SANNO SPORTS MANAGEMENT 2012年 Vol.5

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2012年 Vol.5 FEATURE「Next Stage」


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07bjリーグにおける観客調査ーコアブースター育成に関する研究ー経営学部准教授木村剛転換期のプロ・スポーツビジネスの中で最近になってようやく少し改善の傾向は見えてきてはいるものの、長期にわたる景気の低迷は、日本のスポーツ界に多大な影響をもたらした。その原因は、日本におけるプロスポーツが、大企業を中心としたメインスポンサーのサポートの庇護の下で成立しているところが多かったことにある。これまでも本誌の中で、こうした指摘を行ってきたが、2013年に入っても、この傾向は続いている。ここ2年の間にも、陸上やバスケットボール、ラグビーなど、多くのプロ・スポーツのジャンルで撤退、廃部、縮小が相次いだ。日本の代表的なプロ・スポーツであるプロ野球とて例外ではなく、それは野球中継の視聴率低迷、番組数の減少を見ても明らかである。スポンサー依存型のスポーツはメリットもあるが、ひとたびスポンサーの経営が悪化すると、廃部、撤退が多くなる。チームを引き受ける新たなスポンサーが出てくれば良いが、今日のように全体的に景気が悪化している場合それも困難である。結果として、縮小に歯止めが効かず、とりわけマイナースポーツへの影響は大きなものとなった。他方、消費者がレジャーにかける費用も減少は続いている。スポーツ観戦に行く回数はさらに減少しており、入場料収入を経営の柱とするプロ・スポーツには大きな痛手となった。さらにプロ・スポーツ観戦をエンターテインメントの一分野として捉えると、その競争環境はさらに厳しい。例えば、日本のエンターテインメントの象徴的存在である東京ディズニーリゾート(TDR)と比べてみると、確かにコストは高いかもしれないが、パスポートを購入すれば一日中遊べるテーマパークと比べ、スポーツの試合は数時間で終わるものが圧倒的に多く、コストパフォーマンスの点で劣る。若者層がスポーツ観戦よりもTDRを選択するのは、自明の理である。この他にも映画、ゲーム、インターネット配信サービスの高度化などエンターテインメントは多様化しており、普通の人が、わざわざスポーツ観戦に行くのは限られたイベントのみといってよい。むしろ、わざわざ会場にスポーツ観戦に来る人は、そのスポーツに対するよほどの思い入れがあるか、誘われて、もしくはチケットをもらったのでという観客は決して少なくない。こうした激しい競争の中で、新興リーグであるbjリーグ生き残っていく為には、いかなる方策を採っていくべきなのか、その方向性について考察するのが本研究の目的である。bjリーグの現状と課題バスケットボールの会場は、そのほとんどが収容人員約3000名前後の体育館やアリーナで開催される。1500人規模の体育館で開催されることも少なくない。これは、バレーボールやボクシング、アイスホッケーなどといった他の室内スポーツと条件は同じだが、こうした室内型のスポーツには、当然メリットとデメリットが存在する。簡潔に列挙しておくと、メリットの主な点は、選手との距離が近く迫力を伝えやすいこと、ショーやイベントなどといった劇場型の演出がしやすいことなどがある。デメリットとして挙げられるのは、試合会場の大きさが限定されることである。満員でも3000人程度しか入らないので、当然チケット収入も限られたものとなる。野球やサッカーと比較すると、これらのスポーツは一万人以上の規模で試合が行われており、1試合当たりの収入は雲泥の差である。17


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