SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2016年 Vol.9 FEATURE「スポーツを魅せる」


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知名度認知率(A)全体認知者内(A)1松友美佐紀バドミントン(女子ダブルス)6.8%1.66%24.4%17.6%金メダル2高橋礼華バドミントン(女子ダブルス)7.0%1.66%23.9%16.9%金メダル3ベイカー茉秋柔道(男子90kg級)6.0%1.33%22.1%16.1%金メダル4登坂絵莉レスリング(女子フリースタイル48kg級)10.8%2.84%26.3%15.5%金メダル5奥原希望バドミントン(女子シングルス)9.0%2.18%24.3%15.3%銅メダル6海老沼匡柔道(男子66kg級)12.8%3.33%26.1%13.3%銅メダル7中村美里柔道(女子52kg級)14.8%3.73%25.2%10.3%銅メダル8池江璃花子競泳(女子100mバタフライ)22.3%7.07%31.7%9.3%5位入賞9山室光史体操(男子団体)13.0%2.86%22.1%9.1%金メダル10金藤理絵競泳(女子200m平泳ぎ)6.4%0.95%14.8%8.4%金メダル(参考)11田知本遥柔道(女子70kg級)8.2%1.17%14.3%6.1%金メダル結果(最高位)金メダル予想率順位選手名競技種目名(複数の場合は最高位)ブレイク予想値(B)-(A)表1.リオ五輪開催前のブレイク予想値トップ10(認知率5%以上の選手限定)表2.応援する大相撲力士トップ10(2016年5月時点)2016年のリオ五輪にこの手法を適用し、「認知率5%」以上の上位選手をリストアップした結果が(表1)である。驚くべきことに、「タカマツペア」として日本中を歓喜させたバドミント女子ダブルスの高橋礼華・松友美佐紀ペアをはじめ、上位10人中9人までもが実際にメダリストに輝いている。2008年にスタートした本研究所の五輪調査もリオ大会で5回目を数えた。すでに論文が採録された事前期待・事後満足比較(注6)に加え、今回の分析でモデルへの確信がより深まった「予言する消費者」に関しても、精緻化を図って論文投稿を目指したい。そして、2018年の平昌(ピョンチャン)大会を経て、いよいよ迎える2020年の東京オリンピックに、当該研究の集大成を持って来られるよう研鑽を積みたい。勢の里関を奮起させた二大関の快挙稀“Truthisstrangerthanfiction”(邦訳:事実は小説よりも奇なり)とは英国詩人バイロンの名言だが、2016年から2017年にかけての大相撲には、まさにこの言葉が当てはまる。2016年は、琴奨菊関による「日本出身力士“10年ぶり”の賜杯」によって幕を開けた。その反響を写し取った調査結果が(表2)のランキングである。少なくとも2016年春時点で最も横綱の地位に近かった関取は、間違いなく琴奨菊関であった。そのブームに忸怩たる思いを抱いたのが、同じく日本出身大関の2人であったことは想像に難くない。次に結果を出したのが秋場所における豪栄道関であり、彼もまた「日本出身力士“20年ぶり”の全勝優勝」をやってのけた。そして真打登場である。優勝経験が一度もないまま年間最多勝を飾った稀勢の里関は、明くる2017年初場所で念願の初優勝を果たし、ついに「日本出身力士“19年ぶり”の横綱」を射止めたのである。彼は横綱昇進後の大阪場所においても連続優勝を果たす。満身創痍で迎えた優勝決定戦は、2001年の貴乃花関を彷彿とさせる名シーンとして大相撲史に刻み込まれることとなった。前節において「データによる予見」について触れたが、このような“人間くさい”意地や闘志が、予期できない感動のドラマを生むところにスポーツの醍醐味がある。AI(人工知能)への過度な傾倒に対するアンチテーゼをも含むのがスポーツであり、その警鐘を肝に銘じ、今後ともスポーツマネジメント研究に精励したい。注12016年リオデジャネイロ大会のメダル総数の41個は、2004年アテネ大会の37個、2012年ロンドン大会の38個を上回り史上最多であった(金メダル数12個は歴代4位の記録)。なお競技種目数が異なるため単純な比較はできないが、1964年東京大会の金メダル数は16個(アテネ大会と同数1位)、メダル総数は29個(歴代5位)である。注2小野田哲弥(2016)「プロ野球新規ファン獲得の要因分析-最新トレンド「女性&若年層」に着目して-」『SANNOSPORTSMANAGEMENTVol.08』pp.15-16.注3小野田哲弥(2016)「プロ野球フランチャイズが若年層に浸透」『産業能率大学スポーツマネジメント研究所研究員コラム』http://smrc.mi.sanno.ac.jp/column/700/.注4筆者が属する日本マーケティング・サイエンス学会において最初に「予言する消費者」というフレーズが用いられたのは、水野誠(2005)「“予言する”消費者たち-需要を先取りする顧客の発見-」『マーケティング・サイエンス14(1)』pp.107-108においてである。注5小野田哲弥(2014)「「ブレイク予想」と「タレント発掘」への挑戦-スポーツ分野におけるデータマイニングの可能性と課題-」『SANNOSPORTSMANAGEMENTVol.06』pp.17-18.注6小野田哲弥(2009)「社会的「期待-一致/不一致モデル」に基づく北京オリンピック日本代表選手の評価類型」『スポーツ産業学研究19(2)』pp.185-196.12


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