プロが教える「進路づくり」 第5回

PROFILE
「高大共創」のアプローチで高校生の進路開発などに取り組む。日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会等で、進路に関する講演も多数努める。著書に『看板学部と看板倒れ学部 大学教育は玉石混合』(中公新書ラクレ)『文学部がなくなる日 誰も書かなかった大学の「いま」』(主婦の友新書)など。
(ウェブサイト)http://kurabeshiki.com/

第5回 保護者に知って欲しい、具体的な出願先検討に向けて大事なこと

第一志望校に比べて、併願校を適当に選んでいませんか?

高校3年生にとって、秋は一般入試に向けた準備を加速させる時期。ここまで来たら、もう第一志望校合格を目指してひたすら勉強に打ち込むだけ……と言いたいところですが、ちょっとお待ちください。併願校はどのようにお考えですか?

このコラムでは第一回目から「後悔しない進路選択」をテーマの一つにしています。この併願校のリサーチこそ、進学後の後悔を減らす重要なポイントなのです。

最近では一般入試で大学受験をする場合、5校程度に出願するケースが多いようです。最近では併願割引制度を持つ大学も増えていますから、もう少し多く検討される方もいるでしょう。仮に5校なら、よくある出願のパターンは、【チャレンジ校(第一志望群)】を2校程度、【実力相応校(第二志望群)】を2校程度、【安全校(第三志望群)】を1校程度といった振り分け方です。

しかし多くの場合、この5校のリサーチにかけた時間および労力は、均等ではありません。憧れの第一志望校については何度もオープンキャンパスへ足を運び、教職員や先輩学生の話を傾聴。大学案内やウェブサイトも熟読し、同じ入試難易度の他大学と丁寧に比較している。ところが【実力相応校】となると、「偏差値が第一志望校の次に高くて、通える範囲の、聞いたことがある大学から似た名称の学部を」などと、選び方が急に適当になってしまうケースが案外、多いようです。

保護者向けコラムですので、高校生には言いにくいことを申し上げます。憧れの第一志望校は、入試難易度の面では文字通り「チャレンジ」の位置づけ。高みを目指しているほど、当然ながら不合格になる可能性もあります。ズバリ言いますが、ご本人が入学する可能性が最も高いのはおそらく、【実力相応校】に挙げた大学です。滑り止めなどと軽視されがちな【安全校】に落ち着くケースも少なくありません。特に2018年春の一般入試では、「規定水準以上の学生数を入学させてはならない」という政策上の制限が厳格になった影響で、このようなケースが例年に比べ急増しました。ほぼリサーチしていなかった大学に入学した方も多かったと思われます。

高校3年生・秋の最終リサーチが、進学後の後悔を減らす

受験業界の用語に「MARCH」や「日東駒専」といったフレーズがありますが、併願校はこうした括りの中から選ぶという方も多いようです。でも日東駒専の4大学だって教育内容や学習環境はみな違いますし、こうした総合大学ではない単科大学や、より小規模な大学の方が合うという方も大勢います。こうした受験業界のフレーズに頼って安易に併願校を決めるのは、お勧めできません。

前回までのコラムでも述べた通り、仮に入意難易度が同じでも、各大学の教育の中味は千差万別。一般入試での進学をお考えなら、第三志望群である【安全校】まで手を抜かず、前回までのコラムの内容も参考にしていま一度、教育力を基準に吟味してみてください。それができる最後のチャンスが、高校3年生の秋なのです。

心配なのは、「第一志望校への勉強に集中させたい」といった意図で、第二志望以下の大学を本人の関心から外させるように周囲の大人が振る舞ってしまうパターン。受験生の秋ですから、一分でも長く勉強させたい気持ちもわかりますが、こうした「思いやり」はむしろ後のリスクを招きかねません。ここまでに併願校すべての比較検討を終えていればベストですが、そうでないなら少しだけでも時間をとり、最終チェックをされることをお勧めします。秋頃に高校生や保護者向けのイベントを行っている大学もありますし、各種のデータを比較する作業であればご自宅でも可能です。

ちなみに、受験生にとって一般入試のスケジュールで最も理想的なのは、【安全校】→【実力相応校】→【チャレンジ校】の順に試験日を迎えることだと言われています。最初の1校で合格を勝ち取れれば心に余裕ができ、落ち着いた気持ちで次の試験に臨めるため、実力を発揮しやすい……というのがその理由。その意味でも【安全校】は、「この大学なら良い教育を受けられる。仮に進学することになっても、自分の夢に繋がる!」と、確信を持って本人が選んだ1校でなければ意味がないのです。併願校も、偏差値や試験日程だけではなく、「入学しても後悔しないかどうか」を基準に選びましょう。

最後に、受験についてささやかなアドバイスを。大学受験はしょせん、将来の自己実現への通過点に過ぎません。「第一志望校でなければ夢は叶わない」と考えるのは、一見すると真摯で一途なようですが、キャリアデザインの観点ではやや脆さも感じさせます。この先の人生でも、予定通りにいかないことは多々あるでしょう。受験勉強の最中や受験終了後、もし本人が壁にぶつかることがあったら、「あなたは何のために大学に行くの?」と、保護者の方から問いかけてみてください。受験勉強中はどうしても、物事の見方がやや近視眼的になりがち。その目を少しだけ先に向けることで、今の努力の意味に気づけることもあると思います。