した学生の授業外の学習時間、リーディング量、ライティング量の調査方法を用いて、全専任教員1科目以上を対象として全学的調査を実施した。FD研修会において、調査目的や調査方法、調査結果の活用について詳細な説明があり、本調査に関する教員の理解が進んだ。
調査結果が担当教員にフィードバックされ、学生の学習実態に即した授業改善が促進されるようになった。また、フィードバックシートは半期に一度行われる学部長面談の際のコンサルテーション資料としても活用され、組織的に授業改善を推進する体制を整備することができた。
学生の授業外の学習時間・リーディング量・ライティング量が可視化できるようになり、担当教員が想定していた学習時間・量との差異を把握することができるようになった。これにより学生の学習実態に即した授業外課題等を設計することができるようになり、授業内外の一体的な学習を通じた深い学びが促進されるようになった 。
(8)学習支援センターの認知度向上、学習支援サービスの充実強化を図る。 学内電子掲示板、ポータルサイト、各種ガイダンス、チラシおよびポスターなどで、学習支援センターの案内を行い、認知度向上を図った。アンケート調査の結果、両学部とも昨年度に比べて認知度が向上していることが確認できた。また、各キャンパスにて資格取得支援、語学学習支援、基礎学力養成講座等を実施した。さらに、自由が丘キャンパス6号館4階ラーニングコモンズに個別学習サポートコーナーを設置し、学習支援の充実強化を図った。
学生は、学習支援センター主催の課外講座により、不足している知識・スキルを集中的に補う機会を得た。特に、大学での学びやビジネス実務で最低限必要となる計算力、文書作成力、英文法の基礎知識については、「個別学習サポート」を実施し、学生に各自の事情に沿ったよりきめ細かな学習支援を受ける機会を提供することができた。さらに、外国人講師による少人数グループ制の英会話レッスンは、正課科目ではトレーニング機会が限られている発音などの強化に寄与し、学生から高い満足度を得た。
(9)出欠等の学習行動データの測定、ラーニングポートフォリオの運用を推進する。 学生の学習行動の把握に寄与するデータ(必修科目の出席状況など)の収集からアーカイブまで、一連の運用フローは確立しつつある。また、アーカイブした学習行動データをもとにアカデミックアドバイザーが学生と面談を行い、学習計画等についてアドバイスを行い、その結果をラーニングポートフォリオに反映する運用も定着しつつある。
過去の履修状況や授業出席の状況、単位取得数、提出した課題レポートの内容、アカデミックアドバイザーとの面談記録等がすべてオンライン上にアーカイブされるようになったことにより、学生は大学キャンパス・自宅の区別なく適宜、学習計画の見直しができるようになった。本年度、manabaの自宅での利用が、大学キャンパス内での利用を上回り、自宅での主体的な学習が促進されている様子が把握できた。
(10)ラーニングコモンズにおける学習環境の向上施策を検討する。 設置した設備機器の活用マニュアルを作成し、ラーニングコモンズの学習環境を活かした学習を促進した。また、教職員による定期的な利用状況の把握により、時間帯による活用方法の違い等が明らかになり、今後のさらなる学習環境の向上施策を検討する上で有効な知見を得ることができた。
ラーニングコモンズが授業外における学生の学習スペースとして学生の間で認知が進み、これまで以上に多様な学生や学習場面に活用されるようになり、学生の授業外における学びの促進に寄与した。また、レイアウト変更が容易で、設備機器も充実しているラーニングコモンズの学習環境を活かしてグループで学習会を行う様子も見受けられるようになり、学生の主体的学習の促進につながっていることが確認できた。
(11)学習サポートスタッフによる学習支援を推進する。 学習サポートにおいて、学生による学生のための学習支援という新たな支援軸を設定し、昨年度立ち上げた「学びのピアサポート Shares(Sanno hearty experts in active-learning resources)」が、ラーニングコモンズに資格取得相談コーナーを開設したり、「レポートの書き方講座」を開催したりするなどの活動を活発に行った。
新入生向け相談コーナーの開設、資格取得支援講座や就職活動応援講座の開講など、学生のニーズに応える多様な活動により、学生は自身の学習進度や課題に応じて知識・スキルを補うことができた。
(12)2、3年生を対象にPROGテストを実施する。 1、2、3年生にPROGテストの受験を義務づける取組み(1年生は自主事業、2、3年生は補助事業として実施)を継続した。また、学生が、いつでも過去のPROG結果を振り返り、最新の結果と比較して自己成長を実感したり、残された課題を発見したりして、今後の学習・活動計画に活かせるように、PROG結果のアーカイブを検討し、次年度の実現に向けて準備を整えた。
学生は、経年でのPROG結果の分析により自身の技能・態度の変化を客観的に把握し、今後の学習・活動計画に活かせるようになった。また、PROG結果をアカデミックアドバイザーとの面談資料の1つとしたことで、PROGテストおよびジェネリックスキルに関する学生・教員双方の理解が進んだ
(13)卒業生に対してアンケート調査を実施し、学修成果を検証する。 卒業生104名に対して調査を行った。その結果、マーケティング、リサーチ等の専門教育科目、少人数形式のゼミや卒業研究、資格取得支援科目、PCスキル等の実務教育科目については現在の仕事に役立っているとの回答が多くみられる一方で、語学科目については評価が高くないことが分かった。
卒業生が大学での学習における成果を実感している科目とそうでない科目が明らかになったことにより、教育の質保証に向けた課題が明確になり、今後の教育改善の方向性が定まった。
(14)学生の主な就職先に対してヒアリング調査を実施し、本学学生の評価を問う。 卒業生の就職先22社に対して調査票をもとに聞き取り調査を行い、卒業生が本学で培った学修成果や特性がどの程度就職先で発揮されているかについて検証を行った。その結果、本学の卒業生は、仕事を確実にこなすことで成長して行くとの評価を得ている一方で、将来の幹部候補としてのリーダーシップ・問題解決力に欠ける点があることが分かった。
本学卒業生に対する就職先企業からの評価が学内で共有されたことにより、卒業時の到達目標などについての議論が喚起され、教育の質保証に向けた具体的な検討が加速した。
(15)専門家委員会からのアドバイスおよび第三者評価委員会からの助言・指導を受けつつ、本補助事業を推進する。 本年度は2回、外部委員会(専門家委員会・第三者評価委員会)を開催し、外部委員に事業の進捗および成果を報告し、定量調査に加えて学生ヒアリングなどの定性調査を組み合せることなど、本事業の成果の最大化に向けて的確なアドバイスをいただくことができた。
外部委員(専門家委員・第三者評価委員)からのアドバイスにしたがって、すぐに学生ヒアリングなどを実施した。これにより、より深い学びを伴った学習を促進し、本補助事業の成果を最大化する方向性について示唆を得ることができた。