進路コラム「新高校3年生に効果的な、春の時期の進路指導」

2025.02.14
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進路コラム「新高校3年生に効果的な、春の時期の進路指導」

第6回 <2024年度連載>

 2、3月。一般選抜に挑戦する受験生達の結果を待ちつつ、2年生のための指導に注力される時期ですね。特に学校推薦型や総合型での入試は時期も早いし、そろそろ受験生モードになってほしい。とは言え、本人達にその意識はまだ薄い……などとお困りの先生は多いようです。


 様々な大学を自校に招いての学校説明会がこの時期に多く開催されるのもきっと、先生方のそんな想いからでしょう。大学側も春休みにオープンキャンパスを行うなど、様々な取り組みをされています。こうした機会を上手く活用し、生徒の意識を変えたいところです。


 ただ様々なところで高校生や先生方のお話を聞くと、せっかくの機会を活かせていない生徒も少なくない様子。これではもったいないですよね。この時期の指導には、いくつかポイントがあります。

【「何を確認するための場なのか」を事前に考えさせる】

 学校説明会では、参加希望の大学を事前に提出させるケースも多いようですが、駅伝やスポーツで有名な大学だから、家から近いから、指定校推薦があるから……なんて選び方をしているケースも。肝心の学校説明も、受け身の姿勢で漫然と大学スタッフの話を聞いているだけでは、得られる気づきは限られます。


 「今日の行事で自分が確認したい点は何なのか」を事前に意識し、整理した上で臨むことが大切です。例として、3つの検証ポイントをご紹介します。


①【学問理解】本当に学びたい学問か?
(例)経営学とはどんな学問なのか。自分が想像するカリキュラムと乖離していないか。どのような力が付くのか。
(専門職養成系学部では「どのような仕事なのか」も)

②【学校理解】この大学と、他大学の違いは何か?
(例)A大学の経営学科とB大学の経営学科にはどんな違いがあるのか。特色のある授業やプログラムはあるのか。就職率や卒業率などはどう違うのか。

③【自己理解】私はそこで学び、どうなりたいのか?
(例)将来、どのような「私」になりたいのか。そのために、この進学先でどのような日々を過ごしたいのか。

 こうした確認点を準備せずに行事に参加しても、「学食がキレイだった」「キャンパスが広かった」などの表面的な印象だけを持ち帰ることになりかねません。特に①が曖昧なままだと、学部・学科選びでミスマッチを起こし、進学後に後悔することもあります。

 「今日は絶対に○○を確認するぞ!」という心構えを持って参加させることが大事。可能なら事前指導の時間を取り、ワークシート等を使って上記3点それぞれの疑問点を書き出させましょう。


【複数の選択肢を比較検討させる】

 上記①と②で大事なのが、比較検討です。1校の話だけを聞いて、ここが第一志望だと簡単に決めてしまう生徒はいませんか。複数の選択肢をリサーチし、その違いを考えさせないと、本当に自分に合っているかどうかはわかりません。


 特に総合型や学校推薦型の選抜では、志望理由が大事。同じ学部を持つ他大学ではなく、なぜ本学なのかと大学は問うてきます。合否にも関わる重要なリサーチポイントですね。


 都心と郊外、大規模総合大学と中小規模の単科大学、研究重視と実学重視……など、条件が対照的な大学を意識的にリサーチすると、自分に合う、合わないを判断しやすいです。


【できれば複数回、リサーチさせる】 

 大学側は時期やタイミングに合わせ、受験生に伝える内容の重心を変えています。たとえば学校説明会は「こんなことを学べる大学があります」という概要が中心。高校側も短時間で複数の選択肢に触れることを重視しますので、話せる内容はどうしても限られます。
 それに対してオープンキャンパスは、深く詳細な情報を得られる場。実際の教室なども巡りながら、大学の特色、教育上のウリ、学生の様子などについて様々な話を聞けます。春のオープンキャンパスは、夏に比べれば参加者も少なめで、大学側も個別の質問・相談に対応しやすい(大学からすれば、早くから自校を見に来てくれる受験生は大歓迎したい相手です)。少人数を対象にした授業体験などが行われることもあります。
 総合型選抜の場合、高校3年生の夏明けには様々な出願書類を用意する必要がありますが、そうなると3年生の夏からリサーチを始めるのは、スケジュール的にやや不安。部活動の引退が長引いた場合、十分なリサーチが行えぬまま入試に突入することもあります。そうした点でも春のオープンキャンパスは、実は極めて重要なのです。
 夏が近づくにつれ、大学は具体的な入試に関する情報発信に力を入れていきます。特殊な総合型選抜を行う大学は、4〜7月頃に志願者向けのプログラムを実施することも。こうした年間スケジュールを早めにチェックし、効果的にリサーチをするよう、今のうちから生徒の皆さまにお伝えいただければと思います。
 大学側は入試を通じて「この受験生は本学でちゃんと伸びるのか」を確認しています。早期から進路について考えさせる指導は、そのまま受験対策にも繋がっています。ぜひ春の様々な機会を、効果的な指導に生かしていただければと思います。
倉部 史記
進路指導アドバイザー。北海道から沖縄まで全国200校の高校で生徒・保護者向けの進路講演を実施。各都道府県の進路指導協議会にて、高校の進路指導担当教員に対する研修も行う。多くの大学で入試設計や中退予防、高大接続についての取り組みを手がける。三重県立看護大学高大接続事業・外部評価委員、文部科学省「大学教育再生加速プログラム(入試改革・高大接続)」ペーパーレフェリーなど、公的実績も多数。
日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。著書に『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/