SANNO SPORTS MANAGEMENT 2012年 Vol.5

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2012年 Vol.5 FEATURE「Next Stage」


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泳」(-19.8%)、「ドッヂボール」(-12.7%)などであった。考察本調査の結果として、今後行いたいスポーツの上位には、競技志向型スポーツの種目が多く見受けられた。競技志向型スポーツは、「遊戯性」「技術性」「競争性」「社交性」といったスポーツの本質的要素を色濃く含み、人々の人生を豊かにし、夢と目標を生涯与え続ける多大な役割を担っている。笹川スポーツ財団の調査によれば※2、1996年から2010年にかけて、週1回以上運動スポーツを行う成人はおよそ20%増加し、56.3%に達している。しかしながら、その実施種目について見てみると、健康志向型の種目(エアロビクスダンス、筋力トレーニング、ジョギング・ランニングなど)が中心で、競技志向型の種目(硬式テニス、サッカー、野球、バレーボールなど)はわずか0.8%の微増にとどまっている。この報告は、「平成23年社会生活基本調査」※3の結果と同様に、わが国におけるスポーツ実施者の減少を示唆する内容であると考えられ、国民の体力低下を招くだけではなく、スポーツが人生と共にある成熟した社会の矮小化を意味すると捉えることができる。運動・スポーツ活動のプロモーションは、主体者の内的条件に直接作用する事業(プッシュ事業:主体者支援事業)と外的条件を高めていく事業(プル事業:人的支援事業、機会支援事業および環境支援事業)を両軸に推進していくことが提唱されており※4、潜在需要がプラスの種目でも、その需要を満たす(参加率を高める)ための支援事業は異なると考えられる。「弓道・アーチェリー」、「乗馬」や「陸上競技」は、他種目と比較すると参加率は極めて低いが、参加希望率は中程度である。これらは、自然の豊かな伊勢原市の特色や地元の競技協会の地道な活動が反映された種目ではないかと考えられる。参加率を高めるために、体験会などの参加機会の創出や地域への働きかけをさらに行うことで、地域に根付いた種目となる可能性を持っている。「釣り」、「山登り・ハイキング」、「キャンプ・オートキャンプ」などのアウトドア活動では、活動場所へのアクセスが課題として挙げられるが、伊勢原市の立地は他地域に比べると移動時間の面では恵まれている。伊勢原市の環境要因を考慮し、スポーツ少年団活動等にアウトドア活動を積極的に組み込むのも試みの1つではないか。「テニス」、「ヒップホップダンス」、「バレーボール」では、活動場所や指導者の確保が中心的課題になると考えられる。これらの種目は女子の潜在需要が高い種目である。武長(2013)によって、女子は男子に比べると幼少期のあそびから青年期のスポーツへのスムーズな移行が実現できていないことを指摘されていることから※5、プログラム内容や環境的条件を整備しこれらの潜在需要を満たしていくことが、女子児童のスポーツ振興を左右するポイントの1つであろう。まとめ子ども達にとって競技志向型スポーツは、楽しむこと、挑戦すること、努力すること、人と関わることなどを学べる魅力ある活動である。今回の調査結果を参考に、伊勢原市の児童の実情に沿った多面的な支援事業によって、競技志向型スポーツのプロモーションを展開できるよう検討を重ねたい。※1.産業能率大学スポーツマネジメント研究所伊勢原市の児童におけるスポーツ環境調査結果報告2012URL:http://smrc.mi.sanno.ac.jp/smrc/※2.笹川スポーツ財団スポーツ白書スポーツが目指すべき未来2011※3.総務省平成23年社会生活基本調査※4.財団法人健康.体力づくり事業財団運動・スポーツ活動のプロモーションガイドラインに関する政策情報レビューと事業実態調査2010報告書2011※5.武長理栄4歳から19歳の運動・スポーツ実施状況体育の科学63(3):197-204,201316多かった。次いで、男子では「テニス」、「柔道・剣道・空手・少林寺拳法」、「野球・キャッチボール」、「釣り」が多く、女子では、「テニス」、「バレーボール」、「山登り・ハイキング」、「ヒップホップダンス」、「アイススケート・アイスホッケー」が多かった。水泳スキー・スノーボードテニス柔道・剣道・空手・少林寺拳法山登り・ハイキングジョギング・ランニングキャンプ・オートキャンプ釣りバレーボールバスケットボール野球・キャッチボールサッカー・フットサル体操・ストレッチング陸上競技(短距離走、幅跳びなど)ヒップホップダンスサイクリング(自転車)32403545534137919291857375715858636070577女子男子22187142925373818293143436080100(人)816223633241712613172514162828201887251314131416157621223131アイススケート・アイスホッケーボウリングバドミントンウォーキング・散歩なわとび弓道・アーチェリーその他のダンス乗馬ゴルフなし卓球ドッヂボール筋力トレーニングスケートボード・インラインスケートヨガ・気功・太極拳ラグビーハンドボールソフトボールアクアビクス・水中ウォークニュースポーツエアロビクストライアスロンゲートボールアメリカンフットボールその他040図2今後行いたいスポーツ20222010121020116)各種目における参加率、参加希望率および潜在需要全回答者数(男子600人、女子520人)に対する各種目の参加人数(今、行っているスポーツの人数)を参加率(%)、参加希望人数(今後やりたいスポーツの人数)を参加希望率(%)として男女別に求め、参加希望率と参加率との差を潜在需要(%)として算出した。その結果、男子で潜在需要がプラスの種目は、「スキー・スノーボード(5.8%)、弓道・アーチェリー」(4.2%)、陸上競技」(4.0%)などであり、マイナスの種目は、「サッカー・フットサル」(-23.8%)、「水泳」(-18.8%)、「ドッヂボール」(-11.0%)などであった。一方、女子では高い種目は、「テニス」(7.7%)、「スキー・スノーボード」(6.9%)、アイススケート・アイスホッケー」(6.5%)などであり、低い種目は、「なわとび」(-22.5%)、「水サッカー・フットサル水泳ドッヂボールなわとび野球・キャッチボールサイクリング(自転車)体操・ストレッチングウォーキング・散歩ジョギング・ランニングその他アイススケート・アイスホッケー柔道・剣道・空手・少林寺拳法乗馬釣りヒップホップダンスキャンプ・オートキャンプテニス陸上競技弓道・アーチェリースキー・スノーボード0-35-30-25-20-15-10-5潜在需要(%)男子510なわとび水泳ドッヂボール体操・ストレッチングサイクリング(自転車)ウォーキング・散歩その他バドミントンその他のダンススケートボード・インラインスケートボウリング陸上競技弓道・アーチェリー乗馬ヒップホップダンス山登り・ハイキングバレーボールアイススケート・アイスホッケースキー・スノーボードテニス-5-15-20-100潜在需要(%)-25女子510図3潜在需要(上位および下位の10種目)


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