SANNO SPORTS MANAGEMENT 2012年 Vol.5

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2012年 Vol.5 FEATURE「Next Stage」


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図1スポンサーマッチ度に基づくスポンサー分類例A.ベストマッチスポンサースポンサーマッチ度B.ローカルスポンサーC.大企業スポンサー+56.072.370.119.310.619.524.955.629.846.323.910.535.154.423.637.538.911.416.3+51.5±5.4±5.9-24.6-13.9横浜F・マリノスNISSAN(胸)湘南ベルマーレ産業能率大学(背中)京都サンガF.C.大和証券(パンツ)ガンバ大阪Panasonic(胸)べガルタ仙台IRISOHYAMA(胸)サガン鳥栖DHC(胸)①表示名とチームが一致凡例:②表示名だけ知っている③表示名自体を知らないとしての独自性である。また研究結果の新規性としては、「2分の1の法則」の発見と「スポンサーマッチ度」の開発の2つが挙げられる。「2分の1の法則」の発見『スポンサー認知調査』では、5つのカテゴリーすべてに共通して「表示名」だけを提示し3択(①表示名とチームが一致、②表示名だけ知っている、③表示名自体を知らない)の中で最も該当する選択肢を回答してもらった※3。表4は「①表示名とチームが一致」の比率をカテゴリー別、Division(J1/J2)別に集計した結果である。この結果は偶然というには奇妙なほどに、すべてのカテゴリーにおいてJ2の比率の約2倍がJ1の比率となっている。逆にいえばJ1のほぼ“2分の1”がJ2の値であり、これが「2分の1の法則」の発見である。スポンサー料は一律に定まってはおらず、また今回の調査は被験者がサポーターに限られるという制約もある。しかしながら一般的な法則性を導出できた点が「昇格が明示的な資金調達のモチベーションになる」として、SPJ2012での高評価に繋がった。表4.カテゴリーおよびJ1/J2別「①表示名とチームが一致」率カテゴリースタジアム胸背中袖パンツ合計総スポンサー数4438393339193J1平均60.5%50.4%27.9%17.3%13.6%-J2平均30.4%22.4%16.7%11.6%7.9%-「スポンサーマッチ度」の開発『スポンサー認知調査』におけるもう一つの成果は、スポンサーとチームとの相性の良さ、あるいは意味合いの違いを数値化する独自の指標「スポンサーマッチ度」を開発したことにある。算出式は式1のようにシンプルだが、この値が「プラスに大きい」か「ゼロに近い」か、あるいは「マイナスに大きいか」によって、チームを支援するスポンサーのタイプが「A.ベストマッチスポンサー」「B.ローカルスポンサー」「C.大企業スポンサー」のいずれなのかを判定することができる。それぞれに典型的なスポンサーを抽出した図1をもとに考察する。スポンサーマッチ度=「①表示名とチームが一致」率-「②表示名だけ知っている」率・・・式1A.ベストマッチスポンサーに分類されるスポンサーは分析の結果、大きく2つの系統に分かれることが判明した。一つは「クラブの前身となった企業」、そしてもう一つは「地域に根付く企業」である。前者の例としては図1にある「日産自動車→横浜F・マリノス(胸)」(+56.0)のほか、「Panasonic(松下電器)→ガンバ大阪(胸)」(+51.5)、「マツダ→サンフレッチェ広島(背中)」(+23.4)などが挙げられ、後者の例としても同様に図1の「白い恋人→コンサドーレ札幌(胸)」(+57.3)のほか、「楽天(三木谷浩史社長の出身地)→ヴィッセル神戸(胸)」(+51.1)、「亀田製菓→アルビレックス新潟(胸)」(+32.1)などが挙げられる。B.ローカルスポンサーに分類されるスポンサーは、図1の「本学→湘南ベルマーレ(背中)」(±5.4)や「アイリスオーヤマ→ベガルタ仙台(胸)」(±5.9)のほか、「アイシン精機→名古屋グランパス(背中)」(±3.0)、「白岳→ロアッソ熊本(胸)」(±3.6)などが挙げられる。これらの法人は、全国区としての知名度は低いもののホーム地域ではチームと強く紐づいて認知されていることから、「①表示名とチームが一致」と「②表示名だけ知っている」の比率が拮抗していると考えられる。C.大企業スポンサーに分類されるスポンサーは、図1の「大和証券→京都サンガF.C.パンツ)」-24.6)や「DHC→サガン鳥栖(胸)」(-13.9)やのほか、ENEOS→FC東京(袖)」(-15.5)、EPSON→松本山雅FC(胸)」(-14.2)などが挙げられる。これらの企業名は全国的に見ても有名で資金的にはありがたい反面、チームとの紐づきが弱く広告媒体としての価値優先であり、地域やチームへの愛着に課題を残していると指摘できなくもない。このように「スポンサーマッチ度」を利用することにより、これまで漠然と捉えられていたチームとスポンサーとの関係を客観的に把握することができる。チームと企業とが、ともに地域に愛されながら成長していくこと、すなわち「B.ローカルスポンサー」から「A.ベストマッチスポンサー」への発展がJリーグの理念に照らし合わせても理想形であり、そのベンチマークがこの指標を通して可能になる。SPJ2012の審査員からも、その点がスポーツ政策的に見ても価値が高いとの講評を受けた。今後の研究計画上記のように2012年度実施のJリーグ調査には大きな反響が寄せられた。今後も当該調査を継続し研究成果の一般化に努めたい。2013年度の新たな試みとしては、Jリーグとともに日本を代表するプロのチームスポーツであるプロ野球調査の実施を予定している。本稿前半の「サポーター観戦行動調査」は、同フレームのままプロ野球ファンにも応用できる可能性が高いため、12球団別の特徴を抽出したい。ただし後半の「スポンサー認知」はJリーグ固有の事象である。したがってこれに替わるオリジナルの調査フレームをプロ野球調査時に構築することが課題となる。※1予備調査(20代から60代までの全国3万人を対象に2012年5月15日~20日に実施)において、Jリーグを生観戦することがある」と回答した1,632名を対象に、同年8月28日~29日にインターネット調査会社を通じて実施し、1,000名が回答した時点で調査を締め切った。※2集計結果の詳細は、学校法人産業能率大学ホームページの左フレームメニューの『調査研究活動』の「調査報告書」における、発行月2012.11の「Jリーグサポーター調査」において確認できる。http://www.sanno.ac.jp/research/j_supporter.html※3調査時のチーム数はJ1が18チーム、J2が22チームの計40チームである。表4においてスタジアム数がチーム数よりも多いのは、複数のホームスタジアムを持つチームがあるからであり、逆に40に満たないカテゴリーは当該スポンサーが不在のチームがあるため。14


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