SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9 FEATURE「スポーツを魅せる」


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08「産業能率大学運動部サポートプログラム~リーダーシップ養成プログラム」構想案について「学生アスリートの学修支援やキャリア支援、人間的成長支援の充実化」など、大学運動部をめぐる一般的な課題を踏まえ、本学スポーツマネジメント研究所では、現在、「運動部サポートプログラム」を構想し、本学運動部員をサポートするための具体的なプログラムを検討中である。本稿では、こうしたサポートプログラムの1つとして構想中の「リーダーシップ養成プログラム」案について概略を紹介する。経営学部准教授齊藤弘通1.はじめに公益社団法人全国大学体育連合は、「大学(注1)スポーツ振興に関する全国大学体育連合の取り組み状況と課題」の中で、大学運動部を取り巻く現状の問題の1つとして、「ユニバーサル化による多様化、活動の低迷」を挙げ、学生アスリートの学修支援やキャリア支援、人間的成長支援の充実化が課題であるとし、学修支援プログラム、ライフスキルプログラム、リーダーシッププログラムなどの「デュアルキャリア支援プログラム」の開発の必要性を提言している。こうした流れを受け、本学スポーツマネジメント研究所では、「産業能率大学運動部サポートプログラム」を構想し、今後、図1のような各種プログラム群を整備・運用していくことを検討中である。筆者はこのうち、「大学運動部員としての教養プログラム」に位置づけられる「リーダーシップ養成プログラム」の企画・開発を担当している。本稿では、リーダーシップ研究の流れを概観しつつ、現在検討中である当該プログラムの概要を紹介する。図1:産業能率大学運動部サポートプログラム構想案2.リーダーシップ研究の類型リーダーシップ研究は社会心理学や、経営学の一領域である組織行動論(組織の中の人間の行動を研究対象とする)において長く検討されてきた歴史があり、リーダーシップの定義や概念は研究者の数に匹敵するほど存在するとされる(渕上,2009)など、19これまで膨大な数の研究蓄積がある。こうしたリーダーシップ研究を大まかに分類すると、リーダーシップを発揮する上で必要となる個人的な資質や特性、能力(例えば知能、責任感、決断力、熱意、勇気、誠実さ、自信など)を明らかにしようとする試み(資質論・特性論)や、リーダーの内面的な特性ではなく、効果的なリーダーシップを生むためにリーダーがとるべき行動に着目しようとする試み(行動論)、リーダーとフォロワーの関係性や課題の性質、リーダーに与えられている権限の強弱、リーダーが直面している問題状況など、リーダーを取り巻く状況によって最適なリーダー行動のあり方を検討しようとする試み(条件適合論)に区分される。他方、こうしたリーダーの持つ資質や行動特性等を研究対象とする方向性から、近年では「リーダーの資質や能力は適切なリーダーシップ経験を通じて培われるものである」という前提に立ち、リーダーシップを開発するための介入のあり方について検討しようとする「リーダーシップ開発研究」も注目を集めている。3.経験の付与と内省を通したリーダーシップ開発こうした「リーダーシップ開発」に係る研究の中に、主に企業組織に勤務するミドル・マネジャーやトップを対象に、彼らがリーダーシップに関わるどのような経験(イベント)から、どのような教訓(レッスン)を得ているのかを整理・分析したものなどがある(金井・古野,2001、金井,2002など)。そこではリーダーシップの開発に向けて、「成長を促す“一皮むける”経験」にどのようなものがあるのかが質的に調査され、例えば、「新規事業・新市場のゼロからの立ち上げ」、「悲惨な部門・業務の改善と再構築」など、「困難な課題に直面せざるを得なくなった経験」や「ラインからスタッフ部門・業務への配属」、「初めての管理職経験」など、「これまでとは異なる環境に身を置かなければならなかった経験」が挙げられている。こうした従業員の成長を促す経験に関して、松尾(2006)は熟達研究者のエリクソンらの知見を踏まえ、担保すべき経験の質として、①課題が適度に難しく、明確であること、②結果についてフィードバックがあること、③何度も繰り返すことができ、失敗を修正する機会があることを挙げている。一方で、経験から多様なことを学び取り、成長できる者がいる


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