SANNO SPORTS MANAGEMENT 2011年 Vol.4

SANNO SPORTS MANAGEMENT 2011年 Vol.4 FEATURE「スポーツは人を育てる」


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学生の育ちここでは、PBLを取り入れたアクティブ・ラーニングの活動である「スポーツ企画プロジェクト」や「ビーチバレーフェスタ」に参加した学生(卒業生を含む)の変化について考えてみたいと思います。学生達がこれらの活動に参加する動機を座談会での発言から挙げてみると、「企画に興味がある」、「スポーツイベントが好きだ」、「楽しいことに参加したい」などといった自己中心的、内発的な動機から始まっていると捉えられます。しかし、実際の活動が始まると学生達が対峙する課題は、自分の興味や関心の範疇に留まらない大きさであるという現実を知ることになります。「自分は企画をやりたいだけなのに…」、「楽しめると思って来たのに…」。そこから学生達の紆余曲折が始まるのですが、一度は組織に背を向け、興味のあることにしか目を向けずに孤立するといった状態に陥ります。しかし、学生達は「プロジェクトやイベントを成功させるために自分たちがやらなければならない」という現実から、徐々にどうすれば良いかを考え始めていきます。この段階に到達して、学生達はさまざまな他者の視点を受け入れられるようになってくるようです。溝上(2007)は、「アクティブ・ラーニングの質を高める装置の一つとして、さまざまな他者(教員、専門家、地域住民あるいは学生同士)の視点を取り入れ、自己の理解を相対化させること」を挙げています。「企画をするということの意味」、「楽しいとはどんな状態か」、「組織を動かすことの必要性」、「他者と協力し合うことの意味」など座談会で聞かれた言葉は、この段階に学生と接した球団関係者や教職員などとのやり取りを通じて考え、学んだことなのでしょう。学生達は活動を通じて、自分たちの意見や提案がいわゆる社会や社会人に受け入れられない場面に何回も遭遇してきました。実際の活動を終え、ある程度時間が経過した今、学生達はなぜ自分たちが受け入れられなかったのかを振り返っていたように思います。その中で、「自分の意見をきちんと持ち、主張する」ことが大切だと気付いたのでしょう。つまり、自分の意見を持って、主張するには、知識や情報そして経験が必要なのFEATURE「スポーツは人を育てる」だという考えに行きついていたということです。そして、お互いが主張しあえた結果、新たな考えを創造することができるというプロセスがあることを体験していたように思います。アクティブ・ラーニングは、知識が使える人材の育成を目指して取り組む、応用あるいは実践学習であるといわれますが、今回の座談会を通じての検証では、参加者の言葉にもあったように、「この活動が主体的に学ぶ上での出発点」となっていたようです。プロジェクトやイベントを通じて学生達が体験した事柄を、その後の彼らの日常生活と関連付けて検証し、意味付けを行っていたようです。それはある者はアルバイトの場面であり、またある者はスポーツイベントのボランティアの場面であったようです。また、社会人となった卒業生は自分の仕事の場面なのでしょう。そして、意味付けが自分の中でできて初めて自信へとつながっているようです。今回の座談会参加者の間では、活動を終えてからの時間の経過に違いがありますが、やはり自分の中に落し込む時間の長い卒業生が、あの体験は何だったのかについて多くを語れるのは、意味付けできた場面の数の違いかもしれません。終わりに大学生へのアクティブ・ラーニングが導入されてまだ間もないのですが、今回の検証を通じて、アクティブ・ラーニングがどのような学生の力を伸ばしていけるのかについてさらに検証していく必要性を感じました。そして、今回の座談会は本学における教育の効果を検証するために行ったものでしたが、結果的に一定の時間を経て担当教員との間で総括的評価を行うリフレクションの機会となり、参加者にとってはスパイラルアップできる時間となったように思います。参考文献溝上慎一(2007)アクティブ・ラーニング導入の実践的課題.名古屋高等教育研究第7号269-2879来場者の方々からの東北へのメッセージを前に<2011年度産業能率大学スペシャルゲーム>


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