SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2015年 Vol.8 FEATURE「スポーツを通じた社会貢献」


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04日本プロバスケットボールの現状と課題~bjリーグの解消とBリーグの開幕へ~2016年10月、Bリーグの開幕とともに、日本のプロバスケットボールは新たな時代を迎える。bjリーグとNBLという2つのリーグに分かれていたプロバスケットボールが統合されることは歓迎されるべきことであるが、ここまでに日本のプロバスケットボール界はいくつもの紆余曲折を経てきた。本研究所の報告ではこれまで、プロバスケットボールのbjリーグのチームと協力し、バスケットボールに観客を呼び込むための調査を実施し報告してきたが、この大きな節目を迎えて、一度、このタイミングでの総括が必要と考え、本稿にて報告することとしたい。情報マネジメント学部准教授木村剛1.Bリーグ誕生までの経緯まずここで、このBリーグ誕生までの我が国のプロバスケット界の経緯について、簡単に整理しておこう。bjリーグが発足する以前の日本バスケット界のトップカテゴリーは、JBLであった。プロ化の話が出てきたのは2000年以降の話で、他の様々なスポーツがプロ化の流れにある中で、新潟アルビレックスが中心となり、横浜、千葉、さいたまの4チームでプロ化推進プロジェクト(通称Bプロジェクト)が立ち上げられた。しかし、2002年にプロ化に向けた答申が出されたものの、結局結論が見いだせず、このプロジェクトは頓挫することとなる。プロ化に進展がないとみた新潟やさいたま等の4チームが並行して独自でプロリーグ企画の活動を再び開始し、2004年にはプロリーグ設立研究会を発足させた。その後、結局進展が見られず、新潟、さいたま両チームがJBL脱退を表明するが、JBLの理事会はこれを否認(「脱退」は廃部、解散、譲渡またはそれに類する事由の場合に認められる)した。ここでは紙面の都合上詳しくその経緯を述べないが、その後も、プロ化を希望するチーム側と慎重な審議を志向するJABBA(日本バスケットボール協会:現JBA)及びJBL(現NBL)との主張は平行線をたどり、結果として、2004年の11月にbjリーグが発足することとなった。bjリーグは当初、新潟、さいたま、仙台、東京、大阪、大分、準備室の7社でリーグ設立の調印式が行われ、リーグの理念を表す「bjリーグ宣言」が発表され、仙台89ers、新潟アルビレックス、さいたまブロンコス、東京アパッチ、大阪ディノニクス、大分ヒートデビルズのリーグ参加の正式決定が発表された。その後、bjリーグは今シーズンの2015-2016シーズンまでの11年間、プロリーグとしての歴史を刻むこととなった。以降、日本のバスケット界にはトップカテゴリーに属する2つのリーグが並行して存在してきた。この2リーグ併存を問題視したのが国際バスケットボール協会(FIBA)であった。FIBAはこの問題を解決しない限りオリンピック予選を含む国際大会への日本の参加を認めないという決定を下した。ちょうどオリンピック予選が、そろそろという時期の話で、女子のオリンピック出場が有力視されていたこともあって、世論にも火が付いたことも今回の統合に影響を与えたことは間違いない。そこで、白羽の矢を立てられたのが、Jリーグの生みの親としても知られている川淵三郎氏であった。しがらみを捨て、どうにかしなくてはならないという状況の中で、この人選は比較的好意的に受け止められた。結果論ではあるが、これだけの強力なリー13ダーシップを発揮しない限り、この問題は打開しなかったかもしれない。かくして、川淵チェアマンのご尽力もあり、これまで動かなかった大きな山がようやく動き始めたのであった。2.Bリーグの概要こうした誕生することとなったBリーグだが、次にこの概要についてみてみよう。Bリーグには、日本全国から集まった45のクラブが、3つのカテゴリーに分かれて参加する。図表1.BリーグロゴBリーグでは、以下の3つのミッションを掲げている。第一が「世界に通用する選手やチームの輩出」である。まず、こうした場を作り世界に通用する選手やチームを輩出することで、日本のバスケットボール競技力の底上げ・競技人口の裾野の拡大を図ることが1つ目のミッションとなる。これはバレーボールの例を見るまでもなく、トップリーグの統合は、こうした底上げに寄与する事だろう。第二は「エンターテイメント性の追求」である。これは近年、どのプロスポーツでも取り組みが進められている共通の課題といってよい。野球でもスタジアムではなく「ボールパーク」と呼び始めているのも、この表れと言ってよい。勝っても負けても試合を見に行って楽しかった、というようなエンターテインメント性を重視した演出はバスケット観戦を普及させるための大きなカギとなる。第三のミッションは「夢のアリーナ」というものである。体育館ではなく「アリーナ」を作るというのは、地域に根差したスポーツクラブになるとともに、非日常の空間を存分に楽しめる空間を作るということを意味している。日本のバスケットはいかにも体育館という場所で行われているが、エンターテインメント性を高めたアリーナを日本で実感できるところはほとんどない。ハード面だけでなく、ソフト面も含めて専用のアリーナを作ることは喫緊の課題といえよう。こうした基準に基づいて、2016年秋からスタートするB1で戦うことになったのが図表2の各クラブ(Bリーグプレスリリースより)である。


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