SANNO SPORTS MANAGEMENT 2014年 Vol.7

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2014年 Vol.7 FEATURE「歩みの先へ」


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08ビーチ再生ーSportPolicyforJapan2014優秀賞ー情報マネジメント学部准教授小野田哲弥SportPolicyforJapan(SPJ)とは、大学3年生が所属大学の枠を超えて政策提言を行う「スポーツ政策学生会議」であり、東日本大震災に見舞われた2011年にスタートした。2013年9月に2020年の夏季オリンピック・パラリンピック開催都市が東京に決定したことを受け、2014年度の大会からはJOC(日本オリンピック委員会)の公認大会ともなった。SPJ2014は11月8日(土)・9日(日)、一橋大学国立キャンパスにおいて開催され、「ビーチ再生」を政策提言テーマにした産業能率大学小野田哲弥ゼミが優秀賞に輝いた。この受賞は学生たちの努力と研鑽の成果であると同時に、本研究所を中心とした本学の教育・研究活動の蓄積が結実したものでもある。よってその概要と意義について報告する。問題意識:政策実施が不可欠な日本の砂浜日本の海水浴場が抱える問題点の多くが、堰を切ったように表面化した年が2014年であった。たとえば千葉県九十九里町において、以前は36か所あった海水浴場が砂の浸食等により20か所へと激減したニュースは我々に衝撃を与えた。また神奈川県逗子市が、海水浴場の治安悪化に歯止めをかけるべく施行した厳格な条例(飲酒のみならずスピーカーでBGMを流すことさえ禁止)は、市民以外をも巻き込んで激しい賛否両論を呼んだ。小野田ゼミでは2011年度の初回大会よりSPJに参加しているが、上記のような報道やSNS上の議論を踏まえ、2014年度のテーマ「ビーチ再生」を選んだ。当該テーマに取り組むに当たり、まず実施したのが文献調査とインターネット調査である。前者ではSPJを主催する笹川スポーツ財団の各種刊行物に目を通し、【種目別運動・スポーツ実施率の動向(上位10種目)】において、2000年には11.2%で6位につけていた「海水浴」が徐々に順位を落とし、2010年には圏外となっている事実を突き止めた。また後者は全国1000人アンケートによって捕捉した※1。アンケート結果によれば、日本人の大半が自然海岸を貴重な財産と捉え、砂浜での運動は健康促進効果があり、海水浴が子どもの情操教育に良いと回答していた。その反面、自由記述で尋ねた【砂浜海岸や海水浴場に対するイメージ】では、防災面(津波や高波が心配)、衛生面(水が汚く臭くてゴミが多い)、治安面(マナー違反が多くうるさい)に関するネガティブな意見も数多く見られた。これらの結果より、砂浜の重要性認識は日本国民のほぼ総意であるにも関わらず、その現状は理想像と大きくかけ離れている。すなわち日本のビーチは、多くの人々(社会)がその課題解決を願う対象、まさに「政策」を必要としている対象だと気づかされたのである。SPJ2014における発表風景(2014年11月9日(日)一橋大学国立キャンパス)審査員からの質疑に対して、熱心に答弁する小野田ゼミチーム(檀上左から清水友菜、三田裕美子、落合勇太、平山仁大)受賞の決め手:現場への綿密な取材SPJ2014にエントリーした学生数は16大学※2の総勢158名であった。全33チームが予選プレゼンテーションを行うが、その中から決勝に進出できるのはわずか3チームであり、その3チームの中の1チームに最優秀賞、残る2チームに優秀賞が授与される※3。毎年SPJにはスポーツ系学群を専攻する日本有数の大学生たちが参加しており、これまでに小野田ゼミが決勝進出を果たしたことは一度もなく、今回も不可能と思われた。しかしその予想は良い意味で裏切られた。受賞の決め手となったのは、豊富な“取材”に基づく事実の裏付けと政策立案の説得力であった。だがそれは、小野田ゼミチームの17


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