共通テスト「数学IA」の夏からの受験対策とは!?

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共通テスト「数学IA」の夏からの受験対策とは!?

数学ⅠAの対策ポイントを徹底分析!
夏休み明けには“大学入学共通テスト”の受験案内が配布され、いよいよ受験目前の緊張感がわいてくるかもしれません。
受験生の皆さん、共通テストに向けての対策はきちんとできていますか?
今回は、予備校講師、そして中学校・高等学校の数学科教諭として、長年数学の授業を行ってきたプロ講師に「共通テスト“数学IA"の夏からの受験対策」についてお伺いしました。
数学ⅠAで着実に点数を取るために、押さえておきたいポイントとは?

共通テスト対策、何から始める?

ほとんどの受験生は、志望校が国公立か私立かに関わらず出願すると思いますが、共通テストに向けての対策となると随分と個人差があるように思います。
・共通テストは教科書レベルの基本問題だから対策はあまり必要ではない
・夏休みからは志望校の赤本(過去問)対策が重要
・志望校は難関大だから2次試験(大学個別試験)のために記述対策が必要
等々、共通テスト対策はさほど意識されていないのではないでしょうか?
ただ、今年の共通テスト(2022年1月実施)で、数学ⅠAの平均点が38点(正確には37.96点)という結果を見て、“共通テストは易しい”というイメージが吹っ飛んだかもしれません。
私は、「数学の受験対策は“共通テスト対策”を軸にすること」をお勧めします。共通テストの問題は、「教科書レベルの基礎基本」で「すべての単元から偏りなく」、「単元ごとの問題」として出題されるので、その対策をすることで、基礎基本の定着度をチェックできるからです。大学の個別試験も「教科書内容の知識で解ける問題」を出題します。数学の受験対策としてまず求められるのは、過去問対策ではなく基礎基本の定着度のチェックです。
【注意】“教科書レベルの基礎基本”と書くと“易しい”というイメージになるかも知れませんが、決してそうではありません。この“基礎基本”という表現はよく用いられ、皆さんも“基礎が大切だ”などと言われた経験があると思います。しかし、あらためて“基礎基本とは何か?”と問われてみると意外と明確な返答ができないのではないでしょうか。話し手も聞き手も、わかっているようで実は結構曖昧に使われているのが“基礎基本”という表現です。“基礎基本とは何か”については、様々な考え方と説明の仕方がありますが、ここでは受験生向けに「教科書の章末問題・節末問題を解く力」としておきましょう。
以下、数学ⅠAの受験対策について述べますが、数学ⅡBについても同様と考えて下さい。

まずは、数学I・Aの基礎基本の定着度を調べよう!

まず教科書の章末問題を解いて、自分自身の基礎基本の定着度を診断しましょう。
数学Ⅰなら「数と式、集合と命題、2次関数、図形の計量、データの分析」の5章(5単元)、1つの章の問題は10問くらいですから、1日に1章としても一週間あれば数学Ⅰのおさらいができます。数学Aは「場合の数と確率、整数の性質、図形の性質(平面図形と空間図形に分けて2章分の場合もある)」の3~4章ですから、数学ⅠAの基礎チェックには2週間もあれば十分ですが、ただ単に解いて「できた、できなかった」を判断するだけではなく次の“振り返り”を大切にして下さい。
 <章末問題を解いた後の振り返り>
①自分は、何ができ何ができなかったか、
②この単元では、何ができるようになればよいか、
③そのためには、何を知って(理解して)いればよいか、
④できなかったことをできるようにするには何をすればよいか
①は、答合わせです。どの教科書も巻末に略解と答が載せてあります。②③は、章末問題を解いた後、章全体を振り返り、何を理解し何ができればよいかを自分なりにまとめることです。その際、なるべく“コンパクトに”まとめることです。つまり、あれもこれもではなく“これさえできれば”ということを考えて下さい。④は対策です。多くの人は、“類題演習”を頭に描くと思いますが、私は、章末問題で上手く解けなかったら「(対応する)節末問題→本文の例題→本文の解説」の順に“教科書をしっかりと理解する”ことを勧めます。量をこなす勉強より効果的だと考えています。

いよいよ共通テスト対策!押さえておきたいポイント

“共通テスト作成方針”は次のように述べられています。
<問題作成の方針>数学的な問題解決の過程を重視する。事象の数量等に着目して数学的な問題を見いだすこと、構想・見通しを立てること、目的に応じて数・式、図、表、グラフなどを活用し、一定の手順に従って数学的に処理すること、及び解決過程を振り返り、得られた結果を意味付けたり、活用したりすることなどを求める。
また、問題の作成に当たっては、日常の事象や、数学のよさを実感できる題材、教科書等では扱われていない数学の定理等を既知の知識等を活用しながら導くことのできるような題材等を含めて検討する。

数学が苦手な人の多くは、数学は公式を覚えて当てはめればよいと思い、ひたすら公式を覚えようとするが、それだけでは問題が解けないというケースが多いのではないでしょうか。
2019年までの大学入試センター試験は「数値穴埋めだから数学の力が測れない。記述部分を導入するべきである」との発想で共通テストへの移行が検討されたが、記述部分の採点方法の課題が解決せず、従来のマーク式だけになりました。しかし、センター試験も上記の作成方針と同様に、決して公式に数値を当てはめるだけの問題ではありませんでした。

時間内で解くための「処理能力」をきちんと身につけよう

共通テストは、上に述べられているように「知識・技能、論理力・思考力・判断力」に加え「読解力・要約力」も求めているので、“一つずつの問題文が長い”という特徴があり、決められた時間内で解くための「処理能力」が求められます。“処理能力”は、時間制限のある試験では常に求められてはいるが、数学的に書かれた長文を読み取るには経験が必要です。
したがって、過去問演習は欠かせません。まずは、1つの過去問を「時間を決めて(制限時間内で)」解いてみることです。
そして、答合わせと採点です。ここでも教科書チェックと同様に、単に「できた、できなかった」だけではなく、解答解説をしっかりと読んだ上で、次のように細かく振り返ることがもっとも大切です。
<問題解法後の振り返り>
1.解法に必要な知識
  □特に問題はなかった。
  □欠けていた・忘れていた・取り出せなかったものがあった。〔具体的に列挙〕
2.解法に必要な技能
 □特に問題はなかった。
 □以下の力が欠けていた
  □式を書く力(問題文を式で表す力)
  □図・表を書く力(問題文を図・表で表す力)
  □計算力(計算ミス)
  □計算力(スピード)
  □その他〔具体的に記入〕
3.解法に必要な数学的な見方・考え方
 □特に問題はなかった。
 □数学的な見方・考え方が十分ではなかった
  □問題文を読む力(題意を把握する力)
  □問題文を読む力(解法の流れ・論理展開の読解)
  □式を見る力
  □図・表を見る力
  □その他〔具体的に記入〕
4.今後の対策・学習計画〔具体的に記入〕
  “対策”としては、教科書チェックで述べたことの繰り返しになりますが、過去問の演習量を増やすことではなく、1つの問題を丁寧に振り返り、教科書を用いて、自分に欠けている知識・技能や数学的な見方・考え方を補う(磨く)ことです。

共通テストの過去問は、2年分(本試験と追試験・再試験を合わせて4回分)ありますが、2019年までのセンター試験を利用することもできます。
ただ、数学①の時間は、センター試験の60分が共通テストでは70分になったので、問題文の量や表現が変わっていますから、その違いも意識していてください。