SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9 FEATURE「スポーツを魅せる」


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07スポーツクラブの運営研究スポーツを支えるスポーツボランティアとは-その現状と課題-情報マネジメント学部教授中川直樹スポーツクラブは、するスポーツ」の提供拠点の一つとして捉えられているが、これからはスポーツを通じた活動の楽しみ方を広げるために、支えるスポーツ」としてのスポーツボランティアの楽しみ方も提示していくことが求められている。地域創生や共助社会の実現を模索する現代において、スポーツに携わる人達のネットワークがこうした活動の足掛かりとなることが期待されている。スポーツボランティアとはVolunteerとは、ボランティアに携わる人や活動のことである。ボランティア活動は、自発性、公益性、無償性に基づく活動とされる。さらに、今日では先駆(先見、創造、開拓)性と継続性を加えて5原則としている。スポーツボランティアとは、地域におけるスポーツクラブやスポーツ団体において、報酬を目的としないで、クラブ・団体の運営や指導活動を日常的に支え、また、国際競技大会や地域スポーツ大会などにおいて、専門的能力や時間などを進んで提供し、大会の運営を支える人のことをいう(文部科学省2014)。スポーツボランティアは役割とその範囲から、大きく三つに分類することができ、不定期的な「イベントボランティア」、定期的な「クラブ・団体ボランティア」、トップアスリートやプロスポーツ選手による「アスリートボランティア」がある。本稿では、国際大会や地域大会などのスポーツイベントを支える「イベントボランティア」について論じてみたい。スポーツボランティアの現状我が国で初めてスポーツイベントのボランティアを募集した大会は、1986年神戸にて開催されたユニバーシアード大会である。その後、日韓ワールドカップや東京マラソンなどでの活動を通じて、次第にスポーツボランティアの存在が市民権を得るようになってきている。さらには、NPO法人日本スポーツボランティアネットワーク(JSVN)等によってスポーツボランティアやリーダー養成の研修会が行われ、修了証やライセンスの発行が行われるなど、育成プログラムも確立されてきている。笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査」(2012年)による報告では、我が国におけるスポーツボランティアの実施希望率は全体で14.8%であることが報告されているが、一方で、過去1年間で実際にスポーツボランティアを実施したのは全体の6.7%であることが報告されている(「スポーツライフに関する調査」2016年)。ロンドンオリンピック・パラリンピックの成功を支えたスポーツボランティアには大会ボランティアと都市ボランティア(観光・交通案内や競技会場周辺の案内などを行う)とを合わせて約7万8千人が参加し、それぞれを「GamesMaker」、「LondonAmbassador」と呼び、誇りを持って活動したことが伝えられている。さらに2016年に開催されたリオデジャネイロ大会においても、大会ボランティアをはじめとした約5万人のボランティアが楽しい大会の雰囲気醸成に貢献したと言われている。一方、2020年に開催される東京大会では大会ボランティアと都市ボランティアとで約9万人の参加を想定している。内閣府が2015年に1,873人を対象に実施した調査では、東京大会へのボランティア参加意向は22.7%であった。笹川スポーツ財団の調査(2014年)によると、過去1年間にスポーツボランティアを実施した者の66.1%が東京大会への参加を希望し、実施しなかった者でもその25.3%が希望しているという結果が得られている。また、NHK放送文化研究所の調査(2016年)によれば、対象全体の15%がボランティアとしての参加意向を示し、特に20代男性が全体と比較して統計的に高い参加意向を示していることを報告している。さらに笹川スポーツ財団「青少年のスポーツライフ・データ2015」での報告によると、10代のスポーツボランティア実施率が15%に到達したことを報告している。こうした報告の一方で、笹川スポーツ財団の「スポーツライフに関する調査2016」では、過去1年間にスポーツボランティアを行ったことが「ある」と回答した者は全体の6.7%で、2010年に8.4%と最高値となってから減少傾向にあることも報告されている。スポーツボランティアへの期待2020年の東京大会が近づくにつれて、スポーツボランティアへの関心が高まっているが、スポーツボランティアの協力による大会の成功を目指すことは言うまでもなく、同時に、オリンピックレガシーとして、その体験が国民のスポーツボランティア活動の活性化や多様なボランティア活動との連携の足掛かりとなり、共助社会の実現を推進することが期待されている(藤沢市、2016年)。特に、ボランティア活動に対する関心の低い若年層に向けては、ボランティア活動において社会貢献や自己実現につながる場や機会を提供することで、次世代のボランティア育成を図る好機として捉えられている。スポーツボランティア養成への課題笹川スポーツ財団「10代スポーツライフに関する調査」(2012年)によれば、10代のスポーツボランティア活動のきっかけは、「先生や指導者に言われた」とする回答が最も多く(64.7%)、「自分の意思で」とする回答(26.0%)のおよそ2倍である。つまりは、10代のスポーツボランティア活動のきっかけはいわゆる動員であり、受動的な参加動機が起因であることが予想される。したがって、10代をはじめとする若年層にスポーツボランティア活動を浸透させていくためには、その年代向けへの情報を発信デザインされた教育プログラムが必要とされるが、現状は近年となって着手されたばかりの状況である。本学におけるスポーツボランティア養成本学においては、2015年よりJSVNからの協力を受け、スポーツボランティア研修会を学生向けに開催している。この研修会では、スポーツボランティアについて理解を深め、さらにはその活動の楽しみ方を知ることを目標にしている。そして、研修会修了者には修了証が発行され、湘南17


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