SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9 FEATURE「スポーツを魅せる」


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国際マラソンや横浜マラソンなどのマラソン大会や湘南ベルマーレ等のプロスポーツの試合会場で活動をしている。まだ数名ではあるが、スポーツボランティアリーダー資格を取得し、実際の現場においてリーダーとしての活動経験を積む学生も出てきている。図1は、2016年5月に本学にて開催したスポーツボランティア研修会でのアンケート調査結果である。研修会への参加目的としては「ボランティア活動に興味がある」が最も多く、図2の活動してみたいスポーツイベントとして最も回答の多かった2020年の東京大会を意識した行動であることが分かる。また、次点に地元開催である湘南国際マラソンでの活動を挙げた回答が多く、ボランティア活動に興味を持つ学生は具体的な活動のイメージを描いていることが推察された。学生の考えるスポーツボランティア活動への期待スポーツボランティア研修会受講者に対し、湘南国際マラソン大会における給水活動のボランティア活動への参加を促している。ボランティア参加にあたり、学内における「学内説明会」やボランティア事務局関係者を交えての「ボランティア活動振り返りの会」、大会主催者による「ボランティア準備会」というプログラムを設定している。そのプログラムの中で、ボ図1.研修会への参加目的ランティア実施前に「活動に対する期待はどのようなことか」についてアンケートにて質問し(回答は一人3つまでとし、49名が回答)、さらに実施後には、「実施前に期待していたことが実現できたか」について質問した。図2.活動してみたいスポーツ大会・イベントその結果をまとめたのが図3である。スポーツボランティア活動に対する学生の期待は、自分が「達成感・充実感を得る」、「ボランティア活動を楽しむ」、ボランティア活動から学ぶ」に大別された。そして、当日には「ランナーへの給水活動をしっかり行う」ことや「ボランティア間の連携やコミュニケーションをしっかり図る」ことで「達成感・充実感を得る」ことができたようであった。また、「ランナーを応援」し「ランナーの姿から元気をもらう」こと、「他のボランティアとの出会い」や「馴染みのない人達とのチームワーク発揮」によってボランティア活動を楽しめたと感じたようであった。さらには、ボランティア活動を通じて、「ボランティアとは」、「大会開催の意義」、「大会運営方法」および「リーダーシップ」等について学べたようである。そして、これらの期待が実現された背景には、当日に大会主催者やボランティアリーダーが「分かりやすい説明や楽しめる環境づくり」を行い、「スムーズな作業を行えるようしっかりとした準備」をしていた影響が大きいと回答していた。図3.スポーツボランティア活動に対する学生の期待図4.スポーツボランティア活動に対する期待の実現度スポーツボランティア活動を楽しむ内田ら(2008)は、スポーツボランティアへの参加意思と継続意思を規定する要因について分析している。その中で、参加動機を構成する因子として、「気晴らし」、「大会支援」、「自己実現」、「依頼」および「奉仕」を抽出している。そして、組織サポートが充実し(ボランティアマネジメント)、業務内容の評価から自己効力感が高まった結果得られた活動に対する満足感が、参加継続を助長するためには重要であることを報告している。本研究においても、「達成感・充実感を得る」、「ボランティア活動を楽しむ」、「ボランティア活動から学ぶ」ことを期待した学生が、大会主催者やボランティアリーダーさらには大学からのボランティアマネジメントを受け、満足度の高い活動(図4)を行えたものと評価された。つまり、人的資源としてのボランティアが活動を楽しみ活動を継続させるためには、内藤(2007)が示すように、ボランティアマネジメントをする側が、ボランティアの内発的動機だけに頼るのではなく、参加者の抱く動機、ニーズ、条件等を把握・分析するマーケティング志向のアプローチを行う重要性を確認する結果となった。今後に向けてスポーツボランティアという文化を定着させ、次世代に引き継ぐためにも、活動の楽しみを創造する上でのボランティアマネジメントのあり方について検討していきたいと考えている。参考文献内田佑介スポーツ・ボランティアの継続参加意思を規定する要因に関する研究早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士論文(2008)内藤正和大学生におけるスポーツ・ボランティア活動へのニーズに関する研究愛知学院大学心身科学部紀要第3号:21-29(2007)18


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