高校の先生向け 進路コラム 第5回 <2024年度連載>

高校の先生にお勧めしたい、大学教職員との繋がりづくり

【地域の大学教員や大学職員に、相談できる知り合いはいますか?】

高校の先生方に質問です。大学教員、または大学職員に、お知り合いはいますか?

 進路指導部でのお仕事を経験された方であれば、おそらく多くの大学教職員から名刺を渡されたことがおありでしょう。これまで大学からの高校訪問や出張説明会のようなイベントなど、様々なところで挨拶を受ける機会があったかと思います。学年主任の先生もこれに近いでしょうか。

 こうした場では、高校と大学はお客様と営業担当者のような関係になりがちですね。少子化が進む中、多くの大学にとって学生獲得は経営上の重要ミッション。生徒を送り出す側である高校の先生方にはそれなりに気を遣っていると思うのです(そうでない方も中にはいると思いますが)。

 一方で、生徒の探究学習に大学教員のサポートを依頼する際など、高校側がお世話になることもあるでしょう。あるいは「ぜひウチの生徒をこの大学に合格させたい」と思うような相手の場合、高校側が気を遣うこともあるのかなと想像します。ともあれ、高校で行われる様々な教育活動の中で、大学教職員との接点は生まれますね。

 私も多くの高校教員の皆様とお付き合いをさせていただいておりますが、「大学関係者との関わり方」という観点で、先生方には大きく二つのタイプがあるように思います。

 ①職責上の必要な範囲でのみ、大学教職員と関わる方
 ②肩書や立場とは関係なく、ネットワークを構築される方

 おそらくほとんどの先生は①でしょう。進路指導を担当されている間は大学関係者と接点を持つが、そうでなければ基本的にはあまり関わらない。そもそも職務上の理由がなければ、接点が生まれることもそうありませんよね。それが普通だと思います。

 一方で、②のタイプの先生もいます。たとえば、進路指導部でもないのに顔見知りの大学関係者が何人もいて、facebookなどのSNSで日常的に情報交換をしている。違う学校へ異動になってもその関係性が継続されている。そんな方です。

 それでなくても多忙なのに、必要以上のお付き合いなんかできないよ……というご意見はもっともです。ただ②のタイプには、大学教職員の力を借りることで、結果的にご自身や高校の負担を減らせている方もいるようですよ。

立場の違いを越え、教育者同士で相談し合える繋がりは、先生にとっての財産に】

たとえば進路指導。生徒の興味関心や職業、学問が多様化する中で、高校の先生がそのすべてをガイドするのは大変です(私でもそんなの無理です)。専門分野の詳しい中味は、その領域に詳しい方に語ってもらった方が、生徒達にとっては良い。このあたり、校内ガイダンスをコーディネートしてくれる業者さんを頼りにされるのももちろん良いのですが、絶対に実現させたい企画があるなら、繋がりのある大学の方に直接、ピンポイントで相談してみるのもアリなのです。

 「医療系を志望する生徒が増えてきたから、放課後に医療系のミニガイダンスを企画してみようかな」と思いつき、自分の知り合いの大学教職員に声をかけてさっそく実現した……なんて声はしばしば聞きます。探究学習でも、こんなケースはよく耳にしますね。

 「大学と短大で迷っている生徒がいるんだけど、その違いをウチで説明してもらうことってできるかな?」
 「そちらの奨学金制度について、職員さんに質問したいのだけど」
 「アクティブラーニングの研修ができる先生をぜひ紹介してほしい!」

 ……などと、困ったときに質問や相談ができるような間柄の大学関係者が地域に何人もいると、それは先生にとって生涯の財産になります。

 進路指導部の先生だけが、こうした繋がりを持てるというわけでもありません。ぶっちゃけて申しますと、立場や肩書に限らず、お互いに教育方針に共感し合えるような先生と繋がりを持ちたい、と考えている大学は少なくないのです。

 たとえば、高校教員向けの勉強会やセミナーを積極的に開催している大学があります。産業能率大学もそのひとつですね。広くオープンに参加者を募っている企画も少なくありません。

■「2024年度教員対象プログラム日程」

 現場で奮闘されている先生方の助けになりたい……という想いで、こうしたイベントは開催されていると思います。こうした取り組みに自ら参加される先生は、教育に対して意欲のある方。大学からすれば、損得抜きに教育者同士として、生徒や学生のためにできることを一緒に考えたいと思える相手でもあります。

 先生方が興味を持たれるイベントもきっとありますので、身近な大学がこうした取り組みを行っていたら、気軽に参加されてみてはいかがでしょう。高校訪問で名刺交換するのとは、また違った繋がりが生まれます。所属する高校や部署が変わっても、こうした場で生まれた関係性はなくなりません。

 膝つき合わせて、生徒・学生の成長をホンネで語り合う。そんな繋がりがつくれたら、それは最終的に、生徒さん達のためにもなると思うのです。
倉部 史記
進路指導アドバイザー。北海道から沖縄まで全国200校の高校で生徒・保護者向けの進路講演を実施。各都道府県の進路指導協議会にて、高校の進路指導担当教員に対する研修も行う。多くの大学で入試設計や中退予防、高大接続についての取り組みを手がける。三重県立看護大学高大接続事業・外部評価委員、文部科学省「大学教育再生加速プログラム(入試改革・高大接続)」ペーパーレフェリーなど、公的実績も多数。
日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。著書に『大学入試改革対応! ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/