SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8 FEATURE「スポーツを通じた社会貢献」


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05プロ野球新規ファン獲得の要因分析-最新トレンド「女性&若年層」に着目して-情報マネジメント学部准教授小野田哲弥プロ野球が日本を代表する人気の観戦スポーツであることは、本研究所が2015年に実施した全国1万人Webアンケート(注1)において「応援しているプロ野球チームがある」と答えた回答者が5,354名(53.5%)と過半数にのぼることからも明らかである。しかも同年、セパ合わせて過去最高の観客動員数2,400万人超を記録するなど、「人口減社会」に入ったとされる我が国において、なおも新たなファン獲得に成功を収めている点も特筆される。本報告では、当該Webアンケートに基づいてその事実を検証し、成功要因を探った。キングを作成した。個別属性内における絶対値よりも、対立属性間の差分の大きさに注目することにより、“新規ファン”が惹かれる要素をより端的に炙り出すことを狙った分析フレームである。新たなファンを惹きつける魅力とは表1および表2が、上記フレームに基づいて算出した「男女差」そして「世代差」である。本分析では、属性それぞれに寄った10件ずつの「応援する理由」を、その属性を特徴づける“魅力”と規定する。なお、薄黄色の網掛けは新規ファン(女性&若年層)側に共通して上位10件に挙がった理由であり、逆に灰色の網掛けは既存ファン(男性&年配層)側に共通して上位10件に挙がった理由である。桃色および黄緑色のセルは、それぞれ「女性寄り」ないし「若年寄り」のみに該当した理由である。まず灰色の網掛けから見えてくる一般的な【既存ファンを惹きつける魅力】の特徴は次のように解釈できる。男性寄り・年配寄りに共通する第1位の“魅力”は「伝統」だ。「監督が好きだから」という理由も、監督のほとんどがかつてスター選手として活躍したOBであることから「伝統」に関連しよう。また「強い」「弱い」といった戦力を応援理由に挙げ、勝敗に拘泥する傾向も垣間見える。そして「人気のあるチームだから」「テレビ中継の多いチームだから」という点からは、マスメディアから強い影響を受けている点が窺える。他方、薄黄色の網掛けを施した【新規ファンを惹きつける魅力】の特徴としては、「親・親族がファンだから」「友人・知人がファン表1.「プロ野球チームを応援する理由」の男女差比較研究背景と分析フレーム図1を見ての通り、近年観客動員数を飛躍的に伸ばしている代表的プロ野球団が二つある。一つは「カープ女子」という流行語さえ生み出した広島東洋カープ、そしてもう一つは2012年に親会社が代わり、球団名も刷新された横浜DeNAベイスターズだ。後者は「2・30代のサラリーマン層」をターゲットに斬新な企画を次々に打ち出し、ファン層を拡大していることで知られる(注2)。図1.ホームゲーム観客動員数ランキングの直近5年間の推移(日本プロ野球機構「統計データ」http://npb.jp/statistics/をもとに作成)このように近年のプロ野球ビジネスにおける新たなファン獲得のキーワードは「女性」そして「若年層」である。よって、それらとの対立概念である「男性」および「年配層」と比較することにより、“新規ファン”が惹かれる要素を相対的に明らかにすることを試みた。なお、本分析における「若年層」と「年配層」の定義は、それぞれ「2・30代」および「5・60代」である。全1万サンプルの中からまず「応援しているプロ野球チームがある」と答えた回答者を抽出した。各属性内の該当率は、男性3,240名(64.8%)に対して女性2,114名(42.2%)、年配層2,232名(55.8%)に対して若年層2,084名(52.1%)であった。この点から、ほぼ飽和状態にある既存顧客の「男性&年配層」ではなく、まだ開拓の余地がある「女性&若年層」に各球団が目を付けた背景が首肯できる。このアンケートでは「応援しているプロ野球チームがある」と答えた回答者に、続けて「応援する理由」を選択式で尋ねた。事前に30項目を用意し、その中から特に該当する5項目までを選んでもらう形式である。4つの属性(男性・女性・年配層・若年層)ごとに30項目の該当率を算出し、対立属性間の「差分」によってラン15


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