SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8 FEATURE「スポーツを通じた社会貢献」


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も実施しているため、その回答結果が参考になるだろう。ここに挙がった5球団それぞれの1位は、日本ハムが大谷翔平選手(支持率63.4%)、ヤクルトが山田哲人選手(支持率40.7%)、巨人が坂本勇人選手(支持率50.7%)、広島が現LAドジャースの前田健太選手(支持率59.8%)、オリックスが金子千尋選手(支持率49.4%)であり、有能な選手を発掘するスカウトと、一流選手に育て上げた現場の努力の賜物といえよう。表3右の「応援スタイルが好きだから」の上位には、いずれも特徴的な応援で名高い球団が名を連ねる。Jリーグ風の一糸乱れぬ応援で有名な千葉ロッテ、甲子園を埋め尽くす観客によるジェット風船や『六甲おろし』の大合唱で知られる阪神タイガース、『東京音頭』に傘を揺らす東京ヤクルトをはじめ、広島カープのスクワット応援、男女でパートが分かれる北海道日本ハムの応援歌など、長い歴史を持つ応援スタイルから近年に開発されたものまで幅広いが、いずれも新規ファンを惹きつける重要な要因として機能している。前者の「選手」の活躍による魅力の強化は、球団のマネジメントが直接的に功を奏した結果と言える。だが後者の「応援スタイル」は、私設応援団の創意工夫とそれに共鳴するファンの協力に依るところも大きい。その意味で、昨今のプロ野球人気の大きな特徴の一つは、自発的なファンが相互に織りなす“ソーシャルな魅力”である。裾野拡大の一翼を担うために表3にはランクインしなかったが、横浜DeNAベイスターズの人気拡大を支えているのも、侍ジャパンの4番を張る筒香嘉智選手や2015年度セ・リーグ新人王の山﨑康晃といった若手人気「選手」の台頭、そして球団がSTARNIGHT等のイベントで提供したユニフォームや、神奈川県内の小学生限定で無料配布した野球帽を身につけたファンによる「応援」、その一体感で増す本拠地・横浜スタジアムの魅力であることは間違いない。本学は親会社がDeNAに代わる5年前の2007年から横浜ベイスターズと提携を結び、現在に至るまでコラボレーション授業『スポーツ企画プロジェクト』を展開してきた。この授業はイースタン・リーグ公式戦1試合を履修者自らの手で企画し運営するという内容であり、現在の担当教員は本研究所の研究員でもある筆者と椎野の2名である。だから」に代表されるように、マスメディアよりも身近な人物からの影響を強く受ける点が指摘できる。そして試合での勝ち負け以上に、「地元のチームだから」「スタジアムが近いから」「応援スタイルが好きだから」といった地域密着型・体験型消費を重視する傾向も読み取れる。また絶対値は大きくないものの「マスコットキャラが好きだから」といった理由も、彼女/彼らを惹きつける現代的な魅力の一つに数えられよう。最後に桃色および黄緑色の網掛けにも着目したい。「好きな選手がいるから」は男性においても主要な応援理由だが、女性該当率の方が上回っている点が興味深い。若年寄りの第2位に躍り出ている「出身地のチームだから」は、現在自身は本拠地から離れた地で暮らしていることも含意するが、インターネットあるいはCS放送によって地上波の制約から自由な世代の特徴だとも解釈できる。そして「グッズが充実しているから」も上記マスコットキャラクター同様、現代のプロ野球ビジネスにとって欠かせない“魅力”となっている。表2.「プロ野球チームを応援する理由」の世代差比較団ランキングで探る魅力の具体的中身球以上によって新規ファン獲得に繋がった“魅力”が整理された。プロ野球の裾野拡大という側面から、近年は「ファーム」への注しかしながら球団の違いを加味せずに行った分析のため、抽象的な一般論に留まっている感も否めない。そこで本節では、前節で特定された新たな魅力の中から2つを取り上げ、それぞれの項目における該当率の球団ランキングTOP5に着目し、具体的内容を探る。なお、本節では前節で重視した性差・世代差はリセットし、全サンプルを対象に「応援するチーム」に基づいて集計した結果に対して解釈を行う。表3左の「好きな選手がいるから」に関しては、同アンケート調査において、現役の有力選手200人を候補に「もしあなたが野球日本代表の監督だったら、どの選手を選びますか?」という調査目度が一段と増している(注3)。『スポーツ企画プロジェクト』では、本研究で明らかにした新しい魅力要素を参考に、学生たちの柔軟な発想によって斬新な企画として具現化し、それらの“実践”を通じて、プロ野球ビジネスのさらなる発展に寄与していきたいと考えている。注1本研究所が2015年に実施した全国1万人Webアンケートとは、インターネット調査会社に委託し、20代から60代の各世代男女同数均等割付を行って、5月1日から7日にかけて独自に実施したものである。注2横浜DeNAベイスターズが2・30代のサラリーマン層を「アクティブサラリーマン層」と名づけて新規顧客開拓のターゲットにした事実は、NHK総合『クローズアップ現代』2015年6月17日放送「“常識破り”の球団改革~密着・DeNAベイスターズ~」に表3.新規ファンを惹きつける“魅力”別球団ランキングTOP5よって確かめられる。注3ファームへの注目が高まっていることを示す文献として、「会いに行けるジャイアンツ:いま2軍が大ヒット。1軍に負けないサービスで観客大幅増」(2015年5月19日『スポーツニッポン』5面)、「「カープ女子」も振り向かせる:オリックス、2軍がファン開拓に躍起」(2015年6月6日『日本経済新聞』大阪夕刊関西View)などが挙げられる。なお本学が2015年度の『スポーツ企画プロジェクト』において6月28日に実施したファーム公式戦「SHONANCOOLFES」の様子も、「雪で涼しく野球観戦:産業能率大、DeNAと提携」(2015年7月6日『日本経済新聞』23面)、今季DeNAファーム公式戦平塚球場最高観客数:産業能率大学プロデュース、イースタンDeNA-ロッテ戦観戦イベント」(2015年6月7日『日刊スポーツ新聞』10面)など、各紙面に掲載された。16


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