プロが教える「進路づくり」 第10回

PROFILE
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)http://kurabeshiki.com/

第10回 イマドキの大学入試ってどんなもの? 大学が期待する要素とは

大学が知りたいのは、入学後の成長可能性

あなたがイメージする「理想の大学入試」とは、どのような条件を満たす入試でしょうか。これは高校教員に対して研修や講演を行う際に、私がよく行う質問です。参加者同士で議論していただくのですが、よく出される答えは「高校時代の勉強の努力や成果がちゃんと評価される入試」というものです。高校生や保護者の方にも、このような考えをお持ちの方は多いことでしょう。

大学関係者に同じ質問をすると、答えのニュアンスが少し違ってきます。多いのは「入学後の成長度を見抜けるような入試」という回答。高得点な受験生ほど進学後の成績が低い入試では、確かに選抜として不適切ですよね。大学側にとって大事なのは「ウチに入って伸びるかどうか」なのです。

人の成長とは多様な要素の上に成り立つもの。予備校の模試で同成績だった2人の受験生が、同じ大学・学部に進学したとしても、同じように伸びるとは限りません。だから各大学は受験生の潜在的な可能性を読み解くために入試問題を工夫したり、多様な入試方式を用意したりと、様々な試行錯誤を行っているわけです。

入試方式について言えば、多くの大学で一般入試に加え、AO入試や公募制推薦入試、指定校制推薦入試などが実施されています。AO入試とはエントリーシートや志望理由書、面接、グループディスカッションなどを通じて、学習者としての資質を総合的に評価する入試のこと。たとえば産業能率大学の場合、AO入試で入学した学生の中退率は、一般入試による入学者の半分程度(※1)ですので、入学後の学びにマッチする学生が多く受かっていることが伺えます。

最近では高大接続型入試といって、教授の講義を受講してその内容を元にレポートを書いたり、グループディスカッションに取り組んだりなど、実際の大学での授業や研究に近いプロセスを入試選抜に採り入れる大学も増えています。お茶の水女子大学の「新フンボルト入試」では、図書館を自由に使える環境で「人間と動物の関わりについて、自由に論じなさい」という課題が出ました(※2)。知識の有無だけではなく、それを応用する力を問うていることがわかります。産業能率大学でも、選考の過程にグループ討論や発表といったアクティブラーニングを採り入れた「AL入試」や、キャリア開発プログラムでの学びを経て、大学で学びたいことを深く問う「キャリア教育接続入試」などが実施されています。これらはまさに、大学進学後の成長可能性をダイレクトに測っているわけです。

志望校に対して、使えるチャンスを最大限に活用しよう

どのような入試方式で受験すべきかは、各ご家庭で悩まれるところでしょう。私からは以下2点を申し上げたいと思います。

第一に、入試方式ありきの出願先選びはオススメしません。早くどこかの大学に合格して安心したい、一般入試まで勉強するのはしんどい、といった理由で推薦入試やAO入試を選ぼうとする高校生をたまに見かけます。さらには推薦で狙える大学のリストをまず最初にチェックし、その中から聞いたことがある大学・学部を進学先として選ぼうとする方もいるようです。入試方式自体に罪はないのですが、このようなケースでは多くの場合「早く楽したい」という動機が根本にあるため、自分が何を学びたいのか深く考えずに進学先を決めたり、受かった途端に学習意欲をなくして遊びほうけてしまったりすることがしばしばです。これでは受かった後すぐに中退しかねません。

実際のところ、一般入試よりAO入試の方が受かりやすいとは限りません。また以前のコラムでも触れた通り、どの入試であれ、入学までにやっておくべき備えは同じ。志望校を決めた後、そこに行くための方法を選ぶ……という順番で入試に向き合うことをオススメします。

第二に、本気で学びに行きたい進学先があるのなら、使える機会はフル活用しましょう。全国の平均値で見ると、私立大学入学者のうち一般入試での合格者が占める比率は約48%(※3)に過ぎません。約11%をAO入試が、約41%をそれ以外の様々な推薦入試が占めています。「AO入試組は入学後の授業についていけず苦労するのでは」といった質問をたまにウェブ上などで見かけますが、上述の通りこれも事実とは異なります。ならばチャンスを敬遠する必要もありません。

「生徒会役員や部長などを務めたわけではないし、受賞歴などもない。普通の高校生である私にAO入試は無理だろう」などと考える方がいますが、別に心配する必要はありません。それよりも高校生活を振り返り、どんな気づきを得たかの方がずっと大事。これは高大接続型入試も同様です。自分には合わない、などと決めつけるのはもったいありません。

過去のコラムでも述べましたが、受かるために学ぶのではなく「学ぶために受かる」のが大学入試です。手段と目的を間違えさえしなければ大丈夫。その上で、自分の強みが発揮できる入試方式はどれなのかを、まずは柔軟に考えてみてください。

※1:読売新聞教育ネットワーク事務局『大学の実力2019』(中央公論新社)
※2:「平成30年度 新フンボルト入試 第2次選考(図書館入試)問題」(お茶の水女子大学)
http://www.ao.ocha.ac.jp/past_test/index.html
※3:「平成29年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(文部科学省)