SANNO SPORTS MANAGEMENT 2011年 Vol.4

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2011年 Vol.4 FEATURE「スポーツは人を育てる」


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[スポーツ・マーケティングの領域]出所:筆者作成プロモーション・メディアとしてのスポーツ・スポンサーシップ・広告・PRコンテンツとしてのスポーツ・放映権料の販売・商品化権観るスポーツ・場所(アリーナ、スタジアムの提供・試合の運営、提供スポーツ・マーケティングするスポーツ・用具・ウェアなどの販売・トレーニングの場の提供07エンタテインメントとしてのスポーツ観戦情報マネジメント学部准教授木村剛スポーツ・マーケティングとはスポーツ・マーケティングという研究領域が、マーケティングの分野において、確実に1つの領域を形成しつつある。しかしながら、その必要性が叫ばれていることは確かであるが、理論としてまだ確立されたものではなく、その定義や範囲は論者によって異なっていることが多い。その理由は、まだ歴史が浅くその体系化にはいま少し時間がかかること、もう1点はスポーツという言葉の意味が広いがゆえにその対象領域が不明瞭なことにある。スポーツ・マーケティングに関する文献をいくつか調べてみても、定義がそれぞれになされており、統一した見解はない。そこで本稿では、スポーツ・マーケティングの対象を大きく以下の4点に分類して考えることとする。その4つとは、①するスポーツ、②観るスポーツ、③プロモーション・メディアとしてのスポーツ、④コンテンツとしてのスポーツの4つである。「するスポーツ」とは、スポーツを実際に行うことをサポートしようとするものである。単にスポーツ用品を売るだけではなく、当該スポーツを振興して競技人口を増やすことを目的とする。次に「観るスポーツ」の最大の課題は、観客をどうやって惹き付け、観戦してくれた観客の満足度をいかに高めていくのかという点にある。第3に「プロモーション・メディアとしてのスポーツ」とは、スポーツを媒体として捉え、広告やPR活動を行うことや、スポーツのイベントもしくは選手をサポートするスポンサーシップから構成される。そして最後の「コンテンツとしてのスポーツ」とは、スポーツに関連するあらゆる権利を売買するものを指している。その対象としては、テレビ放送権の他、商品化権などがある(注1)。今回本稿では、bjリーグの横浜ビー・コルセアーズとのコラボレーションにより、観客アンケートを実施していることから、その序論として特に「観るスポーツ」を取り上げ説明する。エンタテインメントとしてのスポーツ「観るスポーツ」は、スポーツをエンタテインメントとして捉え、場所を提供し、試合の運営を通じて観客を惹きつけ、その状態を維持することを最大のテーマとする。「観るスポーツ」をビジネスの視点から捉えると、物財セクターとサービスセクターの2つの側面から捉える事が出来る。物財セクターでは、スポーツ観戦用のグッズの提供が主たるビジネスのテーマとなる。こうした応援グッズは観客の一体感を醸成し、自分がそのスポーツに参加している感覚を与える機能をもつものである。具体的には、応援するチームのカラーで作られたシャツやメガホン、フラッグやタオル、風船など試合を盛り上げるための道具の提供などがこれに当たる。例えば、先に行われた南アフリカのFIFAワールドカップで一躍有名になったブブゼラという楽器は、観客の多くが持参もしくは購入し、観客は試合中それを吹いて応援することで、観客の一体感を醸成しただけでなく、あの音が大会の代名詞になったといっても過言ではない。こうした参加意識の形成は、観客動員を増加させるためには不可欠なも15(注1)この4つの視点からの詳細な考察については、『現代マーケティング総論』同文舘出版(2011)を参照されたい。


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