高校の先生向け 進路コラム 第3回 <2023年度連載>

第3回 生徒の大半が年内入試で進学、という高校へのアドバイス

【「早く合格を得たいから」と安易に考える例も……】

進路講演で高校へ伺った際、先生方と様々な話をします。可能な範囲で生徒さんの状況を伺うのですが、「どのような入試種別で受験する方が多いか」というのも、よくさせていただく質問です。

「うちは恥ずかしながらほとんどが年内入試で」
「一般選抜はほとんどいません」

……と仰る高校も少なくありません。その際、多くの先生が、ちょっと残念そうな表情をされます。

 例えば、先生方から見て本来ならまだまだ基礎学力を伸ばせるであろう生徒が、早めに受かって安心したい、確実に合格を確保したいといった理由で早々に受験勉強を切り上げてしまう。あるいは「指定校推薦のリストを見せてください。そこから進学先候補を探したいので」などと安易に進路を決めようとしている生徒がいる。そんなケースに幾度となく出会っていれば、そりゃあ先生も悩まれることでしょう。

 それに国公立大学の入試も変わりつつありますが、年内入試に力を入れているのはやはり私大です。もともと国公立を含めて進路を検討していた生徒が、「年内に決めたいので私立で良いです」なんて言い出せば、そんな決め方で良いのかと心配にもなりますよね。

 私自身は国公立大の方が私大より「上」とは思いませんし、どのような入試であろうと本人が成長できるなら良いと思っています。でもその観点から見ても、上述したようなケースはやはり心配です。大学は、勉強したくない人のために総合型選抜や学校推薦型選抜を行っているわけではありませんし、「私立大学で良いや」なんて考えで志望するのはその大学や他の受験生にも失礼というもの。何より安易な受験は望まぬ留年や中退など、本人にとっても良くない結果を引き起こすことになります。

 「とにかくどこかに受かること」が勉強のゴールなのであれば、指定校推薦をはじめとする年内入試は最も手堅く、便利な制度ということにもなるでしょう。でも「高校と大学を合わせた7年間の成長を最大化する」ということが目的なら、ミスマッチをなくすための工夫が必要になってきます。

【進学後のデータも使いながら、本人の成長を第一にした指導を】

年内入試で早くに合格を確保したいというのは、実は保護者の希望であることも多いですね。特にその地域で名が知られる総合大学や伝統校には「まぁ、ここなら悪いようにはならないだろう」と信頼を寄せる方もいる。でも実際には、この選び方が最も心配です。

 「○○の研究をするためにこの学部に行きたい!」「この大学の○○プロジェクトに関わりたい!」などと明確に志望動機を答えられるような生徒なら心配は要らないと思いますが、中には経済学部と経営学部の違いもあやふやな状態で学校推薦型選抜に臨むような例も。昔ながらの法学部や経済学部は保護者世代にも馴染みがあり、「つぶしがきく」というイメージから何となく信頼されがちで、指定校推薦での進学先として関心を寄せるご家庭も多いようですね。でも進学後に本人が学習意欲を持てず、ミスマッチを起こして中退するケースも、こうした学部で目立っています。

 こうしたご家庭にぜひ伝えていただきたいのは、進学後のリアルなデータ。大学がPRする「就職率100%!」のような数字からは見えない実態もあります。就職なら「卒業生○人、うち就職希望者○人、正規雇用○人」のような実数の方が信頼できます。中退率や留年率なども、問い合わせれば多くの大学は真摯に回答してくれるはず。「どういう学生が失敗しがちか」なんて理由を確認しておくと、三者面談などでも共有しやすいです。

 少し前のデータになってしまいますが、読売新聞教育ネットワーク事務局『大学の実力2019』には、全国の大学・学部の中退率や留年率、正規雇用率などの重要データが掲載されています。入試種別ごとの中退率なんて踏み込んだデータも。

 「A大学経済学部は、指定校推薦進学者の中退率が3割以上と高い。もともとのご本人の第一志望校であるB大学の方がこの点ではお勧めです。まずはこちらを目指して頑張ってみませんか」
 「○学部は保護者の支持が高いのですが、実は中退や留年も多くて……安易な進学動機ならお勧めしません。本人が本気で4年間、学びたいかどうかが問われますよ」

……なんて形で指導に活用できます。

 総合型選抜や学校推薦型選抜は本来、進学後に周りに良い刺激を与えてくれるエース候補生を迎えるためのもの。しかし実際にはここでご紹介したように、気をつけないとミスマッチを生み出してしまう可能性もあります。保護者は現在の大学入試事情や、大学教育の変化に詳しくないことも多い。進路指導に関わる先生方が担う役割は極めて大きいのです。ご不明な点、不安な点があったら、先生から大学に問い合わせてみるのも大いにアリです。高大で協力しながら、本人にとって後悔のない進学になるよう、サポートしていただければと思います。
倉部 史記
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)https://kurabeshiki.com/